ドゥルガー ~女神の戦い~ (Kahaani 2: Durga Rani Singh) 2016年 128分
主演 ヴィディヤー・バーラン & アルジュン・ランパール
監督/製作/脚本/原案 スジョイ・ゴーシュ
"あなたたちも同じよ…。誰も助けてなんてくれない"
西ベンガル州チャンダンナガル(*1)に住むヴィディヤー・シナーは、下半身付随の娘ミニーと共に貧しくはあるが平穏な毎日を過ごしていた。
ある日、娘の介護シッターの到着を待たずに出勤せざるを得なかったヴィディヤーは、娘の主治医から米国治療の手続きがようやく通ったという連絡を受けて喜ぶものの、その夜、帰宅した家に誰もいない事実に愕然とする。
介護シッターからも大家からも「朝、もう大丈夫だと貴方から電話がきてからは、なにも知らない」と身に覚えのない話を語られ戸惑うヴィディヤーの携帯に「娘は預かった。殺されたくなければ、メールした場所にすぐ来い」との連絡が入る。夜中の街に飛び出ていった彼女は、不用意に飛び出た道路で車にはねられて…!!
その頃、コルカタから左遷されてチャンダンナガルに赴任して来ていた、インデルジート・シン副署長は通報を受けてヴィディヤーが搬送された病院にやって来る。彼は、昏睡状態の彼女の顔を見て驚愕する…!「まさか…ドゥルガー!?」
プロモ映像 Lamhon Ke Rasgulle
2012年の大ヒットヒンディー語(*2)映画「女神は二度微笑む(Kahaani)」の続編。
インド本国に先駆けてクウェートで、インドと同時公開で英国・アイルランド・ポルトガル・米国などで一般公開。日本では、2018年のICW(インディアン・シネマ・ウィーク)にて上映。
原題の「2」というタイトル通り監督・脚本・主演・ジャンルが前作と同じ映画ではあるものの、前作と物語的なつながりはない。
ヴィディヤーが主人公を演じる事、ベンガル地方を舞台とする事、どんでん返しがあるという部分が共通するスリラーサスペンス映画。企画時のタイトルは「Durga Rani Singh」だったそうなので、「Kahaani 2」というタイトル自体、企画成立用後付け設定なのかしらん?
何を言ってもネタバレになってしまう前作の、不穏な事件の進行とそこから起こる大どんでん返しと言う映画構造は継承しているものの、女児への性的虐待と言う重い現実を話の中心に持って来たことによって、随分毛色の違う社会派映画へと変化している。その意味では、前作の成功を利用した社会啓発のための企画、って感じもしないではない。
ある程度、ロマンスやアクションの配分にも気を使った娯楽作として作られているし、終始ハラハラする展開に「さあ次はどうなる!?」と話を引っ張っていくワクワク感も持続しているんだけど、前作の突き抜けた映画構成上の完成度はなくなって、どうしても散漫な印象が…。映画単体としては、よくできたサスペンスなんだけど。
前半、暗い夜のシーンが続く不穏なチャンダンナガルと、冬枯れの寂しさ漂いつつ牧歌的な避暑地カリンポンの景色との対比、その不穏な街での日常描写と避暑地の裏側に隠され明るみに出てこない醜悪な現実という対比、そこでただ1人で社会全体が黙認し徹底して否定する現実と戦う女性主人公、家族の残酷さ、擬似家族の温かさなど、緻密に積み上げられる映像的対比は流石の一言。
ただ、ヴィディヤーとインデルジートとの関係や、わりと都合のいい使われ方をするヴィディヤーの日記(*3)、声の聞き分けが難しい電話などなど…気になる点はちらほらとあるのはまあ…。
本作の副主人公…というより後半は実質主人公…のインデルジート・シンを演じているのは、1972年生まれのモデル兼男優アルジュン・ランパール。
マディヤ・プラデーシュ州ジャバルプルのパンジャーブ系軍人家庭生まれで、両親の離婚後、小学校教師をしているオランダ=パンジャーブ人ハーフの母親の元マハラーシュトラ州ムンバイで育つ。デリーの大学で経済学の学位を取得し特別勲章を授与され、在学中からモデル業を始める。94年に"ソシエティ・フェイス・オブ・ジ・イヤー"を獲得してスーパーモデルとして活躍。98年に同じモデルのメフル・ジェシアーと結婚し2人の娘をもうけるが、18年に離婚している。
ミュージックビデオ出演を経て、01年のヒンディー語映画「Pyaar Ishq Aur Mohabbat(愛と恋愛とロマンスと)」で映画&主演デビューし、IIFA(国際インド映画協会)新人スター・オブ・ジ・イヤー賞とスタースクリーン注目新人賞を獲得。それより前に撮影が始まっていた「Moksha(救出)」、さらに「Deewaanapan(狂おしく)」も同じ年に公開されてその演技力を高く賞賛され、すぐに年何本もの映画に出演するトップスターになっていく(*4)。
メディア上では、何度となく「ザ・ハンサム」と騒がれ、12年のタイムズ・オブ・インディア誌主催「最も魅惑的な男性」に選出されている他、数々のステージパフォーマンスやTV番組司会などでも活躍。ニューデリーでナイトクラブ"Lap"を経営していたりしてたそう(*5)。
兎にも角にも、前作同様ヴィディヤーの演技力・役作りの半端なさが凄まじく、それを受ける周りの役者たち・セットの作り込みと生活臭の見事さが見もの。
インデルジート演じるアルジュンはじめ警察たちのうだつの上がらなさ具合、小学生時代のミニー演じる子役ナイーシャー・カンナや、胡散臭さと怖さを同時に発揮するミニーの祖母ディーワン夫人演じるアンバ・サンヤルの存在感の厚みがスゴイ。
まあその分、犯罪を隠す気あんの? って感じの犯人側の雑さが気にはなってくるけど、別に隠そうとしなくてもお咎めなしなインド社会の現実がそんなもんなんかね、って感じでもあるのがなんとも。
プロモ映像 Aaur Main Khush Hoon
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2018.10.5.
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