今時の恋愛 (Love Aaj Kal) 2009年 130分 ロンドン在住の建築家ジャイ・ヴァルダン・シンとフレスコ画修復を学ぶミーラー・パンディトは、バーで意気投合したその日から付き合い始め、なんとなく恋人のような親友のような日々を続いていく。 その1年後、ミーラーがインドのデリーでの就職が決まると、アメリカ進出を夢見ていたジャイとの関係も難しくなり、2人はなんとなく流れで別れる事に。ジャイの提案で盛大なブレイクアップ・パーティーを催し、お互いを祝福しあって別れていくのだった。 そのパーティー会場のオーナー ヴィール・シンは、2人の様子を見て、ジャイにミーラーのインドへの出発を空港まで見送リに行くよう説得し、別れた恋人たちの再会を演出する。旅立っていくミーラーとそれを見送るジャイの姿に往年の思い出を重ねるヴィールは、ジャイに古き思い出を語り始める…。 ***************** 今から44年前、1965年のデリー。 若きヴィールは、仲間たちとの遊び途中に出会ったハルリーン・コウルに一目惚れするも、彼女はヴィールの密かなアプローチを一切受け入れてくれない。一度も口をきけないままヴィールの恋は燃え上がっていくが、ある日ハルリーン一家がカルカッタ(現コルカタ)へと引っ越すと聞きつけて必死に駅まで走っていった。やっと見つけた彼女はただ、電車からかすかに目を合わせただけ…。 ***************** その後、ミーラーはインドで新しい恋人を見つけ、ジャイもまたそれを祝福しつつ英国人の彼女と楽しい日々。ミーラーと頻繁に連絡を取り合うジャイは、ヴィールの所へ通いながら彼の昔語りの続きを聞き続ける。 そのうち、不思議と今と昔の恋物語はだんだんシンクロし始めて…。 挿入歌 Twist (我らツイスト) タイトルは「愛、その今昔」。日本では、2012年のIFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて「ラブ・アージ・カル:今時の恋愛」のタイトルで上映。 主演を務めるサイーフ自身が立ち上げたイルミナティ・フィルムズの第1作となるロマンス映画。本作で製作も担当するサイーフは、劇中ではジャイと若きヴィールの1人2役を担当している。 監督は、傑作「Jab We Met」(未見だけども…)を手がけたイムティヤーズ・アリー。 出会ったその日に愛を確かめあい、あっさり別れても親友関係が続く現代的なジャイとミーラーの「今(Aaj)」のロマンス劇を主軸に、古典的なヴィールとハルリーンによる「昔(Kal)」の恋愛劇が、ヴィールが語る思い出として合間合間に挟み込まれていく構成。 タイトルロゴにも出てくる橋が、映像的メタファーとして様々な所で現れ、男と女、今と昔、ロンドンとデリー、アメリカとインド……など様々なものを架け渡す役割を担っている。オープニングが、スパイ大作戦的な映画の中身をザッピングしたカット割りになっているのも、「今」と「昔」を架け渡している表現になっている…のかなぁ? ジャイとミーラーの恋の進展が(一見)テンポよくかつあっさりしている所がこの映画のキモであり、それが愛に変わっていく様をごく自然に綺麗に描いていく。 男女がそう簡単に会話する事さえ出来ないヴィールとハルリーンの時代の、古典的な秘めた恋模様も美しく、映画本編は「こっちの恋愛像こそ真実の愛」である事を匂わせつつ、それでも現代的なジャイとミーラーの恋愛も否定していない。肝心なのは「恋」が「愛」に変わる様子とそれを自覚する瞬間で、いきなり最初にその場面が来る「昔」と、ラストに来る「今」の対比具合も映画的効果抜群。 ジャイと若き日のヴィールを1人2役で演じたサイーフはパワー全開…ながら、なんとなく力が入りっぱなしにも見えて、大恋愛やってるヴィールの時はそこそこカッコいいんだけども、ジャイの時はそのチャラさになんとなく無理が漂う感じ…(*1)。 監督の肝いりで抜擢されたと言うミーラー役のディーピカは最強!(*2) ジャイと別れてデリーに向かう時の「別れた後だから言うけどさ…」と言う元恋人へのダメ出し具合がやたら愛嬌たっぷり。喜怒哀楽の表情の変わりようやコロコロ変わるファッションも見所。 若きヴィールのお相手ハルリーン役には、ブラジル出身の在インドモデル ジゼル・モンテイロ。映画初出演ながら、いい演技とダンスを見せてくれまする(声は吹替えだそうだけど)。ドゥパッターを使った演出が秀逸すぎて最高に美しい! ED Aahun Aahun
受賞歴
2012.11.22. |
*1 チャラ男と禁断の愛に走るヒロイン、と言えばクリシュナ神話の昔からある、インドのお約束恋愛劇構成ではあるけども。 *2 最初、サイーフはヒロインに私生活でも恋人(現在は結婚して夫婦)のカリーナ・カプールを呼ぼうとしていたらしい…。 |