インド映画夜話

ファニーを探して (Finding Fanny) 2014年 101分
主演 ディーピカ・パドゥコーン & ナセールッディーン・シャー & アルジュン・カプール他
監督/脚本 ホーミー・アダジャーニアー
"もし、愛を探し出せたなら…?"






 インド西海岸のゴア州。そのはずれの、地図にも載っていない小さな村ポコリム。村に住む年老いた郵便局員ファーディー(本名フェルディナンド・ピントー)の家に、一枚の手紙が届いたその夜、突如ファーディーの叫び声が村に木霊する…!!

 ファーディーのお隣さんアンジー(本名アンジェリーナ)は、村の仕切屋の義母ロージー(本名ロザリーナ・ユーカリスティカ)と二人暮らし。かつて、幼なじみのガボ(ロージーの息子)と結婚したアンジーだったが、新郎は結婚後15分であの世に行ってしまってから、彼女は未亡人のまま。
 その朝、アンジーがファーディーを訪ねると、彼は意気消沈して泣き叫ぶばかり。聞けば、46年前に出したプロポーズの手紙が戻って来たと言う。返事が来ないため、プロポーズを断られたと思ってずっと独身生活を続けていた彼は、そもそも手紙が彼女…今でもファーディーが愛している女性ファニー(本名ステファニー・フェルナンデス)…の元に行ってなかった事を知り、大きなショックを受けていた。「人生を無駄にした」と嘆くファーディーに、アンジーは提案する。「今からファニーに会いに行こう!!」

プロモ映像 Fanny Re (ああ、ファニー)



 ディーピカ主演作「カクテル(Cocktail)」の監督、ホーミー・アダジャーニアーによる英語+一部コーンカニー語(*1)映画。ヒンディー語吹替版も公開。マドック・フィルムズとフォックス・スター・ スタジオ製作配給によるナンセンスコメディのロードムービー。
 日本では、2014年に大阪アジアン映画祭にて初上映。翌2015年に、IFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)でも上映された。

 1987年のインド併合まで、ポルトガル領インドとして「東洋のローマ」と呼ばれるほどの発展を遂げた、インドの中の異郷にして国内外で有名なリゾート地、欧州的文化を今も謳歌するゴアの片田舎を舞台に、フランス映画を思わせるゆるやかでのほほんとした、とらえどころのないお話が展開する洒脱な映画。少しシュールで、少しブラックな、5人の登場人物それぞれが体験する不条理な"愛を探す旅"を淡々と描いていく。
 とにもかくにも、キャラの立ちまくったメインキャラ5人と、牧歌的なゴア周辺の景色を見せていく観光ムービーの中に、突如放り込まれるナンセンスなブラックジョークの数々が楽しい、ニヤニヤしてしまう映画である。

 46年前に出したはずの手紙が、相手に届かないまま戻ってくると言う不条理に遭う気弱で少年の心を持ち続ける郵便局員ファーディー。
 結婚後15分で夫を失い「私はまだ処女」と平気で口にしつつ義母との毎日を諦めムードで過ごすアンジー。
 船乗りだった夫を失った後、村の恋人たちやイベントごとのプランニングを全て取り仕切り、村の出来事全てを管理しようとする強気なロージー。
 アンジーをガボにとられたショックでムンバイへ逃げ出し、仕事に逃避しながらも仕事に失敗してゴアに戻って来れば、父の葬儀に立ち会って情緒不安定になっていくサヴィオ。
 それぞれに不条理な人生を抱えつつ、そんなトラウマ経験のないメンバーを振り落としつつ(w)、ファニー(*2)を探す旅は、それぞれの人生の不条理と向き合う旅へと変わっていく。なんともシュールで、オシャレで、人を食った映画であることよ(褒め言葉!)。

 監督のホーミー・アダジャーニアーは、99年のケイ・ケイ・メノンやナセールッディン・シャー主演ヒンディー語映画「Bhopal Express(ボーパル特急)」で助監督として映画界に入った人で、01年の英語映画「Everybody Says I'm Fine!(誰もがオレは元気だと言う!)」の端役出演を経て、06年にサイーフ・アリ・カーン主演の英語映画「Being Cyrus(サイラスのように)」で監督&脚本デビュー。興行的にはコケたものの批評家から好評を博し、12年に同じくサイーフ主演のラブコメ・ヒンディー語映画「カクテル(Cocktail)」を監督。本作が3本目の監督作となる。

 濃いい登場人物たちと共に、お話の主役になってるのは、寂れたゴアの様子を助長させるインテリア類や植物たちでしょうか。キリストの顔を描く門扉、洒落た装飾欄干、木々に浸食されたクラシカルな庭先、パステル調の壁紙やファッション…ひなびたゴアの村々を実際にロケしたと言う、その精査されたレイアウトの数々、その景色そのものが、映画の魅力の多くを生み出している。
 その中で活躍する役者たちの中で要チェックなのは、ファーディー役のナセールッディンの演技(*3)以上に、やはり「インド・オブ・ザ・デッド(Go Goa Gone)」の中でゴアで恐怖体験する役を演じたアナンド・ティワーリーが神父役で登場してる所!! 調べてみるとこの人、「バルフィ!(Barfi!)」で監督助手をしてたり、短編映画の監督してたり、「スラムドッグ$ミリオネア」や「フェア・ゲーム」でハリウッド映画出演してたりしてんのねえ。

ED Shake Your Bootiya (戦利品と一緒に踊れ)




受賞歴
2014 Stardust Awards 女優スター・オブ・ジ・イヤー(ディーピカ 【Happy New Year】と共に)
2015 Screen Weekly Awards 観客選出主演女優賞(ディーピカ 【Happy New Year】と共に)




「ファニーを探して」を一言で斬る!
・【Ishqiya(色情)】に続いて、情けなくどこかズレたおっちゃんを演じるナセールッディンが可笑しかわいい。あんな爺ちゃんになりたいわーw

2016.1.1.

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*1 南インド ゴア州の公用語。
*2 ステファニー? 微笑みの意? 女性のお尻の意?
*3 ワタスの一推し!