クリッシュ 仮面のヒーロー (Krrish) 2006年 175分 かつて宇宙人に特殊能力を授けられたローヒトの息子、クリシュナ。彼は幼い頃から超人的な学習・運動能力を発揮し、祖母ソニアの方針で山奥で育てられていた。 ソニアは、あの特殊能力のせいで息子ローヒトと義娘ニシャーが死んだと考えているため、その力を受け継いだ孫には能力の使用を固く禁じ、人目を避けた生活を送っていた。もっとも、当のクリシュナは暇を見つけては自分の特殊能力で遊んでいたのだけれど…。 ある日、クリシュナは墜落するパラグライダーに乗っていた印系シンガポール人プリヤーを特殊能力で助けると、彼女たちサマーキャンプの一団と親交を深め、短い夏のひと時を楽しく過ごす…。 その後、シンガポールに帰国したプリヤーと同僚のハニーは、サマーキャンプを無断延長したことで職場の報道局をクビになりそうになるが、咄嗟に「私たちは遊んでたんじゃない。インドの山奥にいるスーパーマンを取材してたんだ!」と言い張り、なりゆきでクリシュナをシンガポールまで呼び出すことになる…。 挿入歌 Dil Na Diya ([君が心を奪わなければ、]君の心をもらえなければ [どうすればいい?]) 2003年に大ヒットを飛ばした、リティック主演のSFファンタジー映画「Koi... Mil Gaya」の続編登場! ボリウッド史上初となるSFXスーパーヒーロー映画である!! 製作にあたり、シンガポール観光局からのロケ誘致政策に乗っかり(*1)、資金から撮影場所の確保まで、シンガポール政府の全面支援が取り付けられたとかで、現地の観光名所がこれでもか! って具合に登場し、人ゴミを心配することなく大都市のど真ん中で悠々と撮影が敢行されている。 日本では2012年のIFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて「クリシュ」のタイトルで上映。2017年にはNetflixにて「クリッシュ 仮面のヒーロー」のタイトルで配信開始。 お話は、前半はヒマラヤ山麓の風光明媚な高山地帯を舞台にしたラブコメ。中盤は、シンガポールに舞台を移し、野生児クリシュナの都会での活躍を描く。そして後半は宿敵の要塞でのラストバトルと言う構成。 「Koi... Mil Gaya」と同じく、SF映画ながら中心に来ているのは主人公クリシュナの青春劇で、敵とのバトルではなく、家族や恋人との絆の物語に重きが置かれている……ため、敵役側(シッダールトを演じるのは名優ナセールッディン・シャー!)はキャラが立ってるわりにはあんまり印象に残らない。 「E.T.」的な前作は、田舎(カウサリー)を舞台に、知的障害児ローヒトが独り立ちしていく様をファンタジックに描いたのに対して、本作は「スーパーマン」とか「ターザン」あるいは「クロコダイルダンディー」的? 山奥の田舎(クッルー谷だそうな)から都会に出てきた、超人的能力をもちながら世間知らずな野生児クリシュナの、独り立ちの物語。 前作と同じく主役を演じるリティックは、前作のローヒトとはまた異なるたくましい野生児を好演。ちょっとカッコ良さの演出に一昔前感が漂うものの、そのマッチョな筋肉といい、猿のように飛び回るワイヤーアクションといい、ローヒト役との明確な演じ分けといい、さすがトップスターの地位に居続ける漢と書いて男である。うむ。 ま、あの長い手足をマッチョな筋肉の固まりに作り上げて、アクションも基本ハイスピード&スローの繰り返しだと、なんとなく重々しい感じに見えて、ワイヤーアクションの"軽やかに舞い踊りながら敵を倒す"感じがスポイルされてる気もしないではないけれど(*2)。 にしても「マトリックス」を意識したかのようなクリシュの黒テカコート衣裳は、やっぱりアメコミヒーローの全身タイツコスチュームに対する違和感が、ああいう形になったんでしょか? (*3) 大ヒットに乗って、続編「Krrish 2」の製作にゴーサインが出ているのも期待大……とは言え、なかなか企画が動かないようだけど…。 挿入歌 Chori Chori Chupke Chupke
受賞歴
2012.2.11. |
*1 シンガポールの映画撮影誘致政策の第1号作品だそうな。 *2 …ワイヤーアクションの撮影中、リティックが大怪我したそうですが。 *3 …ヤッターマンを思い出した私は邪道かしらん。 |