インド映画夜話

君を探してた (Koi...Mil Gaya) 2003年 166分
主演 レーカー & リティック・ローシャン & プリティ・ズィンダー
監督 ラケーシュ・ローシャン
"君は、一人じゃないよ…"







 在野の天文学者サンジャイ・メヘラーは、長年、音声信号による宇宙人とのコンタクトを研究していた。
 ある日、信号に答える音声をキャッチし「宇宙人は実在する!」と宇宙開発事業団に報告するも、信用されずに追い返されてしまう。不満たらたらで帰路についたメヘラー夫妻だったが、その途中に空から巨大なUFOが出現! 驚いたサンジャイは運転を誤り大事故を起こしてしまう!!
 この事故から生き残った妻ソニアだったが、その後遺症でお腹の子供は脳障害を負ってしまった…。

 それから十数年。
 カウサリーで平和な日々を過ごすソニアと息子のローヒトだが、ローヒトはいつまでも7年生止まりの学力で、何年も留年を余儀なくされていた。
 そんな時、近くに越してきた少女ニシャーは、いざこざの中でローヒトの現状を理解し、親友同士となって彼をサポートするようになる。
 ある日、物置から亡き父親のパソコンを持ち出したローヒトは、ニシャーに教わりながらパソコンに入っていた音声信号装置の送信を楽しんでいると…その夜、音声に答えるかのように街上空に巨大なUFOが出現する!


挿入歌 It's Magic

*宇宙人から、超人的な身体能力と知能を与えられたローヒトは、「もうボクは子供じゃないんだ!」と同い年たちが集うディスコに繰り出す。
それを止めにきたニシャーだったけど…。
にしてもインドの地方都市での娯楽って、映画館とディスコしかないんかー。



 原題は、ヒンディー語で「誰かと出会った」…らしい。
 ボリウッドでは珍しい、SFものに障害児ものを絡めた作品。随所に「E.T.」「未知との遭遇」のパロ……もとい、オマージュが登場する。
 2003年に公開されるや大ヒットして、06年に続編「クリシュ (Krrish)」が、13年にはさらなる続編「クリッシュ (Krrish 3)」が公開されている。
 日本では、2017年にNetflixにて「君を探してた」の邦題で配信。

 全体的には、SF映画と言うより障害者もの青春映画としての比重が強く、前半はほとんどローヒトと周囲の人との親睦の様子や現状の説明が丁寧に描かれていく(ま、悪役は最後まで悪役だったけど…)。
 後半に登場する宇宙人ジャードゥー(ヒンディー語で"魔法")との友情や、ジャードゥーによって人並み以上の能力を身につけたローヒトの活躍、そのジャードゥーとの別れが彼の特殊能力との別れにもなることへの葛藤なんかもグッド。カッコいいローヒトはほんのちょっとだったけど、バランスのとれた構成になっていてビックリ。
 SFや障害者問題なんかの新しい要素を取り入れつつ、それ全開の映画にしないで、構造的にはわりとクラシカルなボリウッドものになってるあたり、新規ファンと古参ファンともに受け入れられた要因でしょうか(*1)。

 主役のリティックは、それまでのイケメンスターのイメージとは180度異なる、知的障害をかかえながらも純粋で素直な少年主人公を好演!
 後半、宇宙人ジャードゥーの特殊能力で、超人的な運動能力と知力を身につけるいつものリティックともども、彼の演技力の幅がめいっぱい感じられる作品になっている。
 監督兼父親サンジャイ役は、リティックの実父(!)ラケーシュ・ローシャン。リティックの本格デビュー作「その一言が聞きたくて(Kaho Naa... Pyaar Hai)」でも監督していたそうな(*2)。

 この映画以降、リティックの右手の2本の親指が、公然とスクリーンで見られるようになったんだって。障害児もの映画を作ろうとしたのも、企画云々以上にリティックへの親心…とか?(深読み?)
 インドでは、身体の奇形は幸運のシンボルとして大事にされるそうだけど、とは言え映画一門出身のスターとして活躍するリティックは、本作までハッキリと親指を見せることはなかったと言う。それが、この映画では宇宙人がリティックと似た指を見せてるし、握手のドアップシーンも多く、ニシャーとのちょっと変わった握手なんかはリティック自身の経験から来る仕草なんじゃなかろか(*3)。

 後半登場する宇宙人ジャードゥー(*4)は、全身青くてお目々ぱっちりなあたり「アバター」を先取りして…る? インド人の見解募集。うん。

 撮影も素晴らしく、山あり湖あり高原ありの地方都市の状景を非常に美しく描写している(*5)。
 にしても、宇宙人が取り残された理由が、ちょっと地球散策におりたら森から象が出てきてビックリしたから…って言うのが、あぁインド。
 そこいらへんに野良象とかいないでくれー! 本気で怖いっつーの。


挿入歌 Koi Mil Gaya(今、誰かさんを見つけた)


*ローヒトとニシャーの、ちょいとノスタルジックなデート風景。



受賞歴
2004 IIFAインド国際映画批評家協会賞 監督賞・主演男優賞
2004 National Film Awards 社会派作品賞・特殊効果賞・振付賞(Idhar Chala Main Udhar Chala)
2004 Filmfare Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞・批評家選出男優賞(リティック)・振付賞(Idhar Chala Main Udhar Chala)
*この年、本作でFilmfare主演女優賞にノミネートされたプリティは、「Kal Ho Naa Ho(たとへ明日が来なくとも)」で主演女優賞を獲得している!
2004 Zee Cine Award 作品賞・監督賞・主演男優賞
2004 Star Screen Award 作品賞・監督賞・主演男優賞
2004 Bollywood Movie Award 主演男優賞・助演女優賞(レーカー)・批評家選出男優賞(リティック)・女性プレイバックシンガー賞(Koi Mil Gaya)・振付賞
2004 Apsara Film & Television Producers Guild Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞

2010.11.19.
2017.8.26.追記

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*1 その分、ミュージカルシーンが古くさ…げふんげふん。ま、後半はローヒトの変身に合わせて現代っぽくはなるけど。
*2 子役時代には父子共演もしてるらしい。
*3 今やインドの子供たちには、「自分もリティックみたいな聖なる親指が欲しい!」と大人気だそうだけど…。
*4 なんとなく、グレイと鯉を足して2で割った感じ…。
*5 一部、カナダで撮影したそうな。