エフ2:ファン&フラストレーション (F2 − Fun and Frustration) 2019年 148分(150分とも)
主演 ヴェンカテーシュ & ワルン・テージ & タマンナー & メヘリーン・ピルザーダー他
監督/脚本 アニル・ラヴィプディ
"ああ神よ、夫が妻に勝利するチャンスを、せめて1回は与えても良いのでは?"
ヴェンキィとワルン・ヤーダヴはその日、欧州にて大勢の警察に取り囲まれて取調室へと送られた。インド人女性2人が彼らを訴えたと聞いてやって来たインド大使館員ヴィシュワナートの尋問に、彼らは答える…「その女性とは、我々の妻のことです」!!
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事の始まりは、長い婚活の末に業者の計らいで、孤児の州議会員秘書ヴェンキィとソフトウェアエンジニアのハリカの2人がようやくで見合い結婚した事。
当初は仲睦まじい新婚夫婦だった2人だったが、すぐにお互いの主張が空回りしはじめ喧嘩ばかりの日々を送るようになり、そこにトラブルメイカーのハリカの妹ハニーもやって来たからヴェンキィの孤立はますますひどくなる。さらには、ハリカは実家の女性たちと妹の恋人ワルンをも味方につけてヴェンキィを尻にしこうとするからもう大変。
その一方で、徐々にこの姉妹の素の姿に気づいたワルンもわがままな恋人のことでストレスを溜めはじめ、前言撤回してヴェンキィに「どうしよう。結婚したくなくなってきた」と打ち明け始めたため…。
挿入歌 Entho Fun
犬も食わない夫婦喧嘩のドタバタを描く、テルグ語(*1)コメディ・マルチスター映画。
インドの他、カナダ、英国、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランドでも公開。ネット配信された米国でも爆発的ヒットを飛ばし、続編「F3」の企画が動いてるそう。
日本では、公開と同年の19年にindoeiga.com主催で英語字幕版が自主上映。2024年のテルグ映画の祭典「テルコレ2024冬」にて上映されている。
基本的には、ずっと主人公ヴェンキィとワルン主導の語りで突き進むシチュエーションコメディ。全登場人物は、初登場シーンから最後まで、常に決まったキャラクター枠を貫き通し、そのディスコミュニケーションの幅がどんどんでかくなるのを楽しむお話で、何度となくスクリーンを越えたこちら側の観客に対して語りかけるシーンが登場する事も含めて、なんとも大衆演劇的な、画面の向こう側とこちら側の距離が近い野放図な話芸コメディですわ。
全部乗せマサーラー・アクション映画や大学生たちの爽やか青春恋愛映画がウケる一方で、こう言うボケ倒し能天気コメディが一気に人気を獲得する所に、テルグ映画の懐の広さを見るべきか、「みんな疲れてるのかね…」と同情するべきか。ま、見てる分には無責任に楽しめる映画ですわ。
監督兼脚本を務めたアニル・ラヴィプディは、アーンドラ・プラデーシュ州プラカーシャム県ヤダナプティ村出身。
工学位を取得後、伯父の映画監督P・A・プラサードの元で助監督として働き出して映画界入り。ダイアログライターから脚本家を経て、映画監督兼脚本家兼カメラマンのサントーシュ・スリーニーヴァスの協力で完成させた脚本を元に、15年の「Pataas」で監督デビューして大ヒットさせる。以降、テルグ語映画界で監督兼脚本家として活躍中。本作は4本目の監督作となる。
主人公ヴェンキィと共に主役を張るワルン・ヤーダヴを演じたのは、1990年生まれのワルン・テージ(・コニデラ)。
テルグ語映画界で活躍する男優兼プロデューサーの(コニデラ・)ナーゲンドラ・バーブを父に持ち、テルグのメガスター チランジーヴィーの甥にあたる、映画一族アッル=コニデラ家出身。
00年の父親主演作「Hands Up!(手を上げろ!)」で子役出演した後、14年の「Mukunda」で主演デビュー。以降、順調にテルグ語映画界で活躍中で、17年度テルグ語映画最高売上を達成した主演作「Fidaa」での絶賛から注目株の若手男優となっているよう。
タマンナー演じるハリカの妹ハニーを演じるのは、モデル出身のメヘリーン・ピルザーダー。
10才から美人コンテストに出場して賞を獲得していて、13年にはトロント開催のミス・パーソナリティ・サウス・アジアでも優勝。インドとカナダ双方でCMモデルとして活躍する中で、16年の「Krishna Gaadi Veera Prema Gaadha(クリシュナの大いなる愛の伝説)」でテルグ語映画&主演デビューし、国際南インド映画賞の新人女優賞にノミネートされる。
翌17年には「フィッローリー ~永遠の詩~(Phillauri)」でヒンディー語(*2)映画に、「Nenjil Thunivirundhal(勇気はあるか)」でタミル語(*3)映画に、本作と同じ19年には「DSP Dev」でパンジャーブ語(*4)映画にもそれぞれデビュー。以降、テルグ語映画界を中心に各言語界で活躍中。
ヴェンカテーシュ&タマンナーの大スターを中心に、期待の新人ワルン&メヘリーンを売り出す気満々な家族ドラマは、色々お気楽展開の中に世の中の父権制をおちょくるネタを次々に盛り込んでくれるわけだけど、ボケ倒しのムリクリ話芸コメディに世の父権制そのものまで笑えてくるネタとして消化されるあたりは、意図的なんだかたまたまなんだか。
結婚前は啖呵切って「妻をコントロールしてこその夫だ」とか言ってたヴェンキィたちが、あっさり尻に敷かれて「たしかに」だけしか言えなくなるマダムたちの強さがなんとも。登場シーンでは「わがままで計算高い性格(*5)」と描かれていたハリカの性格描写があっさり愛妻であり倦怠期の妻のそれになるのも「おーい」だけど、そこに抵抗しようとする主人公ヴェンキィをなんだかんだで丸め込んでしまう計算高い愛嬌にその名残を見るべきか…。新婚当初の幸せいっぱい夫婦と、倦怠期のそれとの対比が鮮やかすぎて、そりゃはたから見てれば犬も喰って笑ってしまう事ばっかですわ!
そういや、喧嘩ばかりの夫婦がついにカウンセラーに相談するシーンもあったけど、そんな需要も現実にあるんかいな? 劇中みたいに、夫婦喧嘩が絶えないカウンセラーだったら仕事になんないだろうなあ…と余計なことを心配してしまいますよ。世の夫婦の皆様ガンバッテネー(無責任に)。
挿入歌 Dhan Dhan
「F2」を一言で斬る!
・ああ、タマンナーの憎しみのこもった眼差しのお美しいことよー…(あかん
2020.11.20.
2024.9.19.追記
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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*3 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*4 インド北西部パンジャーブ州の公用語で、パキスタンでも言語人口の多い言語。別名パンジャービー。
*5 結婚相手の条件も、ダウリーや婚家への気がねの要らない孤児がいい、と言い切る気っ風の良さ!
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