Gangster :A Love Story 2006年 116分 その日、ビルの一角で起こった銃撃戦により当事者の男女が緊急搬送されて来た。女性側のシムランは、意識を取り戻しつつこうなってしまった過去を反芻する… *************** 半年前の韓国はソウル。 酒に溺れるシムランは、バーで歌うギタリストのアカーシュと知り合うが、彼女には帰りを待ち続けている男がいるためアカーシュになかなか心を開かない。しかし、その男はシムランに週に1度の連絡しかよこさず、シムランの心は次第に荒んでいく…。 ある日、追手の存在を知ったシムランの心は限界を超え、ついに酒を求めて今まで避けていたアカーシュの家に乗り込んでいく。そこで彼女は、自分がインドで指名手配されているギャングスター ダヤー・シャンカルの内縁の妻である事を告白するのだった…。 挿入歌 Ya Ali (あぁ慈悲深き主よ) *ソウル郊外で、こんなムスリムたちのお祭り(?)なんてやってるんかね? すでに00年代にはボリウッド(*1)が上陸していた、韓国はソウルを舞台にしたボリウッド登場!(*2) 本作でスクリーンデビューしたカンガナー・ラーナーウト(*3)は、見事フィルムフェア新人女優賞を獲得して一気にスターダムにのし上がり、推しも推されぬ人気映画女優へと駆け上っていった。 もー、ギリギリに研ぎすまされた切なくも硬派な悲恋劇で、タイトルから想像されるようなピカレスクロマンとかギャングアクションとかはほとんどない(*4)。 幸せになろうともがけばもがくほど、どんどん不幸な愛の結末へとひた走るしかない女と、その彼女を翻弄し翻弄され続ける男たちの物語。その部分ではまぁ韓国映画っぽくもあるかと思ったけど、あんまり韓国っぽさも前面に出てこない画面で(*5)、紅葉と中華風木造建築とネオン街の陰影が美しく目新しいハリウッド的なインド映画。 ソウルに行った人は色々思う所はあるだろうけど、基本的には「インドからは遠い異国の都会」を舞台にした幻想的で刹那的な悲しい愛のお話になっている。 これ見てると、銀杏の木ってウソっぽいほど黄色いんだなぁ…ああ、なんてチャン・イーモウな世界…と、見慣れてるはずの銀杏の色彩が奇妙に見えてくる不思議。 お話は、前半はシムランを巡る2人の男とのロマンス劇…と思っていると、中盤から話は2転3転し始め、すれ違い、望郷の念に駆られる登場人物たちの思惑が絡み出し、大どんでん返しもあってテンポ良く爽快……ではあるけど、全員が不幸になっていく話なんで、終始ダークトーンな雰囲気に支配される映画でもある。その辺の湿っぽさは、ソウル郊外の湿気った空気ともシンクロしていい雰囲気。 出演作では必ず女優とのキスシーンがあると言う、"キス魔"イムラーン君はやっぱりカンガナーとのキスシーンをバッチリ入れておりましたが(*6)、寡黙で終始厳しい目つきのシャイニー演じるギャングのダヤーは、後半になって一気に名シーンの目白押しで株上げまくってましたわ。シムランとの逃避行を選んでからは、なんか忠犬ぽいイメージで、「あんたホントに指名手配されるほどのギャングスターなの?」と言いたくなるくらい可愛いから困りまする。 本作は、テレビドラマ界から進出して来たアヌラーグ監督作の3作目に当たる映画。 監督デビュー作から、ハリウッド指向の強い映画を作っているだけあって、娯楽作ではあるものの海外マーケット向けの色が濃い映画で、ダンスなし、終始暗いトーンの物語、2時間弱で終わる所なんか完全にハリウッド的。この後にアメリカ市場に食い込んだ「カイト(Kites)」を作ってるだけあって、そのノウハウを溜め込んでいる感じが伝わってくる1本。 他の監督作では、色々とパロディ要素が強かったりおもいっきり盗作的ネタを仕掛けてくる監督なんだけど、本作でも元ネタありなんじゃないかと噂されたのを監督自ら否定してる…そうな。 挿入歌 Bheegi Bheegi (潤んだ[記憶、潤んだ夜、潤んだ眼…]) *さぼてん!
受賞歴
「Gangster」を一言で斬る! ・ソウルにインド人街とかイスラム街区とかできたら、行ってみたいわぁ。
2014.9.5. |
*1 ヒンディー語娯楽映画の俗称。 *2 でも本作は、韓国では未公開らしい。 *3 またはカングナー・ラーナーウト。 アルファベット表記も「Kangana」になったり「Kangna」になったり。 *4 多少、流血アクション? 的なのは、まあ…。 *5 主要登場人物は全員インド人だし。 *6 イムラーン出演作初めて見たけどね! |