Endukante... Premanta! 2012年 158分(155分とも)
主演 ラーム & タマンナー
監督/脚本/原案 A・カルナカラン
"あなただけが、私に語りかけた"
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1980年のヴァイザーグ(*1)。
大学生スリニディと彼女を思い続ける男クリシュナは、3年間お互いを思いやりながらもその気持ちを押し殺し続けていた。ついには、思い余ってブルカ着用で女子大用バスに乗り込んで来たクリシュナだったが、突然起こった交通事故からスリニディを守って死んでしまい、病院で彼の死を知らされたスリニディはショックのあまり…
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時は移り、2012年のパリ。
在仏インド大使の娘スラヴァンティは、毎晩顔の見えない愛する人の夢を見ては、まだ見ぬ恋に憧れる医大生。しかし、現実生活は四六時中護衛に監視される窮屈な毎日を過ごしており、父親が米国出張する隙を狙って家出を敢行する!
同じ頃、父親から家業のパリ視察旅行と騙されてハイデラバードからパリ郊外のワイン農場に連れられてきた遊び人の青年ラームは、身ぐるみ剥がされて農場で働かなくてはならなくなり、なんとかこの場を逃げ出して自由になろうと画策中。
この農場近くでスラヴァンティを見つけたラームは、彼を運命の人と思いつきまとう彼女と結託してインド帰国を計画。様々な障害を乗り越えてパスポートを取り戻した彼は、なんとか飛行場にたどり着くが、その時には合流を約束していたスラヴァンティの姿はなく、彼だけがインドへと旅立つことに。
しかし、ハイデラバードに到着したラームの前に突然スラヴァンティが現れ「すぐガンディー病院のサヴィタ医師の所へ行って」と言い残すやまたもや姿を消すのだった…。
挿入歌 Kikko Gicko (体の中に感じる衝撃)
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タイトルは、テルグ語(*2)で「それは、愛だよ!」。
その内容は、00年のマルク・レヴィ著のフランス小説「夢でなければ(Et si c'e´tait vrai…)」と、その映画化である05年のハリウッド映画「恋人はゴースト(Just like Heaven)」、アメリカのTVシリーズ「スーパーナチュラル(supernatural)」内のエピソードを元にしていると指摘されている。
同時製作でタミル語(*3)版「Yen Endral Kadhal Enben!」も作られ(*4)、2016年にはヒンディー語(*5)吹替版「Dangerous Khiladi 5」も公開。
冒頭の前世の悲恋劇から転生物語的な映画かと思いきや、前半はフランスの農場を舞台にしたかなりムリクリなラブコメシチュエーションコメディ。中盤からヒロインの正体が明らかになるミステリー要素が発揮され、特殊状況に陥った恋人2人を襲う陰謀との戦いへと走り抜けるファンタジック・ロマンスとでも言える映画。色々と段取りに強引さがつきまとうものの、ラストのラストで前世からの因縁がしっかり成就する美しさもスンバラし。輪廻転生が、「前世の復讐」という要素なしでただただ「恋人2人の切ない思い」を強化させるためだけに用意されているというのも、逆に新鮮というかなんというか。
同じA・カルナカラン監督によるプラバース主演作「Darling(ダーリン)」と同じく、前半と後半で大きく意味合いが変わる登場人物の言動とか、優しい嘘を利用した物語の変幻自在さは本作でも健在。その語りの器用さってのは、ホント惚れ惚れしてしまいますよ。
おちゃらけた遊び人主人公ラーム(*6)の前世が「クリシュナ」って名前なのも、当初は皮肉的なネーミングにしか見えないのに、映画後半になるといつの間にか「恋人を救出するヒーローとしてのラーム」と「恋に生きたクリシュナ」という構図に収まってるんだからステキ(*7)。
フランスが舞台の映画前半のために、しっかりフランス(他スイス、イタリア)ロケを敢行しているって事だけど、インド映画のヨーロッパロケによく出てくる雪山が出てこないでパリ市街やワイン農場メインの風景も爽やかさを演出する。
ま、パリ以外のフランスの地名がなんも出てこない所に、ワインの産地とか気にしてんのかなあ…? みたいな危惧もなくはないけれど。
インド大使の娘であるヒロイン スラヴァンティの孤独に対応するように、フランスに置き去りにされた主人公ラームの孤独や、それこそ後半に判明するスラヴァンティをめぐる真の孤独が現れてくる切なさは非常に効果的。
スラヴァンティの存在自体を疑ってくる周囲に対して、まず親戚の医者から説得にかかるラームの必死さ・辛さ・切なさが、周りに存在を認められないスラヴァンティ自身の孤独や恐怖とシンクロしていく所なんか秀逸。そこで別の対比として描かれる大家族のラーム一族と、一人っ子で母親不在のスラヴァンティの家族模様もまた、スラヴァンティの悲しさを強調する要素として効果的。
インド人はインド人同士を助け合う大家族的な絆があるとでも言いたそうなインド万歳も、2人の孤独に上乗せできるんだからよー考えてはりますわ。外国にあって、自国の大使館って頼りになりまくるんだねーと納得すると同時に、その現場はなんと怖い陰謀渦巻く仕事でございましょ。そんな簡単に大使館職員がつるんで人を追い詰めにこないでおくれー。
挿入歌 Chill Out (落ち着けよ)
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「EP!」を一言で斬る!
・あんな、人力のみに頼るインド人経営のワイン農場とかパリ近郊にあるん?
2022.8.19.
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*1 アーンドラ・プラデーシュ州ヴィシャーカパトナムの略称。
*2 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*3 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*4 ただし、こちらは劇場未公開なんだそう。
*5 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*6 演じる男優の芸名そのまま!
*7 じゃあ、ヒロインの名前スラヴァンティはなんか意味がかかってんのかなと思ったけども、一般に「絶え間無い川の流れ」で他に「知識」「美しい姿」の意味だとか?