-銃弾の饗宴- ラームとリーラ (Goliyon Ki Raasleela Ram-Leela) 2013年 155分 グジャラート州の辺境都市ランジャール。 白昼堂々の武器密売で潤うこの地方都市は、ラジャーディ家とサネーラ家と言う2大家系に支配される無法地帯。この2つの家は、500年もの間対立し続けている…。 この街の争いに無関心なまま遊び回るラジャーディ家頭首の次男ラームは、春祭ホーリーの中街に帰って来た。彼は周りの女たちに飽きてサネーラ家の支配街区へと出向き、サネーラ家頭首の娘リーラーと出会うと、両者は戯れに恋仲になり、家に無断でその関係を深めて行く。しかしリーラーには、母親…サネーラ家頭首ダンコール…の決めたNRI(在外インド人)の婚約者カルサンとの結婚がせまっていた…。 そんな中、港のジャンタ・バザールで鉢合わせたラジャーディ家とサネーラ家の若者たちは、口争いから互いの銃の腕前を競うことになり、気付いた時にはラームの兄メーグジー(次期ラジャーディ家頭首)が誤って射殺され、怒るラームによって狙撃犯のカーンジー(リーラーの兄。次期サネーラ家頭首)もまた殺されてしまう!! 進退窮まったラームとリーラーは、口論の末カーンジーの妻ラスィーラーの勧告を受けてランジャールを捨てて駆け落ちすることになるが、両家ともにこれを許さず、双方の頭首候補となる二人を連れ戻し、改めて報復のために次々と双方の一族の命を狙う抗争劇が始まる…。 挿入歌 Tattad Tattad (タタド・タタド) *日本でも、ネット上で一瞬話題をさらった、主役ラーム演じるランヴィール・シン初登場シーン!! インド映画では、"弓を引くポーズ"は叙事詩ラーマーヤナの主人公ラーマ王子の、"笛を吹くポーズ"は牧夫神にして色男の代表クリシュナ神の表象となる。どちらも"青い肌をした、ヴィシュヌ神の化身"と言うことになっている。 タイトルは、ヒンディー語で「銃弾戯曲 ラームとリーラー」。 公開直前まで「Ram-Leela」だけだったタイトルが、宗教劇の名前でもある「Ramleela(ラームリーラー=ラーマーヤナ劇)」の映画タイトルへの使用の是非をめぐって裁判沙汰が起こったためのタイトル変更なんだそうな(*1)。 OPクレジットの表記通り、シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」を現代(?)インドに翻案(+脚色)した映画。画面全て、髪の毛一本までもコントロールする、インド映画界屈指の映像美学を追究するサンジャイ・リーラ・バンサーリー監督が放つ映像美あふれる大作。 日本では、2015年にIFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて「銃弾戯曲ラームとリーラー」の邦題で上映。2018年のICW(インディアン・シネマ・ウィーク)、2024年のIMW(インディアン・ムービー・ウィーク)でも「ラームとリーラー」の邦題で上映され、24年には鹿児島のガーデンズシネマ「秋のインド映画特集」でも上映。 古典戯曲ロミオとジュリエットと共に、「ラームリーラー」と言うタイトル自身に内在されるラーマーヤナ構造をも取り入れた大悲恋劇で、その映画内舞台は、西北インドのグジャラート州の絢爛豪華な民族衣裳や生活文化を背景に、現代のようで時代劇的でもあり、インド的なようでどこか"ここではない彼岸"のような、時間と距離を狂わされるサンジャイ監督の美意識に彩られた世界が、最初から最後まで押し寄せてくるファンタジー的な映画。 画面は大きく、暖色・寒色・白の三段階に調整され、それぞれその時の感情表現になっていたり……する?(*2) 夏の短期間に起こった悲恋を描いたロミオとジュリエットに対し、本作は冒頭にホーリー(*3)を、最後にはラームリーラーが行なわれるダシャーラー(*4)を持ってくる生命あふれる季節を描く所も、季語的なポイント。 ヒロイン リーラー演じるディーピカは、2007年の「恋する輪廻(Om Shanti Om)」でのボリウッドデビュー以来、トップスターとして活躍し続け、2013年は本作の他「若さは向こう見ず(Yeh Jawaani Hai Deewani)」「チェンナイ・エクスプレス(Chennai Express)」「Race 2(レース2)」と計4作で主演しいずれも大ヒット、さらにオムニバス映画「Bombay Talkies(ボンベイ・トーキーズ)」にゲスト出演と大活躍の年となった。 一方、2010年の「Band Baaja Baaraat(結婚式バンド狂騒)」で鮮烈デビューした大型新人、ランヴィール・シンも本作の他2013年は大ヒット作「略奪者(Lootera)」に主演、「Bombay Talkies(ボンベイ・トーキーズ)」にゲスト出演と、すでにトップスターの風格。 リーラーの母親ダンコール役でものスゴい迫力見せていたスプリヤー・パタックは、ラトナ・パタック(*5)の姉で、シャーヒド・カプールの義母(*6)にあたる人だそうで。その凄まじいオーラと眼力、本作のようにこの人が縦横無尽に活躍してる映画が他にもあるなら是非見てみたいわ。 その他、「Gangs of Wasseypur」で頭角を現した、リーラーの義姉ラスィーラー役のリーチャ・チャッダ。TVショーやベンガル語映画で活躍する、ラームの義姉ケーサル役のバルカー・ビシット・セーングプタ。衝撃的な絵面を演じきったラームの兄メーグジー役のアビマニュ・シン(*7)などなど、脇役も極彩色の画面に負けず劣らずの濃いい活躍で楽しい。 「ミモラ(Hum Dil De Chuke Sanam)」や「Guzaarish(ただ、乞い願う)」など、過去のサンジャイ監督作に通じる画面構成の発展系は、まさに一見の価値あり。全画面スキなしのために相当疲れるとは思うけど…。 横で見ていたおかんは「なんでロミオ役があんなマッチョなんだ! ロミオやるなら、もっと線の細いナヨ男じゃないとイカんだろ!! ゼフェレッリ版を見習え!!」とブーブー言いつつ、絢爛豪華な画面に圧倒されて最終的には「(私の趣味じゃないけどと防衛線を引きつつ)よく出来てるねぇ…」と納得しておりました。 映像美に浸りたい人には、是非ともオススメ!! 挿入歌 Lahu Munh Lag Gaya (血の味をあじわって [血管に眠るそれは今目覚めた。夢の角から、全てを遠ざけて、唇へ、唇から唇へ…])
受賞歴
「GKRRL」を一言で斬る! ・知らないとは言え、あんな物騒な街の跡取り娘と婚約なんて度胸あるわ〜。まあ、相手がディーピカなら、しかたな…い?
2014.12.26. |
*1 裁判自体は、訴えが棄却されて終わったらしい。 *2 普通に撮ってる所もあるから、あんま関係ないかしらん? *3 春祭。全ての階級・貴賤が無効化される"出会い"を祝福する日。 *4 秋祭。ナブラトリ(九夜祭)の最後。女神祭でもあるため女性原理の象徴? またはラーマーヤナにおけるラーマ王子の勝利の日でもあるから男性原理の象徴? *5 ナセールッディン・シャー夫人。 *6 スプリヤーから見れば、シャーヒドは夫パンカジ・カプールの先妻の子供になる。 *7 テルグ語映画「Gabbar Singh(ガッバル・シン)」のラスボスの人だ!! |