インド映画夜話

Iddarammayilatho 2013年 143分
主演 アッル・アルジュン & アマラ・ポール & キャサリーン・トレーサー
監督/脚本/台詞/原案 プーリ・ジャガンナート
"その時の彼は、私を守る戦士のようだった"




 汚職疑惑に揺れる中央政府高官を父に持つ大学生アーカンクシャーは、そんなデリーの騒ぎをよそにスペイン留学に旅立って喜びもひとしお。
 バルセロナの宿泊先に到着した彼女は、荷ほどき中に先住者の残した荷物を発見。その中には、コーマリと言うテルグ人音大生の写真と日記が入っていた…。

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 コーマリ・シャンカラバラナムは、音楽に精通するテルグ・ブラーミン(=バラモン)の家生まれ。
 父からもらったバイオリンを学ぶためにバルセロナの大学で古典音楽を教えるブランマー先生の元へと留学してきたが、大学初日にヒップホップグループを率いるテルグ人アーティスト サンジュー・レッディと知り合い、次第に惹かれ合うようになる。
 異カースト同士の2人ながら、親への紹介も順調に終わって結婚式を待つばかりとなったのだが…
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 そこで日記は唐突に終わっていた。
 アーカンクシャーは、その間に街中で歌うサンジューその人を発見して、好奇心から日記の事を伏せて彼に近づいていたのだが、ついにサンジューに問いかける…「コーマリは? 彼女はどこへ行ったの!?」


挿入歌 Top Lechipoddi (ずっと、歌って踊れるぜ!!)


 タイトルは、テルグ語(*1)で「女性二人とともに」。
 そのほとんどを実際にスペインロケした、ヒットメーカー監督プーリ・ジャガンナードゥ25本目の監督作。
 同時公開でマラヤーラム語(*2)吹替版「Romeo & Juliets」が、後にヒンディー語(*3)吹替版「Dangerous Khiladi 2」も公開されている。

 日記に綴られた過去のロマンス、それを追体験するもう一人のヒロインとの三角関係と言う恋愛映画構造が、所々で顔をあげる不穏要素によって徐々にリベンジムービーの様相へと変化していく、いつものジャガンナート監督流軽快なマサーラームービー。
 とにかく、そのサービス精神満載の軽快な話運びをより強調する、音楽担当のデヴィ・スリー・プラサードの手がける楽曲のノリの良さはどれも最の高。さらに主役を張るテルグ最高のダンサー俳優でもあるアッル・アルジュンのわけわからん身体能力もあって、いちいち画面が華やかでカッコええ。端役出演からバックダンサーまで、地元バルセロナの人々(たぶん)も多数登場し、「人生は二度とない(Zindagi Na Milegi Dobara)」でスペインにもインド映画人気は確実に広がってんのかねえ…と期待も高まりますよ(*4)。

 本作の物語の中心にいるアーカンクシャーを演じるのは、アラブ首長国連邦の1つドバイ首長国のマラヤーリー系(*5)家庭に生まれた、モデル兼女優のキャサリーン・トレーサー(・アレクサンダー *6)。
 ドバイ時代にモデル活動を始め、ベンガルール(*7)に移住してからもモデルとして活躍。
 2010年に、カンナダ語(*8)映画「Shankar IPS」とマラヤーラム語映画「The Thriller(スリラー)」の2本で映画&主演デビュー。13年には本作の前に「Chammak Challo」でテルグ語映画デビューとなり、翌14年には「Madras(マドラス)」でタミル語(*9)映画デビューしてフィルムフェア・サウスのタミル語映画新人女優賞他を獲得する。以降、タミル語とテルグ語両映画界で活躍中。

 とにかくこの映画の魅力は、タイトルの通り我がままお嬢様アーカンクシャー演じるキャサリーンと、真面目系ヒロイン コーマリ演じるアマラ・ポールの魅力で出来上がってると言ってもいいくらい、2人の女優の愛嬌と芝居の動き、その多彩なファッションも可愛さを強調しまくりでお美しい。
 もちろん、リベンジムービーの容赦ないアクションをこれでもかと演じるアッル・アルジュンのパフォーマンスも、直接本筋と関係ないようなブランマー先生役のブラフマナンダムのとぼけたコメディシーンも、映画のパワーをいつも通り上昇させてくれておりますけども。あ、悪役でスッバラージュが出演してるのも日本のファンは要チェックでっせ。
 テルグ語映画のいつものカラフルさと、それとは別種のバルセロナの華やかさが合わさってカラッとした美しい画面を彩る色彩の魅力全開の映画になってる点だけでも要注目。バルセロナの観光名所とかは特に出てこないのに、家族から離れてラテンな開放感を楽しむインド人たちの求めるスペインへの期待と異国情緒が、映画から透けて見えるようですわん。
 よくある男1女2の三角関係ロマンス映画ながら、2人のヒロインが映画全編でしっかり存在感を主張し続け、使い捨てになってない所も映画構成としてよくできていると同時に華やかさアップでスンバラし。そりゃあ、すぐにバルセロナに行って歌い踊りたくなっちゃうやね!

挿入歌 Ganapati Bappa (聖天ガナパティを讃えよ!)

*ガナパティとは「群衆の主」の意で、現世利益を司る象頭人身の神ガネーシャの別名。


受賞歴
2014 Filmfare Awards 振付賞(V・J・セーカル / Top Lechipoddi)


「Iddarammayilatho」を一言で斬る!
・マフィアが、証拠隠滅のために送り込んできた忍者集団みたいな黒ずくめ暗殺者達はなんやねん(*10)。

2020.4.24.

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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 南インド ケーララ州の公用語。
*3 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*4 まあ元々インド映画市場が上陸していたらしい事もあるだろうけど。
*5 マラヤーラム語を母語とするコミュニティ。
*6 トレーサーは母称名で、アレクサンダーは父称名。
*7 別名バンガロール。カルナータカ州都。
*8 南インド カルナータカ州の公用語。
*9 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。



*10 日本刀っぽい武器振り回してるし、手裏剣は投げるし。