インド映画夜話

Rabhasa 2014年 143分
主演 NTR(ナンダムリ・タラーカ・ラーマ・ラオ / 歌も兼任) & サマンタ
監督/脚本/台詞/原案 サントーシュ・スリーニーヴァス
"あなたの愛こそ真実。私がその中の真実を勝ち取ろう"




 長年、土地争いから対立してきたガンギ・レッディ家とペッディ・レッディ家は、25年前と同じく双方の家の子供たちを結婚させる事でその解決を図っていた。しかし、その結婚式当日に新婦の1人であるガンギ・レッディの娘プールヴィが行方をくらませてしまい…!!

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 その数日後、ハイデラバード市長選出馬のため闇市場で荒稼ぎするマフィアボス ダヌンジェイの元に、義兄ラーマチャンドライヤがやって来ていた。
 かつて、ラーマチャンドライヤの妹スリーヴァリとダヌンジェイが結婚してチッティという娘が生まれていたが、スリーヴァリの交通事故死によってラーマチャンドライヤ家が幼いチッティの養育をまかされていた。しかし、双方の家が土地開発の是非を巡って対立した事で「こんな家に娘を預けておけない」とダヌンジェイは娘を連れて村を後にしてしまい、以来、母代わりをしていたラーマチャンドライヤ家はチッティの帰りをずっと待ち続けている…。

 妻から「私たちの息子カールティクの結婚相手は、チッティしかいない」と懇願されたラーマチャンドライヤは、ダヌンジェイに婚約の申し出に赴いたのだが、ダヌンジェイはそんなラーマチャンドライヤ一行を田舎者と笑い侮蔑した上で追い返してしまう…。
 事の次第を聞いたカールティクは、意気消沈する両親に米国留学すると騙ってハイデラバードに単身赴き、分裂して行く一族をまとめる方法を模索。現在のチッティの様子を探る中で、ダヌンジェイ邸で悠々自適に暮らす大学生バーギャムこそかつてのチッティだと思い込んで彼女に近づいて行く。
 だが実は、バーギャムは邸の客でしかなく、彼女の親友インドゥこそダヌンジェイの実の娘…かつてのチッティその人だった…!!


挿入歌 Raakasi Raakasi (悪魔よ悪魔 [ゴムボールのように僕を投げてくれ])

*歌ってるのは、本作主演のJr. NTRその人!


 タイトルは、テルグ語(*1)で「混沌」の意とか。

 後に、ヒンディー語(*2)吹替版「The Super Khiladi 2」、タミル語(*3)吹替版「Ragalai」も公開。
 インドと同日公開で、英国、クウェートでも公開されたよう。

 ラーヤラシーマもの、と呼ばれるテルグ語映画界で人気の内陸部農村地域の土地争いから分裂していく大家族を、主人公が統合していく家族劇パターンな1本(*4)。
 結婚式に始まり結婚式に終わる、この手のマサーラー映画の定番要素を揃えて、主人公一族にヒロインの友人一族をも結束していく、その登場人物の多さ・その背景情報の膨大さを長台詞の応酬で次々処理していくそのスピード感は、ムリクリ感を感じる暇もないほどスピーディーであり爽快。一見関係なさそうな登場人物たちのそれぞれのコメディシーン、恋愛シーン、泣かせシーンを長々やっておきながら、最終的に1つのところへ話を収束させて大家族結集具合をエモーショナルに盛り上げていくんだから、よーやるわと言いたくなるくらいにはボリューミーに用意周到。

 本作を手がけたサントーシュ・スリーニーヴァス(・ロウトゥ)は、1980年アーンドラ・プラデーシュ州ヴィシャーカパトナム県ヴィシャーカパトナム生まれ。
 地元の学校に通ったのちカメラマンとして働き始め、2006年のテルグ語映画「Khatarnak(危険)」あたりから撮影監督を務めるようになる。2011年の「Kandireega(気難し屋)」で監督&脚本デビューして、年間最大ヒット記録を樹立。本作が2本目の監督作で、以降もテルグ語映画界で活躍中。

 前半のロマンスのお相手バーギャムを演じたのは、1992年カルナータカ州都バンガロール(現ベンガルール)生まれのプラニータ・スバーシュ(*5)。
 2010年のカンナダ語(*6)映画「Porki(悪党 *7)」で映画&主演デビューし、同年に「Em Pillo Em Pillado」と「Baava(義兄弟)」でテルグ語映画にもデビュー。翌2011年には「Udhayan(太陽)」でタミル語映画にもデビューして、以降この3言語映画界で活躍。2015年のタミル語映画「Massu Engira Masilamani(マシラマニまたの名をマッス)」でエディソン・アワード助演女優賞を獲得。その他いくつかの出演作で各映画賞の女優賞ノミネートされている。
 2020年には、米国のハーバード大学ケネディ行政大学院のプロフェッショナル&リーダーシップ開発学位を取得。21年には、結婚のかたわら「Hungama 2」でヒンディー語映画デビューもしている。

 猪のように(*8)猪突猛進する主人公カールティクの走る姿を何度も繰り返し見せられるカット繋ぎによって、演じているNTR Jr.の動きのキレ具合はなにもダンスだけでないんだなあ…と思えるほどに彼の動きに注目するカット割りが映画全編に渡って登場する。ま、肝心の物語やアクションは台詞劇で繋いでる感があって、話芸重視の画面作りにはなっておりますが。
 マフィアボスになって闇市場で大暴れするダヌンジェイに育てられたにしては、全然スレてない善良な都会人やってるヒロイン インドゥ演じるサマンサの可愛さは相変わらずながら、レッディ家のお家騒動から新婦の逃亡を手助けしている冒頭シーンが生きて来るのが映画後半の後半で、そのためにヒーロー&ヒロインとは直接関係ないレッディ家の屋敷内のドタバタに巻き込まれる可笑しさが増幅されているお話の段取りがまあ、詳細にこんがらがって描かれていますことよ。
 前半のヒロイン然としてでてくたバーギャムなんか、大学のシーン以外ではほぼ空気になってしまい、ダヌンジェイ邸にいるバーギャムがチッティでもレッディ家の逃げた新婦でもないとわかって来る頃には、ほぼ出番がなくなってる悲しさよ。

 映画後半は、男女の恋愛劇よりも大家族を率いる父親たちの頑なさとディスコミュニケーション具合のズレ具合の楽しさが強調され、それぞれの家族との断絶を主人公が遠回しに結束させてくシチュエーションコメディ劇になっていくのは、パターンながら舞台的楽しさ満載。鉄砲玉役の一族の若い男たちが、その時々の都合で思うように動けずに戸惑ったり、主人公と仲良く演技しないといけなくなる様は、彼らの態度の厳つさが厳ついほど微笑ましい。この手の大家族モノ映画の傑作「Brindavanam(ブリンダーヴァナム屋敷にて)」「あなたがいてこそ(Maryada Ramanna)」からの影響も結構ありそうなんで(*9)、その辺との比較もやってみたい感じですわ。



Dam Damaare (ダン・ダマーレ)





「Rabhasa」を一言で斬る!
・やっぱ、マサーラーヒーローは悪漢たちから『なんであの人は、3回起き上がったんでだ?』と言われるくらい、1アクションに3回パンが必須よネ!

2023.12.29.

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*1 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。
*2 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。フィジーの公用語の1つでもある。
*3 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。シンガポールとスリランカの公用語の1つでもある。
*4 あるいは民話由来の「Mayabazar(幻影饗宴劇)」もの?
*5 スバーシュは父称名。
*6 南インド カルナータカ州の公用語。
*7 06年のテルグ語映画「Pokiri」のリメイク作。
*8 ヤングタイガーのように?
*9 この2作、奇しくも同じ2010年公開作!