ロボット (Enthiran the ROBOT) 2010年 177分(短縮版は139分) 工学博士ワシーガランは、ついに完全な自立型アンドロイドを完成させた! 彼の恋人の医学生サナーは、学会でも好評なワシーガランそっくりのロボット チッティー(ワシーガランの母の命名)の完成度に驚き、勉強の手助けに2日間借りたいと提案。 チッティーはさっそく、彼女に命じられるまま料理・掃除・カンニング(!)・近所のチンピラ退治までやってのける! 彼の活躍にサナーは「彼はスーパーヒーローよ!」と大喜び!! ワシーガランの研究目的は、ロボットを戦争に用いて人的被害をなくすこと。 彼はAIRD(人工知能研究機関)にチッティーを認可させようとするも、彼のかつての師匠であるAIRD長官ボーラー教授は、人の言葉をそのまま受け取って行動するチッティーの危険性を指摘。 図らずも、火災現場での救助活動を命じられたチッティーが、裸の女性をそのまま公衆の面前まで運んでしまったため、救助された女性は恥ずかしさのあまり、道路に飛び出して交通事故死してしまう…。 この事件にショックを受けたワシーガランは、ボーラー教授に指摘された"人の感情を理解する"機能をチッティーに備えようと四苦八苦。偶然もありながら、なんとかチッティーは感情を芽生えさせるのだが、そのために彼は、ロボットでありながらサナーに恋心を抱いてワシーガランを無視し始め、ワシーガランは軍部でのプレゼンで大恥をかくことになる。 怒り心頭のワシーガランは、ついにはチッティーを破壊してしまう! …しかしこれに目をつけたのが、秘密裏に国際テロリスト用のロボット開発を進めるボーラー教授だった。 彼は、ゴミ廃棄所からチッティーの残骸を拾い集めて修復し、より戦闘的な性格を与える"レッド・チップ"を埋め込むと、チッティーは欲望のままに暴走し始める…。 挿入歌 Irumbile Oru Irudhaiyam *別名、アリガトウゴザイマスの唄。 インド映画史上最高額の15億ルピーの製作予算。タミルのスーパースター ラジニとボリウッド・クイーンのアイシュの初競演。タミル映画界の巨匠シャンカル監督によるSF大作……と発表から評判がうなぎ上りのコリウッド(=タミル語娯楽映画)大作!! タイトルのアルファベット表記が「Enthiran」と「Endhiran」の2バージョンあるそうな(*1)。 ヒンディー語圏では「ROBOT」、テルグ語圏では「ROBO」のタイトルで吹替版が同時公開。日本では、ゆうばりファンタ映画祭2011にて、「ROBOT」のタイトルで英語字幕上映され(*2)、同年東京国際映画祭にて、日本語字幕つきで「ラジニカーントのロボット(仮)」のタイトルで上映された。 そして2012年、ついにヒンディー語吹替の短縮版ながら日本で一般公開されて大絶賛となり、元のオリジナル版も順次特別公開! 通常版と特別版の2種類のDVD&ブルーレイが発売された(*3)。さらに、同年12月に第34回ぎふアジア映画祭にて上映された。 自我を持ったロボットの反乱…と言えば、「ターミネーター」「マトリックス」「アイ・ロボット」「攻殻機動隊」などなどなど…映画の中では何度も出てくるモチーフなんだけど、本作はこれら過去のロボット映画やヒーロー映画をおもいきり取り込んだりモチーフにしたりしながらも、それなりにインド的に翻案しているのがいとをかし(ま、SF的なオチを期待すると、ちょっとスルーされる感じだけど…)。 あいかわらずのシャンカル監督作の娯楽性のごった煮感は安心するくらい入ってるものの、いわゆるコテコテのタミル色は比較的薄く、なんとなく世界標準を狙ってるかのようなまとまり観は、まるでタミル版「My Name Is Khan」。タミルの方も、世界を相手に商売し始める気なんでしょうか(ま、それでもコテコテ度は高い?)。 今回のラジニカーントは、ワシーガランとチッティーの1人2役。後半のチッティーver.2なんかものすごいノリノリな演技で、「ムトゥ」の頃と比べると若返ってないかこの人…と思えるほどにパワフルに大活躍。大増殖するチッティーのコピーロボットと、そんなチッティーに変装するワシーガランとの掛け合いも楽しければ、画面的な合成もかなり自然でビックリ。どうやって芝居をつけてんですかねぇ…。ホント器用な人。 ヒロインのサナー演じるアイシュも同じく、若々しい…と言うより初々しい演技で、最近のシリアスな役柄からは見られないほど生き生きと演じている。役柄がそうだからか、なんか今にして大型新人登場かと思えるほど生気あふれる演技に、あんた年いくつやねん…と聞いてしまいたくもなりますわ。 日本人的には、ストーリーのダイジェストを聞いて思い出すのは「鉄腕アトム」…の特に「青騎士」のエピソードなんだけど、そこまでロボットが自己の存在に悩むと言う描写は描かれずに、掛け合い漫才やスーパーアクション(特に後半のチッティーver.2の時のラジニの怪演とか、合体した巨大コブラや巨人ロボットのアクションとか)の見せ方に重点が置かれている。暴走するチッティーver.2のカッコ良さ&ウザさと言ったら、もう…。 人の感情をチッティーに理解させようとする時に、挨拶から冠婚葬祭…特に出産と葬式を体験させるシーンがあるあたり、インド人自身のインド文化観が垣間見えて興味深かったりもする。 やっぱり、数々の面倒な宗教儀式と言うのは、日常生活を効率よく回すためとか、ある所で区切りを付けたり感情的に納得するために、必要不可欠なものなのかもしれんですねぇ(ま、第一は生活コミュニティ維持のためだとは思うんだけども)。 挿入歌 Arima Arima
受賞歴
2011.7.16. |
*1 タミル語では、この差をあまり区別しないためとか…。意味は「機械」? *2 かなり交渉が長引いて、上映の前日だかに発表されたそうな…。 *3 ただし、収録されているのはどちらもヒンディー語吹替版です。注意。 |