ラジニムルガン (Rajini Murugan) 2016年 129分
主演 シヴァカールティケーヤン & キールティ・スレーシュ
監督/脚本 ポンラーム
"神様曰く「子供が親を忘れようとも、親は子供を忘れないものだ」"
マドゥライは、殺人と窃盗に満ちた街と言われる。果たして本当だろうか?
信じてほしい。事実はそうではない。ここは、ジャスミンの香りたつお祭の街なのだ…
マドゥライに住む年老いたアヤンカライは、自力で教育した子供達が続々海外進出してしまって、財産を築いたとは言え今や息子家族1組が近くにいるだけ。そんな祖父の世話を買って出る孫ラジニ・ムルガンは無職の身で、友人知人のつてで小銭稼ぎしつつ親と祖父のすねかじりの毎日を送っている。
ある日、景気付けに足相占いをしてもらったラジニ・ムルガンと親友トータットリーは「2人で事業を立ち上げれば、60日以内に車を買える身分になるし、貧者に募金すれば人々から尊敬される時の人になる」と言われて有頂天。占い師を見つけるきっかけを作った犬の飼主の女性に運命を感じ始めるラジニ・ムルガンだったが、その女性カールティカ・デヴィの父親は、彼の名付け親であり父の親友であり…その昔親同士の喧嘩で絶縁状態になったままの間柄だったのだ!!
その頃、金持ちアヤンカライを狙う恐喝詐欺師がマドゥライにやって来ていて…。
挿入歌 Rajinimurugan ([さあ楽しもう、俺こそ]ラジニムルガン)
タイトルは主人公の名前。
劇中、タミルのスーパースター ラジニカーントの大ファンだと言うヒロインの父親によって名付けられた名前だけど、神様にも比するスーパースター ラジニカーントの短縮名+後半はタミル地方とスリランカで人気の軍神ムルガン(*1)のこと。
ラジニカーントのモノマネ芸を得意としていたコメディアン出身のシヴァカールティケーヤン&映画一族出身のキールティ・スレーシュという、同年公開の傑作「レモ(Remo)」主演コンビが贈るタミル語(*2)コメディ映画。
インド本国のほか、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イギリス、クウェートでも公開されている。
のちに、カンナダ語(*3)リメイク作「Raj Vishnu」も公開。
日本では、2016年にSpaceboxjapanによって英語字幕版が自主上映。2021年には、IMW(インディアン・ムービー・ウィーク)パート2にて日本語字幕版で上映され、2024年のシネ・リーブル池袋の「週末インド映画セレクション」でも上映。
タイトルから、全編ラジニ映画リスペクトな映画かと思ったけども、基本話芸コメディで進行する人情家族ドラマ映画で、ラジニネタもそれなりに入ってくるものの知らなくても問題ないお話ではある(*4)。まあ、突然「ムトゥ(Muthu)」や「Madrasapattinam(マドラス1947)」の音楽が大仰に流されるシーンとか大笑いしてしまうようなタミル映画ネタも多々あったけどさ。
同年公開の同じ主演俳優同士の「レモ」に比べると、アクションにしろロマンスにしろ動的シークエンスが少なく会話によるツッコミ掛け合いシーンが全編に渡って展開するので、そういう所はタミル語を知ってる方がのめり込み度は高い気もする。マドゥライっ子気質万歳な感じもなくはないので、マドゥライを実際に体感してる人にもオススメ…なのかなあどうかなあ(*5)。
監督&脚本を務めたのは、助監督出身のポンラーム(本名ポンラーマン・ペルマル)。
01年のS・A・チャンドラシェーカル監督作「Dosth(友達)」の助監督としてタミル語映画界入りして、以降もタミル語映画界の助監督を続ける中で様々な人脈を築き、13年のシヴァカールティケーヤン主演作「Varuthapadatha Valibar Sangam(のんき若者協会)」で監督デビューし大ヒットを飛ばす。本作が2本目の監督作となり、以降も監督として活躍中。
本作は、ヒロイン演じるキールティ・スレーシュのタミル語映画デビュー作となるはずだったそうだけど、公開が遅れて「Idhu Enna Maayam(この魔法はなに?)」に先を越されたそうな。
「レモ」に比べてもキールティの活躍の場が少ない気がするのは、デビュー予定作ゆえなのかもだけど、まあ強気ヒロイン像の確かさや、それとなく距離を詰めていくヒロインの恋愛感情模様もきっちり演じられてて可愛らしい。もっと啖呵きるシーンがあっても全然良かったのよ、なんせご褒美ですからぁーーー!!(あかん)
にしても、劇中主人公ラジニ・ムルガンが仕事に就けずに苦労(?)してるのに対して、ヒロイン カールティカはさっさといろんな仕事について活躍してるのは高学歴&有能ゆえってことなんだろうけど、そんな彼女に近づくために彼女の家の前にチャイ屋を勝手に作って商売始めて軌道に乗らせるとか、都合良すぎだけど生きることにポジティブすぎるのが羨まし。
祖父の経済的支援付きで遊び暮せてるからってことではあるだろうけど、特にこれという戦略なしに青年実業家になっちゃうノリの軽すぎるお話の無責任さが、逆に清々しいですわ。ま、後半になると、そういった経済的成功によって家族の結びつきが捨てられているぞって主張が顔を出してくるわけですが。申し訳程度ながら最後に爆発するアクションシーンへの起伏の作り方が、カッコ良かったですワ!!
挿入歌 Jigiru Jigiru (ジギル・ジギル)
「RM」を一言で斬る!
・マドゥライで一番人気(金持ち的意味で)の車は、アウディなのね!!
2020.6.13.
2024.2.3.追記
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