ムンナー兄貴、医者になる (Munna Bhai M.B.B.S.) 2003年 155分 ムンバイの朝。ジョギング中の男が、突然正体不明の拳銃男に追いかけられる! 男は近くにいたタクシー運転手と一緒に、下町のマンションまで逃げだした……のだが、部屋の中で待っていたのは、暴力団の男たち! 実は運転手も拳銃男も、ここら一帯を仕切る誘拐脅迫を生業とするムンナー・バーイ(バーイ=兄貴の意。本名ムンリー・プラサード・シャルマー)一味の芝居だったのだ!! 彼らは金貸しの依頼で、男から金品を強奪しようとする! …しかしそのすぐ後、ムンナー宛の電報が届けられ、ムンナー兄貴の両親が今日にも訪ねてくると連絡してきた。 この知らせを聞いた男たちは大混乱! 一味は、拉致してきた男もその依頼人も尻目にさっさと建物の掃除を始め、医療道具を持ち込み、医者と患者と看護士の衣裳に着替え始める!! なんとムンナーは、田舎の両親を安心させるために、自分はムンバイで慈善医師として個人診療所を構えていると言う大嘘を、仲間と演じて続けていたのだ!! しかし縁は異な物。 街に出てきたムンナーの父ハリは、古い友人のJ・C・アスターナー医師と出会って、彼の娘でムンナーとは幼なじみの医大生チンキー(本名 スマン・アスターナー)との婚約話を取り付けてしまった! そんなことをしたら嘘がバレてしまうと、戦々恐々のムンナーだったが、ふとしたきっかけでムンナーの正体を知ったアスターナー医師は、一家の前で彼の素性を暴露!! 激怒したハリは、その場で息子との縁を切って田舎に帰ってしまう…。 その夜。ムンナーは、親に勘当された仕返しに「本当の医者になる!!」と宣言! 近所の大学病院勤務の医者を使って偽名受験させ、見事トップの成績で(チンキーも通っている)ムンバイ医大に合格したムンナーだったが、喜び勇んでやって来たこの大学の学長は、かのアスターナー医師だった。 アスターナーは、新入生への挨拶で「患者と心を通わせるな。物と思え」と自説を繰り広げ、義理人情に厚いムンナーはそんなアスターナーの教育方針に反発し始める…。 挿入歌 Apun Jaisa Tapori (オレのようなチンピラでも[愛がなにか知ってるぜ]) *失恋から自殺を図って鬱病になってしまった少年に、ムンナー兄貴が自分の失恋談を話して我流カウンセリングを始めるの図。 タイトルは「ムンナー兄貴の医療資格」…みたいな感じ。色々と掛詞になってるので、多重的な読み取りも可能…なんかな? 下町のギャングのドンが医大に通って、アカデミズムに義理人情で対抗する痛快ハートフルコメディの傑作! 公開されるや大ヒットを飛ばして、すぐにタミル映画版(Vasoolraja M.B.B.S.)やテルグ映画版(Shankar Dada M.B.B.S.)、カンナダ映画版(Uppi Dadaa MBBS)のリメイクが製作され、さらに2006年には続編となる「Lage Raho Munna Bhai 」も公開された。 日本では、2022年にJAIHOにて「ムンナー兄貴、医者になる」のタイトルで配信されている。 映画一族出身のサンジャイ・ダットの代表作である本作の監督は、これが映画初監督作となるラジクマール・ヒラーニ。「Lagaan」で衝撃的デビューを飾ったグレーシー・シンをヒロインに向かえ、アスターナー医師役のボーマン・イラーニーや、サーキット役のアルシャード・ワールシィの怪演も大当たり。新人監督賞を受賞したのも納得の完成度を誇っている。 冒頭のサスペンス調の出だしと、それに続くコミカルな舞台設定・ウソ病院の芝居の楽しさで一気に客の目を引きつけておいて、インド映画ではお約束のお見合いとその破談エピソードを挿んで、ギャングのボスが医大で繰り広げる活躍の数々が繰り広げられる。 この脚本のスピーディーさがコミカルで、始終笑いっ放し。初監督作のわりにはサービス精神満載だし、シナリオも画面構成も整理整頓されてシンプルながら味わいやすい一級娯楽作になっている。多少、きっちり整理されすぎな気も…するのはボリウッド漬けになりすぎてるから?(マジック・ハグの使い方とか)。 ムンナーの父ハリ役には、ムンナー役のサンジャイの実の父親で往年のトップスターでもあるスニール・ダットと言う、父子共演でも話題に。惜しむらくは、本作公開後の2005年に他界され、これがスニール・ダットの遺作ともなってしまった。 にしても、インド映画には、動機が純粋ならカンニングもお話的にはオッケーよん♪ って展開がよくあるような…? 挿入歌 M Bole To (Mとは[マスターの中のマスター。Bはボヘミアン・ドクター(夢見る医者)。Bはブリリアント・アクター(才能ある俳優)。Sは…スリッケスト・キャラクター(最悪な口先野郎)!]) *それぞれのアルファベットをつなげると「M.B.B.S.」(もちろん、歌詞はヒンディーなんで、英語字幕訳で本当にあってるのかどうかは…わかんない)。タイトルの「医療師学位」を意味するM.B.B.S.のことでもあり、主人公ムンナー・バーイの頭文字でもある。
受賞歴
2011.9.23. |