マダム・イン・ニューヨーク (English Vinglish) 2012年 133分 家族の中で義母と共に英語ができない主婦シャシー・ゴドボーレは、それをネタにされていつも家族の笑い者にされる毎日。 ある日、NY在住の彼女の姉マヌーが、娘ミーラーの結婚式にゴドボーレ家も参列しないかと連絡して来て家中「アメリカに行ける!」と大喜び。しかし、夫サティーシュと子供たちは式の直前まで渡米できないと言うので、嫌々ながらシャシーは姉の手伝いのためにたった一人で式の5週間も前からNYへ向かう事に! 家族に脅されながらも、なんとか付け焼き刃の英語で姉の家に辿り着き、結婚式の準備を進める傍らNY観光に連れ出されるシャシーだったが、英語がわからないためにショップ店員に罵倒されアメリカ人たちに白い目を向けられる…。自信を失いかけたシャシーはしかし、英会話教室を見つけると姉家族には内緒にして自費で4週間コースの教室に入学! 日々英語の勉強に費やし、徐々に自分に自信を持てるようになり私生活でも活躍の場を増やして行く。 その同じ英会話クラスに、コーヒーショップでシャシーを慰めてくれたフランス人シェフ ロハンがいた。徐々に彼と親しくなって行くシャシーだったが、それを姪のラーダ(ミーラーの妹)に見られてからは、家族と学校との生活の板挟みに悩み始める…。 挿入歌 Manhattan (マンハッタン) *ラーダに連れられての、シャシーの初マンハッタン観光の図。 さて、貴方は歌詞から何個、ブランド名を聞きとれるでしょーか!? 80〜90年代のボリウッドの女王シュリーデーヴィーの、久々の主演作(公開当時49歳)! 同名タイトルでタミル語吹替版も同時公開された。 監督は、広告ディレクター出身でベルリン映画祭でもショートムービーの受賞歴のあるガウリー・シンデー。自分の母親との関係を通して出てきたアイディアが本作に直結したとか。各映画賞を次々と受賞したこの映画が、長編映画デビュー作となる!! 日本では、2013年にあいち国際女性映画祭で、監督来日の上で上映されて話題を呼び、速攻で一般公開の噂が流れ、待ちに待った2014年ついに「マダム・イン・ニューヨーク」のタイトルで公開! 2006年公開作「Aaja Nachle(さあ、踊りましょう)」に始まる、結婚または出産で映画界を離れていた大女優の復帰主演映画ラッシュの中でも、超注目作登場! シュリーデーヴィーの映画出演作としては、1997年公開の「JUDAAI ~欲望の代償~」「Kaun Sachcha Kaun Jhootha」から実に15年ぶり!(その間、04年に長年お蔵入りだった主演作「Meri Biwi Ka Jawaab Nahin」が、08年にゲスト出演でちょっとだけ出ていた「Halla Bol(声を上げろ)」が公開されてはいる。タミル語映画では1986年の「Naan Adimai Illai(私は奴隷じゃない)」以来26年ぶり! 情報頂きありがとうございます!!)。 インド社会における、知的レベルを測る物差しは色々あるみたいだけど、かなり重要の地位を占めるのが「英語による読み書き&コミュニケーションがどこまでできるか」であるそうな。 高等教育はまだまだ英語が支配的と言うインドでは(*1)、正式な教育エリート=英語人であって、英語ができない=まともな教育を受けてないと解される事もしばしばらしい(もちろん、地域や状況によって事情は色々だけど)。 劇中で、キリスト教系の学校に通う娘サプナの完璧な英語力を喜ぶシャシーが、夫や子供たちから英語の発音についてバカにされ、「どうせ英語で話しかけられてもわからないでしょ!」と突き放され、サプナのクラスメイトや夫の仕事上の知り合いと暗黙のうちに距離をとらされる様は、インドの社会状況・教育状況・女性をめぐる生活状況を映す鏡でもあるようなないような。 シャシーの生き甲斐である、子供たちの成長ぶりとその子供から突き放される悲しみ、ハウスメイド・ビジネスとしてやっているお菓子作りと通販の成果、「そんなの止めて、家族のために働いてほしい」と彼女の生き甲斐を否定しすれ違う夫との会話を通して、シャシーの喜怒哀楽の落差を表現する序盤の軽やかなシークエンスは、まさに現代インド社会の縮図でもある。執拗に描かれるシャシーの調理シーンもテンポ良くお腹を刺激されまする。 初めての国際線でのアメリカ入国〜マンハッタン観光は、もう海外旅行あるあるやアメリカあるあるみたいなネタも満載で楽しい。突然出てくる大物ゲスト(*2)にもビックリながら、機内放送のヒンディー語チャンネルの映画見て「もうこれ、家のテレビで見たからいいわ」とシュリーデーヴィーに言わせちゃう所も微笑ましい。 英会話教室の面々も個性的で彩り豊か。彼らの、そのバックグラウンドを越えた理想的ボーダレスな人間関係が、アメリカ的でもあり、インド的なシャシーの家族との結びつきと対比されるものにもなってて効果的。なにより、たった4週間で英語をマスターするクラスの面々の楽しそうな事ったら! アメリカ人は、この映画を見習って外国人にゆっくり話す技を身につけなさい! うむ!! いきなり「皆で英語の映画見に行こうよ」と言って出てきた、エリザベス・テイラー主演作「雨の朝巴里に死す(The Last Time I Saw Paris)」にはビックリ。見た事ないわー。チョイスがシブいわー。著作権料安かったのかな? 英会話教室の面々のうち、シャシーに一番関わって彼女のクッション役を果たすロハン(*3)を演じるのは、フランス出身の役者メフディー・ネッボウ。ドイツとアルジェリアハーフのムスリム一家育ちで、本人は仏・独・英・伊各言語を話せるそうな。 横で見てたおかんは、ずっと「インドも大人になったねぇ。私、大恋愛とか皆で踊るって苦手だから、これくらいなにも起こらない映画が好き」とかのたまいつつ、「インドの人って、来てる服が優雅だよねぇ」とシャシーのサリーばっかり注目しとりました。たしかに、色鮮やかで美しくアメリカじゃ目立つだろうなぁ…在米インド人でそんなにずっと着てる人いるのかなぁ? …とかジャッジメンタル(w)に気になる所もあるけれど、その着こなし方、色模様の美しさが、映画本編とシンクロしていてスバラしか! 挿入歌 English Vinglish (イングリッシュ・ビングリッシュ)
受賞歴
「English Vinglish」を一言で斬る! ・"ジャーズダンスじゃないよ、ジェーズダンスだよ"って聞こえるんだけど、如何に。
2014.1.3. |
*1 90年代から「国語をヒンディー語にしよう」と言う政府方針で、教育界にもヒンディー語を浸透させようとしたらしいけど、非ヒンディー語圏から猛反発喰らってるそうな。 *2 ヒンディー語版とタミル語版で、配役が変わるらしいよ! *3 日本語表記では"ロラン"と書くみたいだけど、どー聞いても"Laurent"はロハンかロホンが近いように聞こえる…「ハ」と「ラ」の中間音と言われれば、そうねって感じだけど。 |