Konchem Ishtam Konchem Kashtam 2009年 172分(160分、165分とも)
主演 シッダールタ & タマンナー
監督/原案 キショーレ・クマール(・パルダサーニー)
"愛を分かち合って。僕を分かち合わないで"
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のどかな農村に生まれたギーター・スブラマニアムは、父スブラマニアムに溺愛され世話焼きな親戚たちと幸せな毎日を過ごしていた。
お互いの苦労は共に背負い、幸せを分かち合う家族と暮らしてきたギーターはしかし、父を始め親戚一同からハイデラバードの大学へ単身進学することを勧められる。いつも家族と共にある事を大事にしてきたギーターは、最初こそ拒否するものの、娘の将来をより良きものにしたい父親の頼みを無碍にできず、1人大都会へと出発する…。
ハイデラバードにて、従姉妹スワティの家に下宿するギーターは、大学生活の中でスワティの友人グループにいたチャラ男シッドゥ(本名シッダールト・ヴァルマー)と知り合う。いつもくだらない悪戯か女の子を口説くばかりのシッドゥは、その評判に反してギーターの周りの友人たちに常に囲まれ笑顔が絶えない。次第に友達たちに馴染んで行くギーターも彼の人の良さを理解していくようになり、それからはより大学生活を楽しんで行くようになっていく。
そんなある日、シッドゥの母親である大学教授ラージャラクシュミーの前で「今日、シッドゥがお父さんを迎えに空港に行ったんですよ」と不用意に発言してしまったギーターは、その事で気分を害してしまったらしい教授の事が気がかりになってしまう。
「…それで、かあさんは黙って行ってしまったの?」
「うん……ねえシッドゥ、先生は大丈夫よね?」
「…知るもんか。どれほど母さんが傷ついたか……あ、いやいや、冗談だよ冗談。泣かないでギーター。かあさんは多分気にしてないよ。大丈夫。ほら、笑顔になって、ね?」
その時、一瞬シッドゥの顔が曇ったのを見たギーターは、常に笑顔しか見せないシッドゥの抱える裏の顔を、その時初めて意識するのだった…。
挿入歌 Evade Subramanyam (誰だよスブラマニアムって!?)
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*ギーターとの結婚を彼女の父スブラマニアムに拒否されたシッドゥの自暴自棄の図。
最後に意味ありげに登場するのは、テルグ語・タミル語映画界で活躍するダンサー兼振付師で、本作でも振付を担当しているラージュー・スンダラム。
タイトルは、テルグ語(*1)で「小さな恋、小さな困難」。
キショーレ・クマールの監督デビュー作となった、ラブコメ映画。
2011年にはベンガル語(*2)リメイク作「Romeo(ロミオ)」が、12年にはネパール映画リメイク作「Mayako Barima」が公開された他、同名タイトルでタミル語(*3)吹替版が公開され、オリヤー語(*4)吹替版「Tu Mo Arambha Tu Mo Shesha」も公開されている。
同名TVシリーズがあるみたいだけど、本作とは関係ない…のかな。
新人監督に任せるにふさわしい(?)手堅いラブコメ映画な1本で、前半はヒロインであるギーターの視点で、後半は結婚の障害となる家族の離散に悩むヒーロー側のシッドゥの視点で紡がれている2部構成。
理想的な農村大家族生活から大学に出てきたギーターの家は、父権絶対ながら父親によって家族が1つにまとまっているため、彼女の自由恋愛は父親さえ許可すれば問題なし。対して都市部生活者のシッドゥの家は、すれ違いによって両親が離婚してお互いに不干渉状態のために、息子シッドゥが母親と同居しながら母親に秘密で時々父親と会っていると言うアンバランス状態。その対比構造の中で、それぞれに親が子供の将来を心配し、人間関係に口出しし、その裏の家族との関係性を最重要視していく。大学生たちの青春恋愛映画でありつつ、やはり老若男女の観客に向けてオススメしやすい安心設計である親子・夫婦・各家庭それぞれに持つバラエティ豊かな悩みを配置した家族ドラマとしてまとめられている映画になっている。
監督を務めたキショーレ・クマール(・パルダサーニー。別名ドリー)は、アーンドラ・プラデーシュ州クリシュナ県(現NTR県)ヴィジャヤワーダ生まれで、北アーンドラ地方(*5)ヴィジャヤナガラム県都ヴィジャヤナガラム育ち。
県内の大学で法学を修了後、ハイデラバードに移住して映画界入り。スリーヌ・ヴァイトラ監督やV・V・ヴィナーヤク監督の元で助監督を務める中、05年のテルグ語映画「Bhageeratha」の原案を担当し、本作の脚本を制作(*6)。本作の成功をもとに、テルグ語映画界で監督兼脚本家として活躍中。以降、他言語映画のテルグ語リメイク作を多く手がけている。
農村から出てきた真面目な大学生、って設定のわりにはサリーにしろ洋装にしろファッションモデルばりに色んなファッションを披露するギーター役のタマンナーのお美しさが1つの武器として惜しげも無く発揮され、07年の「Happy Days(ハッピー・デイズ)」や同年のタミル語映画「Kalloori(カレッジ)」でも魅せた大学生役タマンナーの可愛らしさが本作でも全開に表現されている映画でありますわ(*7)。
一方のシッドゥ演じるシッダールタ(*8)も、本作公開の前年公開作「Aata(ゲーム)」やさらに1年前の「人形の家(Bommarillu)」「Rang De Basanti(浅黄色にそめろ)」でも大学生を演じているからか、慣れた感じの貫禄も感じさせるチャラ男演技。自堕落な若者なわりにわりと筋肉質よね、とは思うし後半の悩める息子像に対して「その筋肉いる?」と思わんでもないけれど、家族への悲しい思いを押し殺しての友人たちに常に見せている笑顔の裏に隠された悲しさが現れていく中盤以降はいい表情の連続でありました。
キャスティング的に最も注目なのは、主人公2人の親たちで、色々と過去を背負い込んでいるが故に素直になれずこじれた人間関係がよりこじれていく様を見せつける大人たち3人が、本作の影の主役と言ってもいい構成であり、本音を隠した奥深い演技を見せてくれる。
田舎の父権中心社会に鍛えられた強き父親であるギーターの父親スブラマニアムを演じるのは、名優ナーサル。
子煩悩ながら仕事にかまけて家に寄り付かなくなってしまったシッドゥの父親プラカーシュ・ヴァルマー役には、やはり父親役にはこの人プラカーシュ・ラージ。
そんなプラカーシュと家庭や育児の方針ですれ違い、その修復もできないまま対立することになるシッドゥの母親ラージャラクシュミーには、日本でも人気の女優ラムヤー・クリシュナ。
さあ問題です。全員「様」付けで呼びたい3人の名優の中で「親として怒られてみたい人」は誰!? 全員、怒ったらめちゃ怖そうなんだよ〜〜〜〜〜〜。
まあそれにしても、めんどくさい大人たちの世界に対して異議を唱えつつも大人たちの面目を保ったまま改善しようとする子供世代の気遣いはホント甲斐甲斐しいというか、お疲れ様と言うか。大人はもうちょっと子供達世代のことを気遣ってくださいよと言いたくなるくらいメンドくさ。
ま、その大人たち側がめんどくさくなるくらいには、大学生たちのハッチャケ具合も騒々しくシャレにならない悪ふざけが多く描かれるのも映画的対比ってやつでしょか。大学がそんなに暇なんかと言いたくなるくらいには、毎日お祭り騒ぎみたいでうらやまし。あの人たち何を専攻して学んでるんやろか(*9)
挿入歌 Egire Egire (飛んで飛んで [夢が飛んで、永遠の太陽の中へと飛んで行く])
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*スワティの誕生日に、シッドゥはプレゼントの鳩を空へ放つように言う。「君に鳩をプレゼントしたんじゃないんだ。君に鳩の自由さをプレゼントしたんだから」シッドゥのこの発言を聞いたギーターは、今までとは違う彼の側面に興味を示し、友達の輪に積極的に入って行くように…。
受賞歴
2009 Filmfare Awards South テルグ語映画助演女優賞(ラムヤー・クリシュナン)
2009 Nandi Awards アッキネンニー(最優秀家庭映画)賞・コメディ演技女優賞(ヘーマ)・脚本賞(ヴィクラム・シリコンダ & ディーパク・ラージ)
2010 CineMAA Awards コメディ演技賞(ブラフマナンダム)・監督デビュー賞
Mirchi Music Awards (Telugu) 批評家選出アルバム賞・批評家選出歌曲賞(Aanandama)
「KIKK」を一言で斬る!
・「結婚前に、相手の事を7代前まで調べるものだ」ってインドとんでもね(田舎の、名家の頑固親父側の主張として言ってる台詞だけど)
2023.11.11.
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