PATHAAN/パターン (Pathaan) 2023年 146分(エクステンデット版は148分)
主演 シャー・ルク・カーン & ディーピカ・パドゥコーン他
監督/原案 シッダールト・アーナンド
"キング・カーンが、帰ってきた"
2019年8月5日の、パキスタンはパンジャーブ州都ラホール。
ニュースが報じるインド憲法370条の廃棄によって、ジャンムー・カシミール州の特別自治権をインドが一方的に破棄したと知ったカーディル将軍は、「これは宣戦布告だ」と断言し、癌による余命3年の宣告を受けながらも「十分だ。…このままではカシミールがインドの好きにされてしまう。今こそ悪魔と手を組むべき時だ」と"Xのジム"に連絡を入れる…「災禍を招け…インドを締め上げる」
3年後。
ニューデリーのJ.O.C.R.(= Joint Operations and Covert Research / 共同作戦&秘密調査部隊)に勤めるナンディニ・グレワール少佐は、長年捜索し続けてきた重要人物ルバイらしき女がパリで発見されたとの報告を受け、急遽フランスへと向かっていた。
その専用機の中で、部下に「今回の件はパターンがらみですよね? 彼の話をすると皆が話題を変えようとします。彼は誰なのですか?」と尋ねられ、ナンディニはJ.O.C.R.創設者である諜報員パターンの思い出を語り始める…
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J.O.C.R.創設は2年前。
ミャンマーでの諜報活動で大怪我を負ったパターンが、その療養中に構想した「怪我や精神負荷によって退役せざるを得なくなった有能な諜報員を集めた再生部隊」を元にしている。
その構想通りの諜報員たちで組織された初期メンバーとともに、ドバイ開催の科学会議に出席する2人のインド人科学者とインド大統領を狙う民間テロ組織”X”の陰謀を阻止するためドバイに向かうJ.O.C.R.だったが、敵の誘導に引っかかってインド人科学者を拉致され、パターンたちもその攻撃を受けて行動不能の大怪我を負ってしまう…!!
そのパターンを前に、実行犯は素顔を晒して語りかける…「パターン…インドの伝説の男にようやく会えたよ…俺の名はジム。インドでは俺は"死んだ人間"だ。お前もいつか裏切られるぞ。俺は、恋人のように思っていたのにな…いや、お前にとっては"母親のように"だな。そう…"母なるインド"に」
ED Jhoome Jo Pathaan (パターンの魔性に [心という心が奪われる])
2012年の「タイガー(Ek Tha Tiger)」から始まる、YRFスパイ・ユニバース第4作となるスパイアクション・ヒンディー語(*1)映画(*2)。本作ののち、同じ2023年の11月に、ユニバース5作目となる「Tiger 3(タイガー3)」も公開されている。
監督は、シリーズ第3作「WAR/ウォー(War)」から続投のシッダールト・アーナンド。
インド本国と同日公開で、アラブ、オーストラリア、バーレーン、カナダ、フィンランド、フランス、英国、インドネシア、アイルランド、イスラエル、クウェート、モロッコ、オマーン、ポーランド、カタール、ロシア、サウジアラビア、スウェーデン、シンガポール、米国、南アフリカでも公開されたよう。
日本でも、インド公開と同年の9月に一般公開。2024年には群馬県の高崎電気館の「インド映画特集2024」でも上映。
いつからシリーズ作になったんだよ、と言いたいYRFスパイユニバースのド派手アクションてんこ盛りな本作。
それを証明するために、シリーズ第1作・第2作にカウントされている「タイガー」、その続編「Tiger Zinda Hai(タイガーは生きている)」の主役であるサルマン・カーン演じる(元)スパイ タイガーの嬉しいゲスト参戦もあり、さらに申し訳程度にシリーズ第3作「WAR/ウォー」の主人公カビールについての言及も出てくる。
とは言え、ユニバース・シリーズであるからかお話そのものは独立したものになっているので、これ1本で完結している派手派手なスパイアクションになっていて、2018年の「Zero(ゼロ)」の大コケ以降ゲスト出演ばかりが続いた主演シャー・ルク・カーンの5年ぶりの主演復帰作を祝うようなド派手主人公推しまくり大作は、どこまでもカッコよく美麗な画面作りを目指している安心設計。
対するライバルキャラ ジム演じるジョン・エイブラハムへのサービスも余念なく、彼の過去出演作のオマージュ的シチュエーションやセリフ、殺陣サービスも彼のファンを満足させてみまっせ、とでも言いたげなほど過剰にてんこ盛り。
2人のスパイ合戦&過去作オマージュに時間を取られて、やや出番が削られたような気もしないでもないディーピカ演じるルバイも、その峰不二子かって三面六臂の活躍と変幻自在な立ち位置はどこまでもお美しい。もともとアスリート的なアクション演技を得意としていると言うディーピカの独壇場のようなアクションシークエンスの数々は、他のスパイたちの大立ち回りを凌駕する迫力であります。そんなん惚れてまうやろー。
インドのスパイ映画の定番でもある、「敵は戦争の相手国かと思いきや、その裏で全てを操っていたのは、同じインド人エージェントの憎悪」という、真の敵は同国人同士という物語構造もどこまでもお話を盛り上げてくれる。
「タイガー」の頃に比べて、たしかに自国賛美要素が強まった感はあるものの、そのイケイケドンドンなインドの経済状況・社会状況が見捨てたものがどんなに多くあって、どんなにその救済が考えられていないかを、物語世界の争いの根本的問題に据えている視線は、話を盛り上げるポーズだとしても評価してええんでなかろか。
「バーフバリ(Baahubali)」登場以降、なかなかヒット作が出てこない不調が続いていたヒンディー語映画界にとって、大上段スパイアクション大作として、マルチスター&複数の外国ロケ敢行のマルチロケーション映画が戻ってきて大人気を博したと言うのは、今後の映画界の流れも期待してしまう楽しい事象でもありますよ。ハリウッド的すぎると言う声もあったそうですが、同じノリのアクション大作が出てきたら私は迷わずインドのアクション映画を見に行きまっせー!(*3)
続く「Tiger 3」にて、パターン役のシャー・ルク、カビール役のリティックがゲスト出演してるとなると、その後に予定されている「War 2」とか「Tiger vs Pathaan」で誰がゲスト参戦してくるんだろうとか、ワクワクしてしまいますが、やっぱYRF(=ヤシュラジ・フィルムズ)過去作からの引用で、Dhoomシリーズからアビシェークとかアーミルとかが参戦するとおもしろそ…?(*4) それたはまた別に、シャー・ルクVSシャー・ルクとか面白そうだぞー(*5)
挿入歌 Besharam Rang (恥知らずな色合いを [世界はまだ知らない])
*映画公開前に、ソングシーンがYoutube公開されるやいなや史上最速1億回再生記録を樹立したボリウッドソングとなった歌。
受賞歴
2023 Nickelodeon Kid’s Choice Awards 人気男優賞(シャー・ルク・カーン)・人気作品賞)
2023 FOI Online Awards 女性プレイバックシンガー賞(シルパ・ラーオ / Besharam Rang))
2024 Filmfare Awards 女性プレイバックシンガー賞(シルパ・ラーオ / Besharam Rang)
「Pathaan」を一言で斬る!
・機関銃ぶっ放す美女って……イイネ(ダメ人間発言
2024.2.10.
2024.2.23.追記
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