Panduga Chesko 2015年 162分
主演 ラーム & ラクル・プリート・シン & ソナール・チャウハン
監督 ゴーピチャンド・マリネーニー
"なぜ結婚に、わざわざ父親の承認が必要なのだ? それは、2人の愛を理解していない人間の言うことじゃないか"
"そうです。…そう言う貴方が、なぜそうしなかったのです?"
長年争い続ける親戚同士のブバティ家とレッディ家は、その禍根も消えない中、ブバティの娘ディヴィヤーを迎えに最寄り駅(アーンドラ・プラデーシュ州ヴィジャヤナガラム県ボッビリ駅)に勢ぞろいしていた。
ディヴィヤーの実の父親ブバティの一族と、育ての父親サイ・レッディ一族はお互いに「娘は我が家に泊まるべきだ」と争い合うが、長年の諍いにウンザリしていたディヴィヤーは「今回はレッディ家に泊まる。その代わり、お父さんの決めた婚約者と結婚することを誓うから」と言って怒るブバティを一旦落ち着かせながらも、その夜にはさっさと家出して行方をくらませてしまう…。
同じ頃、ポルトガルで大企業を経営するインド人セレブ カールティク・ポティネーニーは、仕事上有利と思われる別の会社のCEOアヌシュカとの婚約を家族の反対を無視して決定するが、直後にインドの生化学工場の事故処理のために長期間のインド出張を余儀なくされる。
ハイデラバードに到着したカールティクは、早速工場の事故に抗議する環境団体"グリーン・アーミー"のリーダーになっていたディヴィヤーと話し合うも、金で解決しようとする彼の態度に怒るディヴィヤーは、自分に言い寄ってきたギャングボス シャンカルに「カールティクの制裁」を依頼してしまい…!!
挿入歌 Life Is Beautiful (ライフ・イズ・ビューティフル)
タイトルは、テルグ語(*1)で「お祝い」の意だそう。
のちに、同名ヒンディー語(*2)吹替版、タミル語(*3)吹替版「Vacha Kuri Thappaathu」も公開。
冒頭にマフィアボスみたいな男の釈放からの復讐劇が始まるので、よくあるヤクザ映画手法のマサーラー映画かと思いきや、インターバル直前のどんでん返しから、05年の「Brindavanam(ブリンダーヴァナム屋敷にて)」型の2つの家の対立を主人公カップルがあれやこれや世話をする家族の再統一映画に早替り。1粒で2度美味しい一本になっていて、その軽快な物語運びの八面六臂具合にビックリですわ。
主な舞台となるアーンドラ・プラデーシュ州北部のボッビリは、16世紀から近郊のヴィジャヤナガラムのザミンダール(大地主)と対立しながら独自に地元ザミンダールの統治を受けてきた場所で、両ザミンダールの間では大規模な戦争まで起こったことがある土地柄。
そんな舞台で、喧嘩し続ける大家族の離散と再結合を描く地元愛深い話運びは、地主同士の権勢争いをその作風に落とし込むテルグ語映画界の得意中の得意技でございましょうか。
複雑な家庭事情を抱えているわりには、その美貌を振りまきまくって騒ぎの渦中で気楽に過ごすヒロイン演じるラクル・プリート・シンもいつも以上に高彩度な画面の中で存在感を発揮してお美しい。
前半、金勘定しか知らないような嫌味たっぷりなキャラとして登場する主人公演じるラームも「へえ、こんな嫌味キャラを演じるようになったんか」とか思ってたら「全ては、計画のうちだったんだ!」と中盤からガラッとキャラが変わり、より奥行きを見せる主人公へと変貌して、まさにクリシュナ型恋愛譚の主人公らしいカッコよさ。
まあ、その分セカンドヒロインの位置にいたソナール・チャウハン演じるアヌシュカ(通称スウィーティー)がただのお邪魔虫キャラにしかならなくなったのはかわいそうな感じでしたけど…。
そのソナール・チャウハンは、1987年ウッタル・プラデーシュ州アーグラのラージプート家系(*4)生まれ。父親は警部をしているとか。
ニューデリーの大学で哲学を修了して、その学生時代からモデル業を始めてミス・ワールドツーリズム2005で優勝。ミス・ワールドツーリズムで優勝した最初のインド人となる。
モデル業の中でいくつかのMV出演を経験したのち、08年のヒンディー語映画「Jannat(天国)」で映画&主演デビュー。同年に「Rainbow」でテルグ語映画にもデビューし、10年には「Cheluveye Ninne Nodalu」でカンナダ語(*5)映画にもデビューしている。その後はヒンディー語とテルグ語両映画界で活躍する中で、13年のヒンディー語映画「3G」では主演の共に歌手デビュー。15年にはテルグ語映画「サイズ・ゼロ(Size Zero)」の同時製作タミル語版「Inji Iduppazhagi」でタミル語映画にもデビューする。
16年の主演作テルグ語映画「Dictator(独裁者)」ではTSR・TV・ナショナルフィルムアワードの有望女優賞を受賞している。
監督を務めたゴーピチャンド・マリネーニーは、1980年アーンドラ・プラデーシュ州プラカーシャム県オンゴール近郊のボッドゥルリヴァリパレム村生まれ。
12歳で学校を辞めて、ワランガル県でテレビカメラマンとして働き出し、そのまま撮影助手として映画界入り。カメラマン兼助監督としていくつかのテルグ語映画に参加したのち、10年の「Don Seenu」で監督デビューを果たし年間最大ヒットを飛ばす。2本目の監督作となった12年の「Bodyguard(ボディーガード / 同名マラヤーラム語映画のテルグリメイク作)」では脚本も担当し、以降映画監督兼脚本家として活躍中。本作は4本目の監督作。
大家族もの故に登場人物は大盤振舞いなマルチスター映画で、複数のコメディアン、複数の悪役俳優が次々出てきては、啖呵切って自分の見せ場をアピールしていくバラエティ映画としての側面も健在。その情報過多な盛りだくさんな内容ながら、ノリが軽いせいか全編楽しく次の展開へ興味を持っていかれるサービス満点。
やたらと高彩度な衣裳や小道具大道具も含め、多数のキャストの饒舌なセリフの応酬が目に優しくも濃密。コメディ主体の前半、お涙頂戴の家族愛劇主体の後半というメリハリ具合も見やすく楽しい。
その中に自然に導入されるギャングとのアクションも派手派手ながら、そこまでシリアスでもなくケレン味重視の派手さも色彩の派手さを補強するかのよう。後半に重視される家族の結びつき、結婚における当人たちの自由意志のあり方も、定番のテーマでありながら料理の仕方が上手いので、飽きないで登場人物たちの喧嘩を見ていられる。なんでインドの色彩って、こんな高彩度ばっかなくせに目に優しいんでしょうねえ…。物語の脱線具合も含めて、そのまとめ方手法の不思議。他の「Brindavanam」型家族愛映画も色々見て、研究してみたいもんですわー。
挿入歌 Chuda Sakagunnave
「Panduga Chesko」を一言で斬る!
・インドセレブが、ビジネス上有利な結婚を望むなら、やっぱ同じインドセレブと結びつきたがるもんなんですねえ…(コメディだから、どこまで本気か知らんけど)。
2021.12.31.
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