Main Madhuri Dixit Banna Chahti Hoon! 2003年 150分 ウッタル・プラデーシュ州の片田舎、ガジローラ村。 この村の即席舞台には、村一番の人気少女チュトキーが必ず登場する。彼女は、そのダンスの素晴らしさから、村では「マードゥリー」と呼ばれていた。 そう。彼女自身も、あの映画スター マードゥリー・ディークシトの大ファンであり、彼女の夢は「いつかボンベイに行ってマードゥリーのような映画スターになる」こと!! しかし、チュトキーの両親は彼女の夢を一笑に付し相手にもしないで結婚を薦めてくる。怒り心頭のチュトキーは、彼女の幼なじみラージ(本名ラージャラーム・シン)に相談。彼の答えは「幼なじみの自分と結婚する振りをして、一緒に街に出ていけばいい。僕は君の夢を応援する」! こうして、なかば両親を騙した上で(狂言)結婚した2人は、すぐに映画の都ボンベイへ…。 だが、大都市ボンベイは2人にとっては知らないことの連続。 見たこともない人混み。ぼったくりタクシーやボロボロの下宿。厚かましい隣人。圧迫感からつのる郷愁の念。…警備厳重な撮影所に入ることすらままならない2人は、なんとかチュトキーを売り込もうとするが、都会人たちはそんな二人を見て笑い、近所の役者志望のロミーはチュトキーをモノにしようとちょっかいをかけて来るばかり。やっとつかんだバックダンサーの仕事も「一度ダンサーとか脇役で映画に出てしまえば、永遠に主役の仕事は回ってこない」と言われて2人を絶望させる。 次第に、チュトキーの夢は崩れ始めて…。 挿入歌(?) Maar Dala (身を切るような) *新作のマードゥリー映画「Devdas (デーヴダース)」の上映会。そのマードゥリーの見せ場ミュージカル"Maar Dala"の途中でリールが終了して映画が中断してしまう!(んなことよくあるの?) 怒り心頭の観客で映画館が大混乱になる中、チュトキーはマードゥリーの見せ場を見れなかった鬱憤を晴らそうと舞台に立ち…。 村の即席映画小屋のボロさと、皆でその場にある道具を使ってたった今見た映画を再現(歌の後半は観客たちが即興アレンジ)しながら全員で盛り上がるさまが、なんとも楽しそう。こんな映画体験してみたーい! タイトルは「私は、マードゥリー・ディークシトになるの!」。 90年代のボリウッドの女王マードゥリーに憧れる少女の夢の軌跡を描く映画。 ボリウッド最高のダンサー女優マードゥリーの話題で盛り上がってたら、これも面白いよ! …と勧められ、どれどれと見てみたら、まー素晴らしく愛らしい映画じゃおまへんか!! 小粒でもピリリと効いたと言うか、なかなかに小気味良く、爽快で、生活感あふれる映像美と相まって、小市民たちの織り成すサクセス・ストーリーが美しき一本。 最初の田舎の人たちの娯楽を楽しむ夕べや、映画小屋でめいっぱい映画を楽しむさまは古き良きノスタルジーに彩られているし(*1)、中盤以降舞台となるムンバイの雑然さや下世話さに満ち満ちた活気も、色んな人々の暮らしを覗き見るような感覚で楽しんで行けてしまう。 映画製作の舞台裏も、よくあるボリウッド大作のそれと違って、コネも金も華やかな経歴も所属プロダクションすら持たない2人の、涙ぐましい苦労の数々や雑然として小規模な撮影現場が小市民度をアップさせて行くし、そこから成長して行くチュトキーとラージの人間性・関係性の変化も美しい。それに合わせるかのように、田舎向けの低予算・そっくりさん役者映画の舞台裏が見えるのも、インド映画の別側面が見えて来て面白いね。 主役チュトキーを演じる、喜怒哀楽様々に変わる感情表現を見せてくれるのはアンタラー・マーリー。本作の製作を担当しているラーム・ゴーパル・ヴァルマ監督作で映画デビューし、ラーム・ゴーパル・ヴァルマ作品を中心に活躍していた女優。本作の後、2005年には「Mr Ya Miss」で監督&脚本家デビューもしてるそうな。普段はそんなことないのに、マードゥリー風のダンスしてる時にたしかにマードゥリーっぽく見えてくるから不思議。ダンスもマードゥリーレベルまで到達して…るかな? ラージを演じるのは、名脇役俳優として様々な映画に出演しているラジパール・ヤーダヴ。他の映画では、わりとコミカルな演技が多い人なんだけど、こんな純情青年も演じられるのねぇぇぇ。脇役俳優や田舎向け映画業界の活躍を描く本作で、主演を張ってるあたりは色々深読みしたくはなるけども、素直に主演2人の交流具合や頑張り具合を応援したくなる演技力はスンバラし。 お話も、前半の夢に向けて爆進するチュトキーとそれを見守りながらも彼女に相手にされない孤独を(そこはかとなく)感じてしまうラージと言う構成が、後半になると逆転してチュトキーのために身を投げ出して奔走するラージと、そんなラージに励まされながらも夢を絶望的に諦め始めるチュトキーの孤独へと変化する所が美しくもの悲しい。 自分の夢を完膚なきまでに壊されたチュトキーが故郷に電話をかけるシーンで、家族に本音を言い出せないまま涙顔で笑う姿は色々と自分の過去を振り返りたくなる、痛々しくも素晴らしいシーンでございます(*2)。最後に婚礼用のアクセサリー(プラスα)を使ったチュトキーたちの心境の変化なんかはニクい演出だね! とにかく、主役のチュトキーとラージの2人が色々可愛すぎる。 挿入歌 Ek Do Teen (1、2、3…) *村の即席舞台で、男たちを虜にするマードゥリーに扮するチュトキーの図。 音楽・衣裳・振付もマードゥリー映画のパロディ? たしかにそれっぽいイメージはあるけども。なりきってるチュトキーを意識するかのような、振付・アングル・編集具合がナイス。 (つきよ様にお教え頂いた所、元ネタは、前半がマードゥリーの代表作の1つ1988年の「Tezaab(酸)」のダンス"Ek Do Teen"、後半は1990年の「Sailaab」のダンス"Humko Aaj Kal Hai Intezaar"とのこと。情報頂きありがとうございます!)
「MMDBCH」を一言で斬る! ・なんでインド人って、都会人になろう!!…ってなるとパーマかけてボリューミーな髪型になんの?
2013.8.23. |
*1 と言っても、おそらくインドの田舎にはこんな環境あるんだろなぁ…。 *2 そう言う体験してなくとも。うん。 |