Pokiri 2006年 162分 「誘拐、麻薬取引、粛正…ハイデラバードには今、2大マフィアによる抗争が続いているのです」 ドバイに本拠を持つアリー・バーイと、ハイデラバードでマフィアを仕切るナラヤーナ。この2大勢力を前に警察も為す術を持たない。今、新たに配属されたサイード・ムハンマド・パーシャ・カードリ副警視監に突き付けられた課題である…。 ある日、そのアリー配下のマフィアたちをたった一人でぶっ倒す謎の男パンドゥが現れる!! マフィアたちは、このパンドゥに手も足も出ず、そのために逆に仲間に率いれようとするが、そのパンドゥはマフィアたちの申し出も無視。マイペースに動いて、一目惚れしたエアロビクス・インストラクターのシュルティをアリー・バーイの手下でもある腐敗警官パシュパティの脅威から助け出してしまう! 亡き父に代わり一人で家を支えるシュルティは、言い寄って来る隣人始め無神経な男たちを遠ざけていたものの、事あるごとにそんな男たちから助けてくれるパンドゥには、徐々に気を許していくように。 しかし、シュルティをなんとしても手に入れようとするパシュパティや、激しくなる抗争の渦に自ら飛び込んでいくパンドゥの闘争の日々は、当のシュルティの平穏をも破壊しようとしていた…!! 挿入歌 Jagadame (戦いだ!!) タイトルは、テルグ語(*1)で「悪党」。 テルグ語映画界のヒットメーカー プーリ・ジャガンナートの13本目の監督作。本作はその大ヒットにのって、500日ものロングランを記録。06年のインド映画最高ヒット作となったと言う。 07年にはタミル語(*2)リメイク作「Pokkiri(悪党)」、09年にはヒンディー語(*3)リメイク作「Wanted」、10年にはカンナダ語(*4)リメイク作「Porki(悪党)」がそれぞれ製作公開され、それとは別にヒンディー語吹替版「Tapoori Wanted」としても公開された。 2大マフィア抗争を背景に、そこに単身乗り込んでいくギャング主人公パンドゥの超絶アクション、いつも通り恋愛・家族もの・マスコミ批判を含んだ社会派な要素も取り込んだテルグ・アクション大作! このリメイク作「Wanted」以降のサルマン・カーン主演のアクション映画に見える、サウス系アクション演出の大元はここなんだね、って数々の演出上の仕掛けは見物。日本公開されいている「ダバング」への影響を考えていくのも、面白いかもしれない。 その主人公パンドゥを演じるマヘーシュ・バーブ(*5)は、1975年タミル・ナードゥ州チェンナイ生まれ。 父親は俳優兼監督兼プロデューサーとして60年代からテルグ語映画界で活躍するクリシュナ(*6)。兄弟や親戚も映画関係者が多い映画一族出身。本作でも、妹のマンジューラーがプロデューサー補についている。 幼少期から、テルグ語圏で絶大な人気を誇る父の影響が出ないようタミル・ナードゥ州チェンナイに住む母方の家で過ごしながら、79年の「Needa」以降子役として映画出演。大学で経営学を修了した後、映画監督L・サティヤナンドの元で演技修行して、99年のテルグ語映画「Raja Kumarudu(王子様)」で映画&主役デビューしてナンディ・アワード新人男優賞を獲得。その後も数々の映画で主演男優賞を始め映画賞を獲得していく。本作公開の06年には、他に「Sainikudu(兵士)」にも主演している。 その人気は、タイム誌の"インド映画男優好感度ベスト50"やフォーブズ・インドの「インドの有名人100」の上位を常にマークし、数々のブランド大使を務めている。 05年、映画女優ナムラター・シロドカールと結婚。14年には自身の映画プロダクション"G・マヘーシュ・バーブ・エンタテインメント Pvt. Ltd"を設立し、プロデューサーとしても活躍している。 監督のプーリ・ジャガンナートは、1966年アーンドラ・プラデーシュ州東ゴーダヴァリ県ピサプラン生まれで、ヴィシャーカパトナム県ナルシパトナム近郊育ちのヴェラマ家系(*7)出身。弟に、男優サイラム・シャンカルがいる。 ラーム・ゴーパル・ヴァルマー監督作のテルグ語映画の助監督を務めたのち、00年の「Badri(バドリ)」で監督・脚本・原案・台詞デビューし大ヒットさせる。以降、02年の「Idiot」で監督とともにプロデューサーデビュー。03年の「Amma Nanna O Tamila Ammayi(母さんと父さんと、タミル人の彼女と)」でナンディ・アワード台詞賞、06年の本作でフィルムフェア・テルグ語映画監督賞他を受賞したのを初め、数々のヒット作を手掛ける名監督であり名脚本家・名プロデューサーとして活躍中。テルグ語映画の他、01年にはカンナダ語映画「Yuvaraja」、04年にはヒンディー語映画「Shart: The Challenge」(*8)で、各映画界でも監督デビューしている。 ギャング抗争ものなわりに、どっちかと言うと中心は警察内部の腐敗とその克服であり、2大マフィアのボスもあんま恐くないと言うかコミカルな部分が多い。やたら凄みを持って見てる側を怖がらせるのは、腐敗警官パシュパティの権力乱用具合だったりする(*9)。 それと同時に、事態が改善しない事について「警察のせいだ」と騒ぎ立てるマスコミが、マフィアたちへの取材と称したインタビュー映像をTVに流して事態を悪化させたり、無意味な質問を矢継早にまくしたてたりして状況を煽る様を、副警視監の台詞を借りて報道界の無批判な姿勢にも問題ありと知らしめるシーンも印象的。わりと「報道の力」と「映画の力」の両立を謳い上げる事の多いインド映画の中でも、こう言う視線もあるんだなあと妙なことまで考えてしまいますな。 挿入歌 Gala Gala (竜巻が湧き出るように [流れ行くゴーダヴァリ河よ])
受賞歴
「Pokiri」を一言で斬る! ・ハイデラバードのエアロビクス教室は、外から丸見えなの?(まあ、エアコンが信用できない場合、密室だと暑そうだけど)
2017.5.5. |
*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。 *2 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。 *3 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。 *4 南インド カルナータカ州の公用語。 *5 生誕名マヘーシュ・ガッタマネーニー。 *6 生誕名シヴァ・ラーマ・クリシュナ・ガッタマネーニー。別名ナタ・シェーカル、またはスーパースター・クリシュナ。 *7 アーンドラ・プラデーシュ各地にいる地主家系。その歴史は、最古の氏族では12世紀まで遡り、17世紀以降ゴールコンダ王国指定のザミンダールとして勢力を拡大。いくつかの氏族は王族に匹敵するまでに成長した。 *8 この映画は、デビュー作「Badri」の自身でのリメイク作。 *9 ラスト近辺は小物臭が強くなるけど。 |