Paheli 2005年 141分 むかーしむかし。夜空に輝く星の数ほども昔のお話。 あるインドの村にラッチーと言う女の子がおったそうな…。 その日ラッチーは、ラジャスターンのナワルガルに住む豪商バンワルラールの息子キシャンとの結婚が決まって大喜び。 ラッチーの結婚行列がナワルガルへと向かう途中、休憩に訪れた村の"幽霊の出る木"に吊るされた人形たちは、人の気づかない所で花嫁についてヒソヒソ話。 その頃、井戸で顔を洗うラッチーは、なにか目に見えない気配を感じていた…。 キシャンの家に着いたラッチーだったが、結婚初夜の夫はずっと帳簿とにらめっこ。あげくの果てに「明日から商売のために家を空ける。帰ってくるのは5年後になる」と言うからラッチーはビックリ! 夢にまで見た幸せな結婚生活が崩れて悲嘆にくれるラッチーだったが、数日後、旅立ったはずのキシャンが彼女のために仕事を取りやめて帰ってきた! 仕事一筋の夫の変わりように喜ぶラッチーだったが、実は帰ってきたキシャンはキシャンではなかった。 「僕は、あの村の木に住んでいるプート(=霊)だ。貴方の美しさに虜となった。貴方の手助けがしたいと思って、この姿になってやってきたんだ」 初めは驚くラッチーだったが、自分を見てくれない商売一筋の夫よりも、自分を必要として奔走する目の前のキシャンの方を受け入れて行く。 キシャンの帰還に一様に驚く家族一同だったが、プートは得意の魔法を使って家族に馴染んで行く。しかしラッチーは、彼が本物のキシャンでないことがバレるのではないかとハラハラ。その頃、本物のキシャンもまた、ラッチーへの思慕から仕事を取りやめて家に帰ろうとしていて…。 …今日も、幽霊の木に吊るされた王様と王女の人形は、プートの行く末に茶々を入れながらも見守っている。 OP Minnat Kare (彼がお願いしても?[頷いてはダメ]) 原題の意味は「謎かけ」または「難問」。もともとラジャスターンに伝わる民話を元にした映画、だそうな。 南インドの映画はともかく、ボリウッドがインドに伝わる神話伝説の類いを、中心命題としてあんまりネタにしないのはなんでだろう…とか思ってたけど、こう言う映画が作られると外国人的にはインドな空気を存分に浴びられるので、一石二鳥な気分ですたい。インド国内での興行は、失敗したようだけど…。 物語の宝庫で、「世界にある物語は全てここにある」と誇る史上最長の叙事詩「マハーバーラタ」を持っているインドならではの民話世界を、もっと映像で見てみたいわぁ。 ラジャスターンのひなびた砂漠風景が美しく、衣裳や小道具ともども、まるで千夜一夜の世界へと誘われるかのよう。 商人屋敷を彩る数々の小道具を始め、壁画、衣裳、ラクダ飾り、操り人形から貯水槽(*1)まで色々な土俗的な状景が民話的世界を構成していて綺麗。 インド人がよくやる、Yesの意味で首を揺らす仕草がこんなに出てくる映画も珍し…い?(*2) 製作は、シャールク夫婦の立ち上げたレッド・チリーズ。主役を務めるシャールクは夫婦でプロデューサーも兼任。 ヒロインのラッチーには、シャールクとのコンビもばっちりのラーニー。脇には、父親役にボリウッドのおとんアヌパム・ケール。義姉の未亡人ガジュロバーイにジュヒー・チャウラー(*3)。失踪したガジュロバーイの夫にスニル・シェッティー。人形の声をあててるのは、名優ナセールッディン・シャーとラトナ・パタック夫婦。さらにラスト近くに重要な役を演じる羊飼いの老人にアミターブ爺も登場! ここに出て来る"霊"は、英語字幕ではGhostって書いてあったけど「幽霊」と言うより精霊…アラビアンナイトにおけるジン(ランプの精)に近い。 「この世に生まれる事のなかった魂が、神に従ういわれはない」みたいなこと言ってたし、妖怪や妖精の類いの超常的な存在なんだけど、そんな精霊とラッチーとの間に子供ができるってんだからあーた、長生きはしてみるもんじゃのぅ。 最後に登場するアミターブの羊飼いも、なんかの精霊じゃなかろか(*4)。 プートと同じくシャールク演じる本物のキシャンは、自己ちゅーでKYだけど、ラスト近くには家族からも存在を全否定されまくるのが、なんともかわいそう。ただ、ガジュロバーイ夫婦ともども、ラッチーを通して夫婦のあり方(*5)をさりげなーく描き出すのはさすが…かいな? ED Phir Raat Kati (夜は明けた [夜へ続く日々に変わって]) zq
受賞歴
2011.1.25. |
*1 最初、公衆浴場かなと思ってしまった…。 *2 でも、時々欧米式のうなずきをしてたりするけど。 *3 最初気づかなかった…。細いお姉様を初めて見ましたわ。 *4 …って思っちゃうほど、アミ爺はいつも通りうさんくさい。 *5 特に色んな意味で忍耐を強いられる嫁側の現実。 |