Nuvvostanante Nenoddantana 2005年 165分 挿入歌 Chandrullo Unde Kundellu (月のウサギは [地球に着陸したか?]) 5年間、牢獄生活のシヴァラーマ・クリシュナはある夜、看守と意気投合し、もう妹が産んだであろう子供の名前候補を看守に選ばせながら、自身の生い立ちを語り始める…。 幼いシヴァラーマは、新妻を迎えた父によって母シャンティ共々家を追い出され、失意の母親はそのすぐ後に急死。残された幼い妹シリーを抱えて母の葬式を済ませた後、地主に頼み込んで母の墓地周辺の農地作業を引き受ける事で貧しいながら細々と暮らしを立てて行った。そんな兄を尊敬する妹シリーは、兄を手伝いながらいつしか大学に通うまでに…。 その日、富豪の娘で幼なじみのラリタが15日後に結婚すると言うのでシリーは大喜び。式の手伝いとして彼女の屋敷へ向かうと、ロンドンからやって来たラリタの従兄サントーシュにちょっかいをかけられ怒り心頭。結婚式準備の屋敷に集まる若者たちの中で、両者はケンカしあいながらも徐々に心惹かれて行くが、サントーシュを狙うラリタの従妹ドリーによって、サントーシュとドリーとの婚約が親同士で決められると、邪魔者となるシリーはお祝いに来たシヴァラーマともども「この貧乏人!」と屋敷から追い出されてしまう! 不本意な形でシリーと別れることになったサントーシュは、一人でシリーを迎えにインドへと戻ってくるが、幼い日の母の死に様と共に先日の金持ちたちへの怒りを消せないシヴァラーマは彼に宣言する。「妹と結婚したいなら、我が家の土地1エーカーをお前の好きに耕して、オレ以上の収穫物を生み出してみろ!」「牛の乳を搾り、小屋を掃除し、家畜の体調管理もやってみろ!!」「それが出来ないならさっさと帰れ!!」 挿入歌 Adire Adire (目が彷徨って [全てはうまく行った]) タイトルはテルグ語(*1)で「貴方が来たいと言うなら、私にイヤと言える?」。 役者兼振付師のプラーブデーヴァー(またはプラーブ・デーヴァー)の監督デビュー作にして、タミル語(*2)映画で活躍していたシッダールタのテルグ語映画デビュー作となる、大ヒットロマンス映画。そのプロットは、1989年のサルマン・カーン主演デビュー作となる「Maine Pyar Kiya(恋に落ちて)」に似るとか。 本作は、公開後の2003年に同じくトリシャー主演でタミル語(*2)版リメイク「Something Something... Unakkum Enakkum(サムシング・サムシング 僕と君のために)」が、05年にカンナダ語(*3)版リメイク「Neenello Naanalle」、07年にベンガル語(*4)版リメイク「I Love You 」、09年にオリヤー語(*5)版リメイク「Suna Chadhei Mo Rupa Chadhei 」、2010年にバングラデシュ映画リメイク「Nissash Amar Tumi 」、さらに2014年にはプラーブデーヴァー自身によるヒンディー語(*6)版リメイク作「ラームが村にやって来る(Ramaiya Vastavaiya)」が作られている。 冒頭のシュリーハリ演じるシヴァラーマの苦労で彩られた一代記に続き、本編前半はシリー視点で進むお屋敷の婚約式〜結婚式の間に展開する、現代っ子同士のノリの軽いドタバタ恋愛劇。後半は一転してサントーシュ視点での農村の暮らしを背景に、都会人サントーシュが農業を通して恋愛と同時に郷土愛に目覚めるまでを描く。 振付師として有名なプラーブデーヴァーの初監督作にあたって直球ラブロマンスが用意されたってのは、企画がしっかりしてるからなんだろうけど(*7)、全体としては農村地域の写し方に気合いが入っているあたり、振付け以上にカメラアングル、その空の青や山々の緑、雲が作り出すグラデーションの美しさなどなど、田園地帯の幻想的色彩をを楽しそうに切り取る撮影の数々がスンバラしい。 それに伴ってなのかどうなのか、本作がテルグ語映画デビュー作となるサントーシュ役のタミルスター シッダールタを泥まみれにして、農場でいじめ抜くシーンが短いカットで次々つながってるあたり「タミルのイケメンスターかなんか知らんけど、テルグの洗礼を受けてみやがれ!」と楽しそうにいじめてるように見えるなぁ…と、微笑ましい遊びが多いw ヒロイン シリー演じるトリシャー(*8)は、1983年タミル・ナードゥ州チェンナイ生まれの映画女優兼モデル。 学生時代は犯罪心理学を専攻し俳優業に進む気はなかったと言うものの、TVCMやミュージックビデオの出演を通してモデル業で活躍し、1999年にミス・マドラスに当選して映画界に参入。同年のタミル語映画「Jodi(カップル)」の端役でノンクレジット出演し、2002年に「Mounam Pesiyadhe(沈黙の会話)」で主演デビューを果たす。03年には、当初デビュー作予定だった「Lesa Lesa」を含む6本の映画に出演し活躍の場を広げ、そのうちの1本「Enakku 20 Unakku 18(僕は20、君は18)」が一部キャスト替えの同時製作で作られたテルグ語リメイク作「Nee Manasu Naaku Telusu」として公開されてテルグ語映画デビューとなった。 翌04年には「Varsham(雨)」でフィルムフェア テルグ語映画主演女優賞を獲得。続く05年も本作で2年連続主演女優賞を受賞(さらに07年にも「Aadavari Matalaku Ardhalu Verule(女の話す言葉は、別の意味を持って)」で3回目の受賞を果たしている)。テルグ、タミル両映画界での活躍の他、2010年には「Khatta Meetha(酸いも甘いも)」でヒンディー語映画に、2014年には「Power」でカンナダ語映画にも進出している。 シリーの兄シヴァラーマを演じるは、テルグの"リアルスター"ことシュリーハリ(生誕名ラグムドリ・シュリーハリ)。 アーンドラ・プラデーシュ州中部クリシュナ県に生まれ、ハイデラバードのバラナーガルで子供時代を過ごしたと言う。70年代からアクションスタントとして映画界のキャリアを重ね、後に俳優業に転身。90年代になると名脇役としてさまざまな映画で活躍してその存在感をアピールし、出演作は100作を越える。 2013年、ヒンディー語映画「"ロミオ"・ラージクマール(R... Rajkumar)」の撮影中に急遽体調不良を訴え入院。そのまま10月9日に物故され、業界を始め州全体で大きなニュースとなった。享年49歳。 前半の恋愛劇は話の流れとしては若干古風だし、後半のNRI(在外インド人)がインド愛に目覚めるくだりはテーマありきって感じではあるけど、なにはなくとも主役2人のめいっぱいの愛嬌と魅力の詰まった画面が美しく楽しい。この2人が画面狭しと動き回り、インドの農村地域の美しさが存分に映され、そこで動き回る動物たちの可愛さが十二分に画面に描き出される、爽やかな魅力にあふれる青春讃歌映画ですわ。 それにしても、札束投げつけられた時に息子に札束でお祈りしてから投げつけ返すお母さんカッコいい。状況は悲惨そのものだけど。 挿入歌 Paripoke Pitta (ああ鳥よ、飛び去らないで [巣には戻っておいで]) *いきなり登場する御者は、本作の監督兼振付師プラブデーヴァー!
受賞歴
「NN」を一言で斬る! ・初めて、ナタ持って人を追い回すチンプラ不在の平和なテルグ語映画を見た! …と思ってたら!!
2015.1.16. |
*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。 *2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。 *3 南インド カルナータカ州の公用語。 *4 北東インド 西ベンガル州とトリプラ州の公用語。 *5 東インド オリッサ州の公用語。 *6 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語で、その娯楽映画界を俗にボリウッドと言う。 *7 と言うか安全パイ? *8 またはトリシャー・クリシュナン。クリシュナンは姓ではなく父称名。 |