Kanthaswamy 2009年 195分
主演 ヴィクラム(歌も兼任) & シュリヤー・サラン
監督/脚本/原案/出演 スシ・ガネーシャン
"お前は、俺を殺す最大のチャンスを2度逃した"
"…3度目は、俺の番だ"
とある村のムルガン(*1)寺院では、貧困に苦しむ村人たちの願い札が木に結ばれると、翌日には何者かがその人々に必要なお金を届けていた。
驚く村人の相談に乗っていた警察署長は、そのお金を押収してガメろうとするものの、その夜中に突如現れた鶏の仮装をした男に散々な目に合わされ押収金をすぐに返却することに…!!
同じ頃、警察内の特別機関CBI(=Central Breau of Investigation インド中央捜査局)所属の捜査官カンダスワーミーは、長年尻尾をつかめなかった富豪PPP(本名パルル・パラマジョティ・ポンヌサーミー)の闇金を発見・押収することに成功。その捜査中、PPPが全身麻痺を発症したと騙ったことから、カンダスワーミーに怒りをぶつけるPPPの娘スッブラクシュミーは、復讐のためにカンダスワーミーをつけ狙い始めていた。そんな彼女を適当にあしらうカンダスワーミーの方は、仲間たちと秘密裏にある活動を開始していたのだが…。
一方、件のムルガン寺院を捜査するCBIのプランダマン警視は、村人に届けられた宝飾品の出所から、多発する富豪襲撃事件の犯人へと通じる証拠をつかみ始める…。
挿入歌 Allegra (アレグラ)
大ヒット映画を連発するタミル語(*2)映画界の監督スシ・ガネーシャンの、4本目の監督作となる、マサーラームービー。
同時公開で、一部キャスト替えのテルグ語(*3)版「Mallanna」が、後の12年にベンガル語(*4)リメイク作「Most Welcome」が、13年にはヒンディー語(*5)吹替版「Shiva - The Superhero」がそれぞれ公開されている。
タミル・オリジナル版は堂々の3時間越えだけども、私が見たテルグ語版は2時間56分、ヒンディー吹替版は2時間23分と、それぞれのバージョンで大幅に短縮されてたりする(*6)。
12年公開作「Mugamoodi(マスクマン)」よりも早い、タミル語映画界初のスーパーヒーローもの映画ということで見てみたら、前半〜中盤にかけて多彩な変装(?)を見せるヴィクラム演じるカンダスワーミーの活躍が描かれるものの、基本的には悪徳富豪と警察とのいつも通りの抗争ものアクション映画って感じ。
後半になればなるほど、そのテーマとしての富の不均等分配による社会の混乱を声高に唱える正義漢カンダスワーミーの活躍部分が濃くなって「あれ? 最初の頃の変身はなんだったんだっけ?」ってなってしまうのは、まあご愛嬌…かねえ。
とはいえ、それぞれの変装でのヴィクラムのなりきりっぷりが凄まじく、正体不明・挙動不審な雄鶏スーツヒーローの時、女装してチンピラたちをボコりに行く時、サドゥーっぽい格好の老人に変装した時と、それぞれに違う演技力を見せつけてくる役者バカ的なのめり込み具合がハンパない。いやー、ヴィクラムさんは役者やのぅ。
まあ、スーツヒーロー映画かと問われれば、「Mugamoodi」ほど徹底はされてないよね、って感じではありまする。
本作の監督&脚本&原案を担当したのは、1971年タミルナードゥ州マドゥライ県ヴァンニヴェランパッティに生まれたスシ・ガネーシャン(生誕名ガネーシャン・スッバイヤー)。
学生時代から雑誌アナンダ・ヴィカタンに多くの記事を発表してジャーナリストとして活動してたそう。
マニ・ラトナム監督のもとで、タミル語映画「ボンベイ(Bombay)」他の助監督を務めて映画界入り。その後、映画プロデューサー兼監督のシャンティ・ティアガラジャンの誘いを受けて脚本を準備して、02年に「Five Star(ファイブ・スター)」と「Virumbugiren」の2本で映画監督&脚本デビュー。前者でタミル・ナードゥ州映画賞の脚本賞を、後者で作品賞と監督賞を獲得する(*7)。
06年の監督作「Thiruttu Payale(あなたは盗人)」を挟んで、本作が4作目の監督作。この後、13年に「Shortcut Romeo(ショートカット・ロミオ)」でヒンディー語映画監督デビューもしている。
2018年、女優アマラ・ポールをはじめ何人かの映画関係者が、スシ・ガネーシャンからセクハラ被害を受けたと告発して論争を巻き起こしているという。
そう言われれば、ヒロイン スッブラクシュミーがやたら色仕掛けで主人公に迫ってきたり、富豪が金にものを言わせて女性を囲ってたり、主人公の取り調べでスッブラクシュミーに性犯罪者をけしかけたりして自白強要を迫ったりと、ヤバそうなネタはそれなりに入っている映画ではあったけども(*8)、まあ本作テーマよろしく、実際に資金や権力を盾にしたよくある話のカリカチュアってことではあるんだろう…と思えてしまうところが、余計にゲスい。マフィア抗争もの映画だからなあ…と思えなくはないけれど。
映画中盤、意外なメキシコロケのシーンがそこそこ長く展開して、ハリウッドに対抗している両国の映画界が手を組む所も見ものではあるけれど、ほぼ悪役扱いなメキシコ人の役柄がなんとも。それよりも印象的なのは、メキシコの起伏に富む風光明媚な景色の数々。インドとはまた違う壮大な景色をきっちり映画内に写しこんでいるのがスンバラし! でございますよ。
そして何と言っても印象的な、カンダスワーミーの名前を連呼するテーマソングのカッコ良さよ!!!
挿入歌 Mambo Mamiya (マンボー・マーミヤー)
受賞歴
2009 Edison Awards PRO(広報)賞
2010 Amrita Mathrubhumi Award 主演女優賞(シュリヤー)
「Kanthaswamy」を一言で斬る!
・ヴィクラムの女装姿にみんなが騙されるって……邦画『日本誕生』で三船敏郎が女装してみんなが騙されたってノリと同じと思えばまあなんとか…(とか納得するわけねーだろぅぅぅぅー!!!)。
2019.2.1.
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*1 タミル地方で人気の軍神。シヴァ神の息子の軍神スカンダと同一視される神様。
*2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*3 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*4 西ベンガル州とトリプラ州の公用語。
*5 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*6 それぞれ、3時間以内とか2時間半以内の上映時間でとかの制約がついたんかしらん?
*7 制作自体は、「Virumbugiren」の方が先だったそうだけど、公開は「Five Star」の方が先になった。
*8 描写としては、そこまで直接的ではないけれど。
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