Happy Days 2007年 153分
主演 ヴァルン・サンデーシュ & タマンナー他
監督/製作/脚本/原案/台詞 シェーカル・カンムラ
"これが僕の、4年間の大学生活"
ハイデラバードのCBIT(Chaitanya Bharathi Institute of Technology=チャイタニア・バラーティー工科大学 *1)は、入学式を迎えていた。
この日、チャンドゥ(本名チャンドラシェーカル・ラーオ)は、晴れてCBITに入学して様々な新入生と知り合いながら、恒例の先輩達の新入生いびりに耐えつつ意気投合する友人達を作っていく。
入学式で歌を披露したマドゥ、首席卒業を目指すシャンカル、そのシャンカルを初日に車で轢きそうになったサンギータ、わがままな政治家の息子ラジェーシュ、先輩に一目惚れした"タイソン(本名アルジュン)"、自分に自信がなく女らしさを要求される事を拒否するアプー(本名アパルナ)、人付き合いの苦手なパンドゥ…。そんな友人たちと楽しい日々を過ごす中で、チャンドゥは次第にマドゥとの距離を縮めて行くものの、友情・課題・恋愛・先輩たちの決めたルールとの対立と、4年間の大学生活はなかなか思うようには進まない…。
挿入歌 Jill Jill Jinga (ジュン・ジュン・ジガ)
工科大学をに入学した大学生たちの4年間を描く、大ヒットテルグ語(*2)青春映画。
同名マラヤーラム語(*3)吹替版が同時公開となった他、08年にはカンナダ語(*4)リメイク作「Jolly days」、10年にはタミル語(*5)リメイク作「Inidhu Inidhu」も公開された。
インド本国に先立ち、アメリカでも公開されている。
いちおう、語り手であるチャンドゥを主人公にして話は進んでいくものの、物語全体はチャンドゥをはじめとする親友グループそれぞれの大学生活に焦点を当てる、ノスタルジー風味な青春群像劇。その青春劇を成立させるためか、主要登場人物はほぼ新人俳優(当時)で構成されている、若手育成映画でもあるかのよう(*6)。
同年公開の、同じタマンナー主演の大学映画「Kalloori(カレッジ)」と比べると、大都会の名門大学を舞台にしてるだけあって、都会人の大学生活はほぼ学生個人の青春像に焦点が絞られていて、実家との軋轢とかも…ないことはないものの…扱いとしては薄い。その分、大学生間の友情や愛情劇、先輩後輩間の隔たりなんかが主軸にあって、よくある学園青春ものになってる感じ。
ラストの卒業式を劇的に盛り上げる思い出エピソードを逆算して物語を構成してるような映画で、大学入学〜卒業までを時系列そのままに進む本編は、のんびりとしていつつも主要登場人物たちの「一生の宝物となるであろう、大学の同級生たちとの悲喜交々」をじっくりと丹念に描いていく。
青春劇というと、日本では中学・高校あたりが多い気がするけど、インドにおける青春劇が大学を舞台にしてることが多いのは、やっぱ社会に出る一歩手前にいること・それでいながら人生がある程度確定してくる(*7)時期であること・インド社会のしがらみからある程度自由でいられる最後の時期ってことも…あるのかなあどうかなあ(*8)。
主人公(の1人)チャンドゥを演じる(ジーディグンタ・)ヴァルン・サンデーシュは、1989年オリッサ州ラヤガダ県生まれで、米国ニュージャージー州ブリッジウォーター育ち(*9)。
祖父にテルグ語作家ジーディグンタ・ラーマチャンドラ・ムルティが、叔父にTVタレントのジーディグンタ・スリダールがいて、妹ヴェーナ・サヒーティーは11年のテルグ語映画「Ala Modalaindi(こうして、始まった物語)」の挿入歌1曲の作詞と歌を担当している。
医学の道へ進むことを志望していた中で、本作のオーディション広告を見つけて応募した所、主役に抜擢されて映画デビュー。それまで演技経験は皆無ながら、本作の大ヒットで一躍スター男優にのし上がり、以降もテルグ語映画界で活躍中。09年の主演作「Evaraina Epudaina(誰でも、いつでも)」からは歌手としても活躍している。
監督を務めたシェーカル・カンムラは、本作が4本目の監督作。
本作の舞台となるCBITで機械工学を、その後米国留学してコンピューターサイエンスを修了。IT企業に3年間勤めたのち、ロサンゼルスの大学の映画学科に入り直して美術(映像)学位を取得。米国内で様々な映画制作に携わっていった。
99年に、英語+テルグ語映画「Dollar Dreams」で監督&脚本&プロデューサーデビューしてインドのナショナル・フィルムアワード新人監督賞他多数の映画賞を獲得し、一躍実力派監督として名をはせる。以降もテルグ語映画界で大ヒット作を連発。14年には、「Mukunda(ムクダ)」でカメオ出演した他、「女神は二度微笑む(Kahaani)」のテルグ語リメイク作となる「Anaamika(アナーミカー)」の監督も務めている。
経費削減のための方法として、劇中舞台であり監督の母校でもある実際のCBITでの撮影許可をもらい本物の校舎内外で撮影していたと言うことで(*10)、その絵作りには監督自身の体験もかなり反映されている…のでしょか。
映画全編、なんとなくノスタルジックでスレてない学生たちの爽やか純情物語になってるのは、そう言った母校での映画制作のなせる技か。「色々あるけど、大学生活って楽しいよね」って社会人が回想してるような、そんな爽やかな大学生活が美しく、うらやまし(*11)。まあ、理想的大学生活よね…って感じでもあるけれど。
そんな大学生のおバカな4年間を、怒涛のように回想する卒業式シーンへの積み重ねが見事で、そこにかかる音楽も合わせて「クソ…明らかに泣かせに来てるのに、まんまと泣かされてしまう…」と自分の大学生活を振り返ってしまうんだからスンバラし。主人公チャンドゥと同じく「大学でなにを学んだんだろう。なにを成し遂げたんだろう」と悩む元大学生は、是非ともこの映画を見て泣かされてみればイイジャナイ!
挿入歌 O My Friend (オー・マイ・フレンド)
受賞歴
2007 Filmfare Awards South テルグ語映画作品賞・テルグ語映画監督賞・テルグ語映画助演女優賞(ソニア・ディープティ)・テルグ語映画音楽監督賞(ミッキー・J・メイヤー)・テルグ語映画作詞賞(ヴァナマリー/Areyrey Areyrey)・テルグ語映画男性プレイバックシンガー賞(カールティク/Areyrey Areyrey)
2008 Nandi Awards 作品銀賞・音楽監督賞(ミッキー・J・メイヤー)・男性プレイバックシンガー賞(カールティク/Oh My Friend)
2008 CineMAA Awards 作品賞・監督賞・原案賞・脚本賞・音楽賞(ミッキー・J・メイヤー)・作詞賞(ヴァナマリー/Areyrey Areyrey & ヴェトゥリ)・男性プレイバックシンガー賞(カールティク/Areyrey Areyrey)
「HD」を一言で斬る!
・自分の容姿にコンプレックスを抱えるアプーが、鏡の前に貼ってるのがミス・ワールドのアイシュワリヤー・ラーイって、それはさあ…。
2020.4.17.
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