ムンナー・マイケル (Munna Michael) 2017年 139分
主演 タイガー・シュロフ & ニッディー・アゲルワール & ナワーズッディーン・シディッキー
監督 サッビル・カーン
"明日はないと思って踊れ"
"たとえ誰も見ていなくてもー"
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1995年のムンバイ。
長年ダンサーとして活躍していたマイケル(本名マナサスヴァ・ローイ)は、ついにスタジオから年齢を理由に解雇を言い渡されてしまい、失意の帰宅中に雨に打たれる捨て子を発見。そのまま放置できない彼は、失職の身でありつつもその赤ん坊を"ムンナー(=坊や)"と名付けて育てることに…。
長じてムンナーは、周辺のクラブを荒らす名ダンサーに成長。堅実な人生を望む治療中の父に隠れてクラブのダンサー達からダンス勝負で金を巻き上げていた彼は、それらが祟って地元クラブを追放されてしまい、仕方なくニューデリーへと旅立つ。
デリーのクラブを仕切っていたヤクザを自慢の体術で粉砕したムンナーは、翌日警察に呼ばれてヤクザや警察組織を牛耳るギャングボス マヘンドラ・ファウジーの元へ引っ立てられていく。しかし、ムンナーのダンス技術を見たマヘンデルは部下たちを下がらせると「ある男を30日以内に踊れるよう教育しろ。そうすれば今回のことは見逃してやる」と切り出してくる。「誰を踊らせればいいんだ?」「…俺をだ」!!
挿入歌 Feel The Rhythm (リズムを感じて)
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*ムンナー少年にかかれば、クラス全員がこれくらいは踊れるインドでっせ!
セット中の映画ポスターで、具体的にどれくらいの時間経過が行われているかもわかる親切設計!(かつ、主人公ムンナー少年がどんな映画ダンスに影響を受けたかもわかる?)
大型新人タイガー・シュロフのデビュー作「ヒーロー気取り(Heropanti)」を監督したサッビル・カーンが、16年の「Baaghi(反逆者)」に続いて3回目のタッグを組んだアクション・ダンス・ヒンディー語(*1)映画。
インドと同日公開で、オーストラリア、英国、インドネシア、アイルランド、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガル、米国でも公開。
日本では、2019年にSPACEBOX主催のICW(インディアン・フィルム・ウィーク)のヒンディー映画セレクションにて上映。2021年にはIMO(インディアン・ムービー・オンライン)にてDVD発売。同年にはIMW(インディアン・ムービー・ウィーク)パート3でも上映。2022年に、新潟の高田世界館でも1日限定上映。2023年にはマーダム・オル・マサラでも上映。2024年には鹿児島のガーデンズシネマ「秋のインド映画特集」でも上映されている。
主人公の成人ムンナー初登場シーンからの決めポーズからも分かる通り、"キング・オブ・ポップス" マイケル・ジャクソンへのリスペクトを掲げるダンス映画でもある。
育ての親から受け継ぐマイケル・ジャクソンへの畏敬の念を胸に、どんな境遇だろうと、どんな困難が立ちふさがろうとダンサーとしての自分を見失わずに踊ることで自分の人生を切り開く主人公の姿を追う青春映画であり、ダンスを通したロマンス映画でもあり、さらには血の繋がらない父子・兄弟関係のつながりと離反をも描いてみせる人生劇。ダンスだけで、そこまで人生開けて全ての物事が解決すんのか…とも思えてしまうダンス最強映画であり、主役演じるタイガー・シュロフ最強映画でありますことよ。
途中から登場する、主人公ムンナーの義兄弟として彼の前途を開き、かつ困難な壁としても立ちふさがるマフィアボス マヘンドラ演じるナワーズッディーンの不器用な田舎者演技の強さも注目どころ。
家族に甘えつつも若いダンサーに入れ込んで、その愛の在り方をうまく表現できないままに幼稚な欲求だけを自覚して動いてしまういたたまれなさは、当初は可愛らしくもあるけれど、話が進むにつれてシャレにならない度が跳ね上がってくるヤバみ比重が高まって、物語をグイグイ引っ張っていく。
この辺、インド各言語圏にリメイクされた名作テルグ語(*2)映画「Okkadu(ヤツが来た / 03年公開作)」あたりが下敷きとして影響を与えてたり…するのかなあどうかなあ。
他人を思い通りに動かすことしか知らず、気に入らないものを徹底的に排除しないと気が済まない悪役芝居は相変わらず堂の入った存在感を見せるナワーズッディーンながら、そこにどこかひょうきんな魅力を混ぜ合わせてくるコミカルさに、中年男の悲哀まで感じさせるのだから達者なもんですわ(*3)。
にしても、がっつり踊るナワーズッディーンってのを今回初めて見た気がする。出演作全部は見れてないから、他にもあるのかもしれないけど、役柄上ヘタくそなダンスを自信満々に踊り、周りを恫喝して褒めさせる姿のなんと楽しげなことよ。本気で踊れるんだったら踊ってる映画も見たいもんでっせ(*4)。
そのマヘンドラが首ったけなほどの美貌を見せつける本作ヒロイン ドリーを演じるのは、これが映画デビューとなる新人ニッディー・アゲルワール。
アーンドラ・プラデーシュ州都ハイデラバードのマルワーリー系(*5)の家生まれでバンガロール(現ベンガルール)育ち。本人は、ヒンディー語を母語として育ちつつ、テルグ語、タミル語(*6)、カンナダ語(*7)も身につけているそうな。
バンガロールの大学で経営学を修了しつつ、バレエ、カタック、ベリーダンスを習得。アイシュワリヤー・ラーイのような女優を目指して映画界に売り込みをかける中で、本作にて300人の候補者を抑えてヒロインに抜擢されて映画&主演デビューし、Zeeシャイン新人女優賞を獲得。翌18年には「Savyasachi(二心)」でテルグ語映画デビューし、21年には「Eeswaran」「Bhoomi(大地)」他2本でタミル語映画デビュー。以降もテルグ語・タミル語映画での出演が決まっているとか。
あいかわらずの、インドのストーカー愛は超やべーって映画でもあるけれど、主役2人のダンスの半端なさ、それと対比される形でのナワーズッディーン演じるマヘンドラの悲哀漂う1人ダンスのダサさ具合が良い相乗効果となり、三者三様の自分しか信じなかった人間が愛を知った時に見せる表情の変化具合が麗しく、同時に物悲しいのも素晴らしか。
大物振付師のゲスト出演で行われるダンス選考番組の華やかさと都合の良さ具合は、ゲスト出演の1人ファラー・カーンの監督作「ハッピー・ニューイヤー(Happy New Year)」を彷彿とさせもしますが、廃工場を練習場として励む下町ダンサーののし上がりは、主役2人の異次元レベルの華やかさもあって華麗で絢爛。たまらず下町で踊り出すダンスナンバー"Pyar Ho (恋に落ちる時)"に見える街を包むエネルギッシュな活気は真に羨ましくもあり。ボクも、あんな美男美女の輪に入って行きたいから、誰かダンスを教えてー!!!(銃で脅しながら)
挿入歌 Beparwah (踊ろう、何も考えず)
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*超ネタバレ注意。
はいそこ、「足の怪我とか関係ないじゃん」とか言わない!w
受賞歴
2017 Zee Cine Awards 女優デビュー賞(ニッディー・アゲルワール)
「ムンナー・マイケル」を一言で斬る!
・インドの赤ちゃんにも、必ず赤ちゃんが眠るという『反町隆史のPOISON』が効くのどうか試してみたく…。
2021.10.22.
2021.11.26.追記
2024.9.20.追記
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