Love Aaj Kal 2020年 141分
主演 カールティク・アーリヤン & サーラー・アリー・カーン & ランディープ・フーダー
監督/製作/脚本 イムティヤーズ・アリー
"恋バナを初めて聞いたその時から、私は貴方を探し始めた…"
愛とは語り合いだという人がいる。与え合いだという人もいる。愛とは、かくも千差万別なことか…。
クラブで意気投合したヴィール・タネージャーとゾーイ・チャウダンはそのままヴィールの部屋まで連れ添うが、ヴィールが一旦「これじゃあ順番が違う」と同衾拒否の姿勢を見せた事でゾーイを激怒させ、その夜はあっさり別れていく。
しかし、その翌日からゾーイの通うワーキングスペースカフェにヴィールも通い出した事で「どういうつもりよ!」と喧嘩を始めてしまう2人だったが、それをそばで見ていて過去の記憶を刺激される男が一人…。
喧嘩していながらも、デートに向かうゾーイを送っていくと志願したヴィールを見ていたバーの店主ラグーは、翌朝に「彼とはなんでもないわ。ただ送ってもらっただけ」と語るゾーイに対し「気になるのさ。彼は私と似ているんでね…。あ、いや、昔の俺が彼に似ているんだ」と30年も前の自身の恋愛模様の顛末を語り始める…。
ED Haan Main Gala (間違っていても)
*前作の最初のミュージカル"Twist(我らツイスト)"をオマージュした、エンディングテーマ!
タイトルは、ヒンディー語(*1)で「恋愛今昔」。
2009年のイムティヤーズ・アリー監督自身による同名映画の翻案ものロマンス映画。
ヒロイン演じるサーラー・アリー・カーンは、09年版映画の主演男優サイーフ・アリー・カーンの実の娘になる。
インドに先駆けてフランスで公開され、インドと同日にオーストラリア、カナダ、英国、インドネシア、アイルランド、ニュージーランド、米国などでも公開されたよう。
バレンタインデー公開に合わせた、なんともオシャレ度MAXなラブロマンス映画。
09年版同名映画と同じ構造で、本作では2020年のデリーと1990年のラジャスターン州ウダイプルその他での恋愛劇を並行的に描いていく一本ながら、前作以上にオサレ空間はホントにオサレになっていて「デリーに、こんなアメリカビジネス街みたいなクリーンな空間があるのか」と感心してしまうこざっぱりしたハイソな都会空間のクールさが全面に出ている映画になっている(*2)。
前作にあった、わりと無理矢理感漂う都会っぽさや現代っ子っぽさはなりを潜めて、それなりに自然な形での男女のすれ違い、恋の殉教者っぷりを魅せていく語り口は、ある意味ではここ10年間のボリウッドスタイルの変化そのものをも見るようではある。都会的空間をアピールするのをロンドンの風景に頼った09年版に対して、終始インド国内のみで「今」と「昔」をどちらもオサレに表現しているあたり、現代インド人の自信の表れと見てもいい…のか、あくまで映画スタイルの変化ととらえるべきなのか。まあ、そもそも1990年はもうそんなレトロな時代になったのね…って感じもあるけれど(*3)。
本作の顔となる、ゾーイ役を演じるのは1995年マハラーシュトラ州ムンバイ生まれのサーラー・アリー・カーン。
父親はパタウディ太守末裔の男優サイーフ・アリー・カーン。母親はパンジャーブ人女優アムリター・シンになる。
4才頃に、広告出演する中で女優アイシュワリヤー・ラーイに感銘を受け女優を志すようになる。04年の両親の離婚後母親の元で育ち、米国留学してニューヨークの大学で歴史と政治学を専攻しつつ、早期卒業して女優業へ進むためのウェイトトレーニングに専念していたと言う(*4)。
いくつかのMV出演を経て、18年のヒンディー語映画「Kedarnath」で映画&主演デビューして、フィルムフェア新人女優賞とIIFA(国際インド映画協会賞)新人女優・オブ・ジ・イヤー他の映画賞を獲得。映画自体が色々と物議を醸してボイコット騒動が起こる中で、その撮影中断中に、別の映画「Simmba」に主演で出演したことから、「Kedarnath」の監督アビシェーク・カプールから訴えられていたとか。本作は、この2本に続く3本目の出演作になる。
ラブコメ映画界の期待の新人俳優として活躍中のカールティク・アーリヤンを「今」と「昔」の恋愛譚の1人2役主人公に仕立て、狂言回し的な「昔の恋」の現代編での語り手を若手俳優たちの先輩的立ち位置の名優ランディープ・フーダーが演じ、「昔の恋」のお相手は新人(*5)アールシー・シャルマーが務め、その「昔の恋」の聞き役をしながら自身の「今の恋」を見つめていく主人公に、先代主演男優の娘サーラーを配置するのも、あからさまな意図が見えて来るような気もする。…けれども、前作よりは主要登場人物の年齢差が少ないので、前作に微妙に匂った「年長者からの、現代若者への説教的メッセージ」も薄く、爽やかな恋愛劇にオシャレな世代的空気がトッピングされ、気持ちのいい語り口を生み出してくれている。
恋愛に女々しい男性側主人公の姿と、それに受動的対応しかできないでいつつ男側の本気を試す「昔の恋」のヒロイン、積極的に動いて恋と仕事の二律背反に自身を見失っていく「今の恋」のヒロイン(&「昔の恋」の男性側主人公)の対比も王道でありつつ鮮やか。それぞれの登場人物が積み重ねていく、それまでの人生に翻弄される恋愛のあり方が、それぞれの時代・性差・社会状況の中で時にシンクロして時に離れていく。その浮き沈みと男女の結びつきの軽やかさが、デートムービー的なオシャレ映画としての美しさをきっちりまとめ上げてくれている一本でありましょうか。
まあなんというか、10年ひと昔というかさらに10年後・5年後にもシリーズ化して再映画化とかできそうなシリーズになってる気もする。
その時その時のトレンドを取り入れつつ、ノスタルジーな黄褐色世界とトレンディなクリアー色彩世界をその都度アピールしさえすれば長期シリーズになりそ…う? それとも、やはりイムティアーズ監督ならではのトレンドの取捨選択は必要ですかねえ。
それにつけても、サーラーの堂々とした演技は、しっかりと母親アムリター・シンを彷彿とさせるオーラをまとってますことよ。
プロモ映像 Yeh Dooriyan (この距離は)
「LAK」を一言で斬る!
・とりあえず、インド(の都会)の婚活はバーからクラブに行くのが既定路線なん?
2020.12.19.
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