ムトゥ 踊るマハラジャ (Muthu) 1995年 140分 とあるお屋敷で主人の御者役をつとめる孤児のムトゥ(タミル語でキスの意)は、村一番の人気者。お屋敷の主人ラージャとその母シヴァガーミヤンマールはなにを置いてもムトゥを頼りにしている。 その日はラージャの誕生日。 婚約者として従妹のパドミニと面会させられたラージャだったが、「まだ結婚するつもりはない」とさっさとムトゥと出かけて、大好きな芝居を見に行ってしまいラージャはそこで、劇団のヒロインとして活躍する美女ランガナヤーキ(通称ランガ)に一目惚れするのだった! その舞台でランガと一悶着起こしてしまったムトゥは、その後も周りに媚びを売りまくるシャクティ劇団の面々が気に入らない。そんなことは目に入らないラージャは、思いきってランガに「僕の結婚相手になってくれないだろうか。もし君が一人で我が家に来てくれたなら、母に紹介したいんだ」と馬車越しにプロポーズ!(でも、実はランガの耳には入っていなかった…) そんなある日、村のチンピラたちが白昼堂々とランガを連れ去ろうと劇団を襲う! その場に居合わせたラージャは、ランガを救うためにムトゥに彼女を連れて逃げるよう命じ、ムトゥは指示通りにランガとともに馬車で一晩逃げ続け、どことも知れない村に来てしまう…!! 挿入歌 Kokku Saiva Kokku (菜食主義の鶴[が、鯉を見て誓いを捨てた]) *1日12回は「愛してる」と言いなさい。 1日6回はキスしなさい。 1日3回はベッドで横になりなさい。 そうすりゃ、奥さんはお前の虜さ♪ 言わずと知れた、日本にインド映画ブーム(*1)を巻き起こした大ヒット作! 1998年に日本公開されて、観客動員数25万人を記録するロングラン大ヒット。日本におけるインド映画代表作となっていった。 この人気に後押しされて、監督初め音楽担当のA・R・ラフマーンやヒロインを演じた大女優ミーナが初来日した…そうな(*2)。 インド的にもこの日本での大ヒットは事件だったらしく、Wiki他の「ムトゥ」のネットデータにはどこでもしっかり「あの日本で大ヒットを飛ばした」と英語で書いてあったりする(なんでやねん)。 2018年には、4K&5.1ch デジタルリマスター版としてリバイバル公開。 主役は、コリウッド(*3)のスーパースター ラジニカーントとミーナ。 冒頭で"スーパースター"の肩書きでド派手に登場するラジニは、ムトゥとその父親の1人2役を好演して、本作でタミルナードゥ州映画賞2度目の主演男優賞を獲得。「ムトゥ」1本で日本でも多くのファンを獲得してファンクラブまでもが発足した。 ヒロインのランガ演じるミーナもタミル映画・テルグ映画両界を代表するトップ女優の一人。子役時代からタミル語圏を中心にインド中の映画に参加して、6言語を操り歌も踊りもトップレベルと言うからトンデモね。 個人的には、パドミニ役のスパーシユリーのかわいさにラブズッキュンなんだけど、他にどんな活躍してるのか全く出てこない…。 ちなみに、監督の K・S・ラヴィクマールも、ケララ州の村長役で出演しとるそうな。 それまでハリウッドスタイルの映画優勢だった日本で、「ムトゥ」が売れると確信したと言うプロデューサーがいたと言うのもビックリながら、この映画のパワーに素直に反応した観客層が大量にいたってんだから……いい時代だったんだなぁ(遠い目)。 喜怒哀楽は言うに及ばず、アクションからロマンス・ファミリー・バイオレンス・はては馬車レースまで、とにかくぶち込めるだけの娯楽要素をぶち込んでいるのはさすが。こういう、映画としてまとめにくい色んな要素をまとめてくるのが、映画を見る楽しみの1つでっせ。 そのタミル的超娯楽性が日本で通用したっていうのは、たしかにタミルと日本の文化的共通性を匂わせるのかもしれないけど、これが大ヒットしたがために「インド映画=ぽちゃおやじとぽちゃ美人が、意味もなく歌って踊る低予算B級恋愛映画」と言うレッテルが貼られてしまったのはあまりにも大きな傷であった……。 これがために、今なお、世界中で指示され始めているインド映画ムーブメントにいっさい反応せずに映画斜陽をひた走る日本映画界は、いとかなし。 もう一度、ムトゥを見直して、そこにつまっている大衆娯楽のなんたるかを勉強してみろってんデーーーイ!(*4) 映画を忘れたカナリヤは〜 後ろの山に捨てましょか いえいえ それはなりませぬ〜♪ あっそれ! 挿入歌 Thilana Thilana
受賞歴
2011.5.3. |
*1 実際には一瞬のタミル映画ブームだった…気もする。 *2 すんません。その当時のことあんま知らんのですわ。 *3 タミル語娯楽映画を指す俗語。製作拠点のコーダーンバーッカム+ハリウッドの造語。 *4 ま、ムトゥブームの頃に版権問題で日本の会社内部でゴタゴタしてた…と言う噂も…。 |