Mangal Pandey: The Rising 2005年 151分 1857年4月8日。 東インド会社所属のセポイ(より正確にはスィパーヒー。インド人傭兵部隊の事。本来ペルシア語で"兵士"の意味) マンガル・パーンデーイは、英国人上官殺害の罪で絞首刑にされようとしていた。それを複雑な思いで見つめる英国人将校が一人…。 第34ベンガル歩兵団所属のマンガルと、英国人将兵ウィリアム・ゴードンの友情は数年前に遡る。アフガニスタン諸部族との戦争で瀕死の重傷を負ったゴードン隊長を、重傷のマンガルが救った事から2人は立場を越えた友情を育んできた。 それから4年。 周辺部族の鎮圧を使命とするセポイだったが、敵は徐々に自分たちの地元民へと変化する。 インド人自身の近代化を望むゴードンだったが、ある日、目の前で始まったサティ(寡婦殉死の儀式)に驚き、マンガルとともに寡婦ジュワラーを救出。そのために地元インド人や英国人から数々の嫌がらせを受け続けるが、ゴードンは頑として寡婦を引き渡す事を拒否するのだった。 そんなゴードンを信頼するマンガルだったが、ある日、街でいやな噂を聞く。今度セポイに支給される新式銃の火薬袋には、牛脂(ヒンドゥーでは神聖とされる食の禁忌)と豚脂(ムスリムでは不浄とされる食の禁忌)が使われているそうだ…。 なんど命令されようと、セポイたちは噂を信じて新式銃に触ろうとはしなかったが、ゴードンの説得によってマンガルは率先して訓練を始める。 「ゴードンは嘘をつかない。オレは彼を信じる」マンガルは、仲間たちにそう言い切ってみせた。 だが、彼は裏切られる。セポイたちはついに火薬袋の製造工場を見つけ、そこに何百という牛と豚の死体が散乱しているのを見る! 驚いたマンガルはゴードンに詰め寄る。 「どうしてくれるんだ! これでオレは誰からも触れられず、話されず、共に食事もできず、死んでも埋葬すらさせてもらえないんだ!!」 これをきっかけに、セポイたちは周辺の人々と団結し、東インド会社への大規模な反乱を計画する…。 挿入歌 Rasiya ([私の]悪党) *あぁ…A・R・ラフマーンの音楽の心地よさよ。 ボリウッド専門店で「歴史物か神話物で面白いのありません?」と聞いたら、「ジョダー・アクバル」「ガンジー」とともに勧められたのがこれ(*1)。インドでは「第一次独立戦争」と認められる、いわゆる「セポイの反乱(=インド大反乱)」を主題にした映画。この反乱を指揮した実在の人物マンガル・パーンデーイを主人公に、インドを理解するイギリス人ウィリアム・ゴードンとの友情と決別を描く。 セポイの反乱のきっかけが新式銃の火薬袋だったかどうかは、学会では諸説分かれるそうだけど、マンガルがたった一人でイギリス正規軍に戦いを挑み、自殺を図って捕まり、絞首刑にされた史実はしっかり映像化している(*2)。 にぎやかし程度にマンガルのロマンス相手の娼婦ヒーラー役でラーニー・ムケルジー、ゴードンのロマンス相手の寡婦ジュワラー役でアミーシャー・パテルが出演。彼女たちもそこそこ重要なシーンはあるものの、基本的にはマンガルとゴードンを対比して描く男くさ〜い映画。4年の沈黙を破って映画に復帰した、完璧主義者の名優アーミル・カーン演じるマンガルの迫力を見よ!(*3) セポイたちは、本来戦士階級としてカーストの上位に位置していたらしいけど、映画では娼婦のほか、マンガルの隣人の不可触民、東インド会社で商売して大もうけする商人、イギリス人に雇われる乳母、セポイの反乱を援助しようと言うマハラジャたちなど、インド社会の上から下までの様々な種類の人々が登場。イギリス人は、ほとんどが東インド会社関係の軍人かビジネスマンで、インド人を「黒い犬」と見下してる奴らばっかだけど(*4)、しっかりイギリスから俳優を呼んでイギリスの立場を演じさせているところがグー。しっかし、この映画の英語は難しくて、会話が理解しずらいよぅ。 セポイの反乱がインド独立戦争の口火を切ったのかどうかも、歴史家の中で意見が分かれるそうだけど(*5)、ラストは、マンガルの処刑後、インド各地で起きたインド人の蜂起をダイジェスト的に流し、インド国旗がはためきガンジーやネルーなどの映像を織り込んで、インド独立までの長い歴史を賛美するパトリオティックな構成になっていて、異様に燃える展開! インド独立までの、長い長い血の闘争がナレーションで紹介され、インド人でなくても拍手喝采したくなる映像になっている。 挿入歌 The Holi Song (ホーリーの歌) *こちらは、インドの春の祭ホーリー祭を主題にしたシーン。 このシーンだけ見ても、スペインのトマト祭を凌駕するメチャクチャさがなんともお祭りしてていいわぁ。 Happy Holi!!
2009.9.23. |
*1 …と「ラガーン」も。 *2 大規模な戦闘シーンにはなってないものの、カッコいいんだここは! *3 なんか「七人の侍」の三船敏郎を思い出しちゃうゼ!! *4 ヒロイン然とした人も出て来るけど。 *5 なんせ、結局イギリスに完全に鎮圧されてしまうんだよね…。 |