Ramayya Vasthavayya 2013年 155分(159分、167分とも)
主演 NTR & サマンサ & シュルティ・ハーサン
監督/原案 ハリシュ・シャンカル・S
"俺は、あの子とその家族のために人生を捧げる覚悟ができている"
その日、ムサラッパドゥ・ナーガブーシャナムは娘の結婚式に出席したところに脅迫電話を受けて、急遽避難を開始する。しかし、警察に護送される途上で2人組の男に襲われて…!!
護衛の警官が1人また1人とやられていく中、なんとか逃げ延びたムサラッパドゥだったものの、連絡を受けた家族は戦々恐々して「誰か、この世に彼を守ってくれる人はいないのか」と嘆くばかり…。
同じ頃。
ハイデラバードの大学生ナンドゥは口八丁手八丁でその日を楽しく過ごす呑気な青年だったが、街中で出会った美女アカルシャに一目惚れして、強引に彼女を口説き落とそうとつきまとい始める。ナンドゥの連日に渡るつきまといに嫌気がさしたアカルシャは、たまらず父親であるムサラッパドゥに相談する…「わかった。なんとかしよう…娘をからかう奴がいるそうだ。ハイデラバードの部下に伝えてくれ…そいつの足か腕でも切り裂いてやれと」!!
挿入歌 Pandaga Chesko ([さあ、悪ノリで] この人生を楽しもう)
タイトルは、テルグ語(*1)で「ラーマはきっと来る」。
後半の重要人物の事を指してるタイトルながら、通常、「ラーマーヤナ」の主人公ラーマ生誕祭で歌われる有名なテルグ語民謡の題名でもある。副題「He Is Coming」が、タイトル下につけられている。
12年の「Gabbar Singh(ガッバル・シン)」の監督ハリシュ・シャンカル・Sの、「Gabbar Singh」に続く4本目の監督作。
ヒンディー語(*2)吹替版「Mar Mitenge 2」、マラヤーラム語(*3)吹替版「Sarvadhipan」も公開。映画は興行成績としてはいま一つだったそうだけど、ヒンディー語吹替版はTVにて大々的に放送されて好評を博したと言う。
冒頭に何者かに襲撃される被害者ムサラッパドゥ・ナーガブーシャナムが、前半のヒロインの父親となって主人公を「ちょっと痛めつけてやれ」と事も無げにに命じてたり、後半に明らかになる真実によって前半の主人公のやりすぎストーキング・ラブの意味が大きく変わってきたりと、冒頭・前半・後半での登場人物の印象や物語構造がひっくり返される華麗なドンデン返しが鮮やかなマサーラー映画。
やたらと、主人公ナンドゥの重々しい足取りを捉えるあおり空中カット(*4)が何度も出て来る、しつこいくらいの「うちらの考えたヒーローはカッコええでしょ!?」満載のサービス精神旺盛な作りは、ハリシュ・シャンカル・S監督の得意とするところ…なのかどうなのか。相変わらずDDLJ(*5)のパロディネタを始めたとした、過去のヒンディー語映画・テルグ語映画ネタも満載な点は「ホント、映画が好きなのねえ」と微笑ましく見てしまう。
そのノリノリかつ軽快な映画のテンポを支える、思わず身体がリズムを刻んでしまうダンスミュージックを作り上げたのが、テルグ語映画界・タミル語(*6)映画界で活躍する音楽家S(シヴァクマール / 父称名)・タマン(別名タマン・S。S・S・タマンとも。*7)。
1983年タミル・ナードゥ州都マドラス(現チェンナイ)の、テルグ系音楽家の家生まれ。祖父はテルグ語映画監督兼プロデューサー兼男優のガーンタサーラー・バララーマイヤー。父親は数々の映画音楽を手がけたドラマー ガーンタサーラー・シヴァ・クマールで、妹(姉?)に歌手のヤーミニー・ガーンタサーラーが、伯母に歌手B・ヴァサンタがいる音楽一家出身。
9才の頃から音楽活動を開始していたものの、13才時に父親を亡くして学校を中退。家計を助けるために音楽業界に現場入りし、映画音楽作曲家デュオのラージ=コティ(*8)、M・M・キーラヴァニなどのチームに参加して演奏&歌手を担当。音楽監督マニ・シャルマーを師事して映画音楽の作曲をこなしていく。
09年のテルグ語映画「Malli Malli(もう一度、もう1度)」で音楽監督デビューして、その前年にそのサントラが発売されて好評を博し、同年公開のタミル語映画「Sindhanai Sei(考えろ)」でタミル語映画にも音楽監督デビューしている。以降、この2つの映画界で活躍する中、2011年のテルグ語映画「Dookudu(攻撃)」でSIIMA(国際南インド映画賞)のテルグ語映画音楽監督賞を始め数々の映画賞を獲得。14年の「Power」でカンナダ語(*9)映画デビューもしていて、18年の「Simmba」でヒンディー語映画にも1曲参加している。
映画前半に集中しつつ後半にも出て来るコメディタッチなシークエンスに散見される、古典的な恋愛観のセクハラ上等な価値観や美醜を笑うネタ振りのやばさに「10年代でもそんなネタが許容されるものなのか…」とか思っていたラブコメの語り口が、過去の映画ネタ満載のオマージュシーンでありつつ、映画後半の悪役の犯した数々の残虐な所業とのシンクロ関係になっていく展開に「ああ、ハッキリと意図した伏線だったのか!」と驚かせる効果を生んでいく。映画をめぐる価値観の変化や、批評家や文化人から発せられる言説を逆手に取ったような伏線的ネタ振りなんて、マサーラー映画以外で見た事ないわ。お客の見たいものをそのまま提示する商売根性とともに、それをおちょくりまくって「面白いね!」って言わせてしまうその勢い……イイトオモイマス!!!
それにしても、相変わらず公権力が全く信用できないインドの恐ろしさよ。そんな現実の中でたくましーーーーく生き残る庶民ヒーローの口八丁の図太さよ。ヒロインたちの美しさも霞むその調子のいい態度から繰り出される体幹のしっかりしまくった動きの数々よ!!!
挿入歌 Kurrayeedu ([もし君が] 若い熱狂を抑える手綱なら)
「RV」を一言で斬る!
・ダンスミュージックで運動しているノリノリなヒロインの祖母の着信音が、カンナムスタイルって、そんだけインドで売れたのねえ…。
2023.3.3.
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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。フィジーの公用語の1つでもある。
*3 南インド ケーララ州、ラクシャディープ連邦直轄領の公用語。
*4 靴底もしっかり見える、透明足場をわざわざ歩かせる手間暇よ!。
*5 1995年のヒンディー語映画「勇者は花嫁を奪う(Dilwale Dulhania Le Jayenge)」の略称。
*6 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。スリランカとシンガポールの公用語の1つでもある。
*7 生誕名ガーンタサーラー・サイ・スリーニーヴァス・タマン。
*8 映画用BGM制作を請け負うトータクラ・ソーマラージュと、サルーリ・コテースワーラー・ラーオによる作曲家コンビ。
*9 南インド カルナータカ州の公用語。
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