Eetti 2015年 145分
主演 アタルヴァー & スリーディヴィヤー
監督/脚本 ラヴィ・アラス
"お前は、今までの事を忘れて試合に行け…そしてメダルを勝ち取るんだ"
その日、特異症例を特集するTV番組にて血小板無力症が取り上げられていた。
番組終了後、解説役の医師は15年前のタンジャーヴールでのその症例の記憶を思い返す…その時運ばれてきた幼い患者の名は、プガゼンティ・スブラマニアム…。
今や大学生になっているプガゼンティ(通称プッガル)は国体代表選考会のチェンナイ会場を目指していた。彼は、家族に持病の心配をされつつも、コーチからも有力視されるハードル走者。翌日の男子110mハードル走州代表選考にて、みごと国内最高記録を打ち立てて優勝。コルカタ開催の国体本戦出場権を獲得する。
その夜、プッガルはなんどもかかってくる間違い電話に苦しめられ、その電話相手…チェンナイに住むガーヤトリー・ヴェヌゴパールと大喧嘩になるも、だんだんと電話越しにその距離を縮めていくように。国体本戦がコルカタからチェンナイに変更されたことで、会場近くに住む彼女に直接会おうと約束するブッガルだったが、彼女の兄ディネシュが、偽造紙幣ビジネスを取り仕切る地元ギャングを警察に通報して目をつけられた事から、2人の周りにも不穏な空気が立ちこめる…。
挿入歌 Oru Thuli
タイトルは、タミル語(*1)で「槍」の意。
特殊体質なハードル走者が活躍する、スポ根マサーラーアクション映画のヒット作にして、ラヴィ・アラス監督デビュー作。
同名マラヤーラム語(*2)吹替版の他、ヒンディー語(*3)吹替版「Wepon The Hathyar」、英語吹替版「Sword」も公開されたよう。
1985年の同名タミル語映画とは別物。
冒頭から詳しく説明される先天性症状を持つ陸上選手の活躍を描いて始まる本編は、主人公プッガル演じるアタルヴァーの筋肉と運動神経をこれでもかと見せつけるマサーラーヒーロー像そのままに、難病ものや本格スポ根展開を期待するこちら側の予想を飛び越えてヒーローが恋に障害にマフィア抗争に大活躍する、いつものマサーラー映画でビックリ。ラスト10分で急にスポ根展開が軽快に進み、冒頭からの伏線を効果的につかったハラハラ感もあって、本格スポ根をタミルエンタメで成立させるにはこれくらいやらないと、的な工夫が効いてくる一本。
なにはなくとも、主演のアタルヴァーの魅力全開な映画ですわ。
その主役プッガル演じるアタルヴァー(・ムラリ)は、1989年生まれ。父親はタミル語・カンナダ語(*4)映画界で活躍する男優ムラリ。父方の祖父はカンナダ語映画界の有名な映画監督兼脚本家兼プロデューサーであるシッダリンガイアになる。
学校卒業後に役者を目指してスタント養成所に通い、父の協力を得て10年のタミル語映画「Baana Kaathadi」で映画&主演デビュー(*5)してエジソン・アワード男優デビュー賞を獲得。13年の主演作「Paradesi」でフィルムフェアのタミル語映画主演男優賞を始め多くの映画賞を獲得してスターの仲間入り。本作と同じ年には、「Chandi Veeran(田舎ヒーロー)」にも主演している。16年には自社プロとなる映画プロダクション"キックアス・エンタテインメント"を設立する。
怪我をすると出血が止まらなくなる病気を持つ故に、「できるだけ怪我をしないよう生活する」ではなく「スポーツもケンカも積極的に参加し、怪我しないよう動体視力を異様なまでに発達させている」と言う主人公像が、もうさすがマサーラーヒーローって感じ。
マフィア相手に、一回も傷を負うことなくワイヤーアクションな空中殺法を繰り出すプッガルのカッコ良さは見ものでっせ! 特異症状の主人公という設定を、よくある難病ものや障害克服ものにしないあっけらかんとした明るさは、見習いたいものですネ。
まあ、その分マフィアとの抗争劇はわりと普通な感じで、ある程度スカッとするドンデン返しとかもあるけどそれだけだと凡作だなあ…と思ってしまう感じではあるけれど、そこにロマンスや家族ドラマ、さらに国体優勝を賭けたアスリートの特訓ものも入ってるボリューム満点さ。携帯番号や車両ナンバープレートなんかの数字を強調する演出が散見する前半も「へえ」って感じながら、ラストの決着シーンでもあるハードル走の画面処理も見せ方としては面白い。最後の最後で主人公最大のピンチが到来するのも「おお!」と身を乗り出してしまう面白さってヤツでネ!!
挿入歌 Panjumittai
「Eetti」を一言で斬る!
・それにしても、みんなバイクに乗る時はノーヘルが標準なのね…。
2019.5.31.
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*1 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*2 南インド ケーララ州の公用語。
*3 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*4 南インド カルナータカ州の公用語。
*5 この映画には、父親ムラリもゲスト出演しているが、映画公開の1ヶ月後に病死してしまう。
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