恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム (Om Shanti Om) 2007年 169分 時は70年代。 主人公オーム・プラカーシュは、親世代から映画界に身を置く売れない役者。ある日、超売れっ子女優シャンティプリヤ(通称シャンティ)に一目惚れ。映画撮影中の火災事故からシャンティを救出した事で2人は急接近する。 しかし、シャンティは映画プロデューサーのムケーシュと密かに結婚して妊娠もしていたのだった! 偶然その事実を知ってしまったオームは悩み苦しむ。 だが、シャンティの妊娠が出世の邪魔になると考えるムケーシュは、新作映画セットもろともにシャンティを焼殺しようとする! オームは、シャンティを追って現場に向かうが、彼女の死を目の前にして爆発に巻き込まれてしまった。 病院に搬送されたオームの死の瞬間、隣室ではボリウッドの大スター ラジェーシュ・カプールの赤ちゃんが産まれていた…。 それから30年。 ラジェーシュの息子オーム・カプールは大スターの道を突き進み、ついにインド最大の映画祭フィルムフェア最優秀賞を受賞する。 その受賞スピーチの途中、自分の台詞にデジャブを感じるオーム。そのスピーチをテレビで見ていオーム・プラカーシュの親友バップーは、その台詞が、オームが昔「受賞したらこう言うんだ!」と用意していた台詞である事に驚く。…そう、オーム・カプールは、あのオーム・プラカーシュの転生した姿だったのだ! 挿入歌 Dhoom Taana タイトルの意味は、ヒンドゥー教のお祈りの文句「幸せでありますように」(*1)。 最近アメリカナイズしてきたインド映画界に対し「ボリウッドらしさって言ったら、これでしょーが!」と豪速球を投げてき直球ボリウッド・ミュージカル。振付師出身の女性監督ファラー・カーンの第2作となる、マニアックなボリウッドネタがこれでもかと入った超一級娯楽作。 主役のシャールクが夫婦で立ち上げたレッド・チリース・エンタテインメントの製作作品(*2)。 日本では、2008年にアジアフォーカス福岡国際映画祭、翌2009年にも大阪のみんぱく映画会「新春インド映画特集」・東京のOAGホールでのアジア映画ベストセレクション、さらに2012年にあいち国際女性映画祭・東京のアテネ・フランセ文化センターの「アジア映画の森ー新世紀映画地図」でも上映。 そしてそして! 2013年にはついに一般公開され、監督のファラー・カーンが来日! 各種映画雑誌やテレビでも取り上げられていた上、マサラ上映会も盛り上がっておりました。 前半はレトロな70年代を舞台としたあまあまな悲恋ロマンス。後半は一転してシェイクスピアもかくや! な、一大復讐劇。 しょっぱなから、「Karz」のメインテーマ「Om Shanti Om」で始まり、70年代テイストのセット・衣裳・当時の映画業界の小ネタ満載。映画全編に散りばめられた、マニアックすぎるボリネタをどこまで理解できるか……この辺りの観客それぞれのボリウッドレベルを計るような濃いい演出も、本作のお楽しみの1つ。 ミュージカルシーン「Dhoom Taana」では、往年のトップスターたちをデジタル処理によるフルカラー合成でミュージカルに参加させると言う離れ業も堪能できる。すでにボリウッドでは、物理的に共演不可能なスターたちを、スクリーンの中で共演させる事が出来るのだ! 主役は、"キング・オブ・ボリウッド"シャー・ルク・カーンが2代に渡るオームを1人2役で演じる。ヒロイン シャンティプリヤーには本作がボリウッドデビューとなる大型新人ディーピカ・パドゥコーン(*3)。その美貌とインパクトで一躍トップスターの仲間入りをし「第2のアイシュワリヤーだ!」と騒がれていた。 オームの母"「Mughal-E-Azam(偉大なるムガル帝国)」でヒロインの座を争った事がある"ベーラには名優キーロン・ケール。オームの親友パプーには青年期と中年期を同じシュレーヤス・タルパデーが演じる。オームと対立するラスボス "ハリウッド帰りのマイク"ことムケーシュ・メヘラーには「Don」でもシャールクと対決していたモデル出身のイケメン アルジュン・ランパールが出演。 その他、チョイ役でも大量のボリウッド関係者が投入され(シャールクのプライベート・ボディガードまでスクリーンに出てきたり…)、トップスターが30人も勢揃いでゲスト出演したミュージカル「Deewangi Deewangi」の他、同じくらいの人数のトップスター、有名監督、映画スタッフがチョイ役でスクリーンに次々登場し、ファラー監督自身もチラッと出演したりしている。"キング・オブ・ボリウッド"シャー・ルク・カーンと監督を務めるファラー・カーンの業界内の影響力のスゴさを実感! 映画の舞台裏の悲喜こもごもや、30年と言う時間経過で変わるインド映画界の様子、各所に仕掛けられたインド映画そのものへの愛情……1本で2度も3度も楽しめる映画への讃歌にあふれた傑作なんですよ! 弟はこれを見て一言「…みんなラテン系の顔だねぇ。スペイン人にウケそう。主人公も珍しく太ってないし」。お前の知ってるインド映画って「ムトゥ」だけだろーがぁぁ! おかんも一言「主人公がやっぱ太ってるね。色もケバいし好きじゃない」。あんたの目は節穴かぁぁぁ! この韓流盲信者めぇぇぇぇ!! ウキー!!! 挿入歌 Dard-E-Disco (傷心のディスコ)
受賞歴
2009.6.20. |
*1 もちろん、主人公たちの名前にも掛けてあり、かつ本作の元ネタとなる1980年の映画「Karz」のメインテーマからの借用。 *2 プロデューサーを担当したのは、シャールク夫人のガウリ・カーン。 *3 本作の前年06年にカンナダ語(南インドの公用語の1つ)映画「Aishwarya」にて映画&主役デビュー。本作が映画出演2本目。 |