インド映画夜話

その一言が聞きたくて (Kaho Naa... Pyaar Hai) 2000年 172分(180分とも)
主演 リティック・ローシャン & アミーシャー・パテール
監督/製作/脚本/原案 ラケーシュ・ローシャン
"さあ言って…もう一度"




 歌手活動しながら外国車販売店スタッフとして働くローヒトは、両親を亡くして小学生の弟アミットと下宿暮らしの身の上。

 ある日、勤め先の社長シャクティ・マリークの親友である大富豪サクセーナー氏に車を届けに行って氏の一人娘ソニア・サクセーナーと知り合い、思いがけず彼女の誕生日パーティーで歌を披露することになって意気投合。ソニアから豪華客船での船旅に招待される。
 この船旅の途中、アクシデントから2人だけで海上に取り残されてしまい、数日間協力し合いながらの無人島暮らしを経験せざるを得なくなるが、その中で2人は距離を縮め両思いに…しかし、救出に来たサクセーナー氏はその怒りをローヒトにぶつけて彼を娘から引き離そうとする。一旦はソニア自身の強い主張でなんとか2人の関係は維持されたように見えたのだが…数日後、ローヒトが街中で偶然にシャクティ社長と警官たちによる要人殺害を目撃してしまうと…!!


挿入歌 Ek Pal Ka Jeena (人生は一瞬 [君は去ってしまう])


 原題は、ヒンディー語(*1)で「言って…愛してるって」。略称「KNPH」。
 ヒットメーカー ラケーシュ・ローシャン9本目の監督作であり、彼の息子リティック・ローシャンと新人女優アミーシャー・パテール(声は吹替)と言う大型新人の映画デビュー作(*2)。

 2000年度最高売上を達成したヒンディー語映画。その大ヒットに乗って、合計で92もの映画賞を獲得してギネスブックに世界記録として登録された映画となった。
 その内容は、1986年のカンナダ語(*3)映画「Ratha Sapthami」を部分的にリメイクしたもの、と言う指摘がある。
 スペイン語圏では、ミュージカルシーンほぼカットによる1時間短縮バージョンで公開されたそう。
 日本では、2017年にNetflixにて「その一言が聞きたくて」のタイトルで日本語幕版が配信された。

 ロマンスに家族愛に権力の腐敗に復讐劇にと、相変わらずの前後篇2部作か! ってくらい高密度な内容による盛り上げ度300%な映画ながら、全体としては牧歌的でのんびりしてるゆるーい雰囲気なのはまあ、製作年代もそうだけどラケーシュ・ローシャン監督作の匂い全開な感じ。
 当初は主演オファーは別の人たちに出してたらしいけど、ローシャン監督自身が映画界に誘っていた才女アミーシャーと、監督の実の息子リティックのデビューを飾るために、これでもかと劇的演出が繰り返される熱量のハンパなさったらもう必見。

 お話は、前半はインド(ムンバイ?)を舞台に夢に向かい突っ走る貧乏青年とお嬢様の甘々なロマンスが中心。後半はニュージーランドに舞台を変えて、恋人の死を嘆くヒロインがその恋人そっくりの男を見つけて過去と向き合う新たなロマンス&腐敗警官たちへの復讐劇へと発展。
 今見ると、特にこれと言う印象のないオーソドックスなお話ながら、前半と後半で映画の雰囲気(*4)が大きく変わる作りでサービス精神満載。それに答える新人リティック&アミーシャーのパフォーマンスの完成度も高くて「よくまあ、デビュー作でここまで堂々とヒット作を背負って演技してんなあ」と感心してしまいますよ。ミュージカルの振付を担当したのは、かのファラー・カーンなんだけど、リティックの身体能力に振付側がまだ追いついてない…と言うか信用していない感がつきまとうあたりが、デビュー作故って感じですかねえ。

 この時代のボリウッドにおけるオシャレ度が、いまいち「???」ってなることが多いのもご愛嬌ながら、無人島での恋人2人の共同生活なんて定番ロマンスシーンなんかは、のちのリティック主演作「バン・バン!(Bang Bang!)」と比較したくなってくる。そういや、劇中での主人公2人の出会う信号機シーンは、リティックの経験をそのまま生かしたシーンだそうですけど…ホンマ? ホンマにホンマ?
 いろんな顔を見せてくれるヒロイン演じるアミーシャーは、なんか角度によってデビュー当時のアヌーシュカ・シャルマーとかトリシャーを先取りしてる感じにも見えなくもなくも…ウーム、そのわりにその後あんま人気が出なかったのがかわいそうな感じも…。
 後半のニュージーランドロケによって、「ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)」より先にインドでニュージーランド観光ブームが巻き起こり、その騒ぎをニュージーランド側は「リティック要因」と呼んでいたと言う(*5)。もともと企画段階ではフィジー諸島ロケを考えていたと言う話だけど、ロケ誘致にOK出したニュージーランドは先見の明に優れておりましたネ!(ホンマかいな)

挿入歌 Janeman Janeman

*公開当初はカットされていたミュージカルシーン。
 映画の大ヒットののち、ソフト化される時に主演アミーシャ・パテールの提案で復活させたシーンだそうな。


受賞歴
2001 Filmfare Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞(リティック)・男優デビュー賞(リティック)・音楽監督賞(ラジェーシュ・ローシャン)・男性プレイバックシンガー賞(ラッキー・アリ / Na Tum Jano Na Hum)・脚本賞(ラヴィ・カプール & ホーニー・イラーニー)・振付賞(ファラー・カーン / Ek Pal Ka Jeena)・編集賞(サンジャイ・ヴェルマー)
2001 Star Screen Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞(リティック)・音楽監督賞(ラジェーシュ・ローシャン)・男性プレイバックシンガー賞(ラッキー・アリ / Ek Pal Ka Jeena)・期待の新人賞(リティック)・脚本賞(ラヴィ・カプール & ホーニー・イラーニー)
2001 Zee Cine Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞(リティック)・男優デビュー賞(リティック)・女優デビュー賞(アミーシャー)・男性プレイバックシンガー賞(ラッキー・アリ)・女性プレイバックシンガー賞(アルカー・ヤグニク)・音楽監督賞(ラジェーシュ・ローシャン)
2001 IIFA(International Indian Film Academy Awards) 作品賞・監督賞・主演男優賞(リティック)・男優デビュー賞(リティック)・音楽監督賞(ラジェーシュ・ローシャン)・男性プレイバックシンガー賞(ラッキー・アリ / Ek Pal Ka Jeena)・女性プレイバックシンガー賞(アルカー・ヤグニク / Kaho Naa Pyaar Hai)・歌曲録音賞(サティーシュ・グプタ)・編集賞(サンジャイ・ヴェルマー)・振付賞(ファラー・カーン)
2001 Sansui Viewer’s Choice Awards フェイス・オブ・ジ・イヤー賞(アミーシャー)
Channel V Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞(リティック)・男優デビュー賞(リティック)・音楽監督賞(ラジェーシュ・ローシャン)・男性プレイバックシンガー賞(ラッキー・アリ)
2001 Bollywood Awards 主演男優賞(リティック)・作品賞・監督賞・男性プレイバックシンガー賞(ラッキー・アリ / Kaho Naa Pyaar Hai)・女性プレイバックシンガー賞(アルカー・ヤグニク / Kaho Naa Pyaar Hai)
2001 Screen Weekly Awards 作品賞・音楽監督賞(ラジェーシュ・ローシャン)・男性プレイバックシンガー賞(ラッキー・アリ / Ek Pal Ka Jeena)・女性プレイバックシンガー賞(アルカー・ヤグニク / Kaho Naa Pyaar Hai)・編集賞(サンジャイ・ヴェルマー)・振付賞(ファラー・カーン / Ek Pal Ka Jeena)・期待の新人賞(リティック)
Channel V Awards 作品賞・監督賞・主演男優賞(リティック)・男優デビュー賞(リティック)・音楽監督賞(ラジェーシュ・ローシャン)・男性プレイバックシンガー賞(クマール・サーヌー)

2019 IIFA(International Indian Film Academy Awards) BIG20特別作品賞


「その一言が聞きたくて」を一言で斬る!
・リティックの作る『オムレツは何風がいい? スペイン風? 日本風? チーズかベーコン?』って、日本風はどう料理する気だったのーーー!!??(ワクワク

2021.7.3.

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*1 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*2 さらに、アミーシャーの母親アーシャ・パテールも、本作で映画デビューしている!
*3 南インド カルナータカ州の公用語。
*4 ロケーション、ファッション、音楽、芝居などなど。
*5 のちにリティックは、主演作「人生は二度とない (Zindagi Na Milegi Dobara)」で同じようなスペイン旅行ブームを引き起こしていたりする!