Minsara Kanna 1999年 159分(165分とも)
主演 ヴィジャイ & モニカ・カステリーノ & ランバー & クシュブー
監督/脚本/台詞/ゲスト出演 K・S・ラヴィクマール
"貴方は、ここでマダムから仕事を与えられた最初の男なのよ!"
タミル・ナードゥ州ウダカマンダラム(通称ウーティ)にて、女性だけの縫製工場とお屋敷を構えるインドラ・デーヴィーは、極度の男性不信。敷地内に男が入り込むと激怒し、相手の言い分にかかわらず犬をけしかけるほどだった。
何事にも厳格な姿勢を求めるインドラ・デーヴィーを憎む、ビジネス上のライバル ヴェダチャラムの一味がデーヴィー邸を襲撃してきた夜、偶然にも警察に追われて屋敷に忍び込んでいたカシ(本名カンナ)は、暴力団を撃退し女中頭のプリヤーと仲良くなる。何度かプリヤーと女主人を手助けするカシの物腰は女性たちに気に入られ、プリヤーの提案からお屋敷専属のボディガードにならないかと誘われ、史上初のデーヴィー邸で働くことを許された男性スタッフとなったのだった!!
その夜、喜ぶカシは公衆電話にて話し込んでいた…「お屋敷に雇われたよ。僕たちの計画も、ゆっくりと進行中だ…」
挿入歌 Oh Uncle (さあ、おじさん [おばさん、僕は貴方がたの息子さ])
タイトルは、同じラヴィクマール監督作となる、同年公開の「パダヤッパ(Padayappa)」の挿入歌からの引用。
タイトルにもなってる主人公の名前「カンナ」は、クリシュナ神の別名である他、叙事詩マハーバーラタに登場する人気キャラ カルナの意味にもなる名前とか(*1)。
2020年、ファンからの指摘を受けた本作プロデューサー(*2)が、アカデミー賞で作品賞その他を獲得した韓国映画「パラサイト」が本作と酷似していると発表して、一瞬だけ物議を醸していました。
正直、パクられた騒動で「どれどれ」と好奇心で見てみた映画ですけど、「パラサイト」未見でもわかる。これ、2つの映画になんの関係もないよ!
お話としては、人に厳しいビジネスウーマンの女主人が築く女性のみのお屋敷と工場を舞台に、そこに紛れ込んできて女性たちの信頼を勝ち取っていく青年ヒーローが巻き起こしていく話芸ラブコメな一本。
とにかく、全編登場人物たちの長台詞が調子よくハイテンポで滔々と流れていく台詞重視の映画で、字幕を追うのが大変で大変で…。そこで展開するタミル語(*3)の流暢な流れを理解できないと、十分にこの映画を理解できないかもなあ…という危惧が離れず。くぅ。そういう意味では映画的というよりは、わりと舞台的な演出が多用されている映画かもしれない。
いちおー、過去の出来事から男性不信に陥っている女主人の主張を通して、世の男性たちの女性への蔑視・好奇の視線が如何に社会を歪ませているかをアピールする社会派な目線もあるけれど、基本はシチュエーションコメディであり、後半に明らかになっていく「計画」によるロマンス要素が大きくなって「夫婦も恋人も、人は男女でくっつくのが自然なこと」とまとめてくるのは、まあラブコメとして作っていくための落とし所でしょうか。
ダブルヒロイン2人とも、やたらとボディラインを強調した衣裳で「進んだ女性」をアピールするのは製作年代の時代性か。ヒーローである主人公カシ演じるヴィジャイがわりとダボっとした服着てるのと対照的…なのかなあどうかなあ。
前半のヒロインである女主人の助手プリヤーを演じるのは、1976年アーンドラ・プラデーシュ州クリシュナ県ヴィジャヤワーダ(*4)生まれのランバー(生誕名ヴィジャヤラクシュミー・イェーディ)。
地元の学校に通っている中で、学校行事で参加した演劇を見た映画監督ハリハランの勧めを受けて、92年のハリハラン監督作マラヤーラム語(*5)映画「Sargam」で"アムルタ"の芸名で映画&主演デビュー。同年公開の「Aa Okkati Adakku(その一言を答えないで)」で、母語であるテルグ語(*6)映画デビューし、その時の役名に因んだ"ランバー"の芸名で以降活躍する。
翌93年には、「Uzhavan(農園主)」にゲスト出演してタミル語映画デビュー。同年公開作「Server Somanna」「Kempaiah IPS」の2本でカンナダ語(*7)映画でもデビューし、95年には「Jallaad(死刑執行人)」でヒンディー語(*8)映画デビューもしている。その後は主に、南インド映画界で活躍し、03年にはタミル語映画の主演作「Three Roses(スリー・ローズ)」でプロデューサーデビューもしているものの、映画の興行不振によって多額の借金を背負うことになったよう(*9)。
2010年、カナダはトロントを拠点にしている実業家と結婚してトロントに移住して女優引退。以降は、夫のビジネス関係他のブランド大使や、TVのダンス番組の審査員などに活動拠点を移している。
後半(と言うかラスト近く)からメインヒロインになる、女主人の妹アイシュワリヤーを演じるのは、1982年マハラーシュトラ州ムンバイ生まれの(クレア・)モニカ・カステリーノ。
97年のヒンディー語映画「Kaalia(カーリア)」に端役出演して映画デビューして、2本目の出演作の本作で主演デビュー。ここで批評家から賛否両論を受けるも、以降いまいち流れに乗れなかったようで低予算のヒンディー語映画やTVシリーズに出演していっている。本作では、角度によってはジュヒー・チャウラーっぽい表情見せる感じの可愛い印象が強いけどねえ。
「パラサイト」との共通要素は、工場主の富裕層である女主人とヒロインたちが住むお屋敷に、主人公たちが雇用されて自分の居場所を拡大させていくって構図だけで、主人公も別に貧困層ではないし(*10)、その生活格差がメインテーマってわけでもないし、そもそも本作はそんなシリアスな面はなく、計画破綻しても警察が乗り込んできておちょくられる程度という気楽さ。男を憎みながら、妹の結婚を妹の意思に関係なく決定して強制しようとするとする悪役インドラ・デーヴィーの過去の経緯やそこからの解放なんかも(かなり強引に)解決に導かれて、物語をより高密度に盛り上げる。まあ、マサーラー映画らしく男性主体な発想の解決策なんかは「テーマ的に大丈夫か?」って展開もなくはないけど、下町出身を気取る主人公の気楽さ・ポジティブさで、話はシリアスに向かわず口八丁の強引展開でなんとかなるノリのいい映画ですわ。別々に女主人と知り合ってお情けで屋敷に雇用される人たち全員が、実は1つの家族だったって展開は印象的だったけども。
南インドで絶大な人気を得ているクシュブーの悪役演技も麗しいし、ダブルヒロインの可愛らしさ・セクシーな衣装の数々も(*11)お美しい。ドイツ&スイスロケのドイツ留学してたと言うアイシュワリヤーの姿も綺麗ではあるけど、そこに出てくるドイツ語のいい加減さとか、英語の方がやっぱ流暢なのねって芝居もなんとも。ドイツのイメージはどんなんやねんって聞いてみたくなるけど、あんな元気なタミル人がいるならドイツも楽しそうな国ですわね!(強引に)
挿入歌 Boy Frienda ([月よ答えて] ボーイフレンドがやって来るのが見えるかしら?)
「MK」を一言で斬る!
・使用人の中に、"アキラ"がいた! やっぱ現役でインドで使われる女性名なのネ!
2021.2.19.
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*1 「カンナン」と「カンナ」は別の意味になるのか、同じ意味なのか、劇中でも区別されてるかどうかよくわからんですが…。他に、「泥棒がひそかにに開けた穴」の意味にもなるとか検索で出てきたけど…?。
*2 公開当時のプロデューサーではなく、そこから権利を買い取ったP・L・テナッパン。
*3 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。
*4 またはヴィシャーカパトナムとも。
*5 南インド ケーララ州の公用語。
*6 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*7 南インド カルナータカ州の公用語。
*8 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*9 プロデューサーは、2021年現在この1本のみ。
*10 っぽく振る舞おうとはしている。
*11 あからさますぎるけど。
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