レース:裏切りの応酬 (Race) 2008年 149分
主演 アニル・カプール & サイーフ・アリ・カーン & アクシェエ・カンナ & ビバーシャ・バス & カトリーナ・カイフ & サミーラ・レッディ
監督 アッバス=ムスタン
"まだ…決着はついていない"
10月7日。あるビジネスマンが、白昼に交通事故で搬送された。
物語は、その1ヶ月前から始まる…。
その日、南アフリカのダーバンにあるスコッツビル競馬場にて、その年最大のレースが始まった。
このレースに自身の馬を出走させる馬主ランヴィール・シン(通称ロニー)は、弟ラジーヴと共に競走馬育成牧場スタリオンズを経営している。しかし、この日のレースの八百長試合に苦渋を舐めさせられた彼は、その復讐に動く中で、逆に罠にはめられ重傷を負わされてしまう…!!
奇跡的に回復したロニーは、弟ラジーヴが開催してくれた全快祝いの席上で、恋人の人気モデル ソフィアを見た弟が一目惚れしたのを知って、弟のためにわざとソフィアを振って2人をくっつけようと画策。だが、やがてラジーヴはソフィアのもう1つの顔を探り当て、そこから彼女にある計画を持ちかける…「兄が死ねば、父が用意した遺産の半分が手に入る。俺と、それを山分けしないか…!」。
挿入歌 Zara Zara Touch Me (ゆっくりゆっくりと触れて来て)
南アフリカのダーバンと、アラブ首長国連邦の1つドバイロケを敢行して大ヒットを飛ばしたアクションスリラー大作ヒンディー語(*1)映画。
お話は、1998年のハリウッド映画「グッバイ・ラバー(Goodbye Lover)」がアイディア元とか。後に、タミル語(*2)吹替版「Panthayam」、テルグ語(*3)吹替版「Race Telugu」も公開。
インドより1日早くクウェートで、インド本国と同日公開でデンマーク、アイルランド、パキスタンでも公開されたよう。
日本では、2020年にNetflixにて「レース:裏切りの応酬」のタイトルで配信。
大ヒットにのって2013年に続編となる「Race 2」が、18年にはリブート作となる「Race 3」も公開されている。
大規模外国ロケを敢行した、マルチスターによる全員腹黒悪役の騙し合い合戦な1本。
それぞれの初登場シーンでは、ありきたりのヒーロー&ヒロインかと思わせる主要登場人物達が、物語の進行によってその本性を現していく様は「全員、峰不二子か!」って感じでございますが、全員が全員シン兄弟の巨額な保険金目当てってのは分かりやすすぎというか、悪役描写が安直というか…。主要マルチスター全員悪役って映画がボリウッド初(ホンマ?)であった頃の匙加減ですかねえ(*4)。買収されていたジョッキーを目の色も変えずに殺すロニーの姿は、「ワォ」って感じではございました。
ヴィヴェーク主演の2010年公開作「プリンス(Prince)」、本作と同じサイーフ主演の2012年公開作「カクテル(Cocktail)」なんかでも出てきた南アフリカの風景は、本作では競馬場が中心というのもあってヨーロッパ的風景(イギリス風?)とそんなに変わらない感じではあるけれど、環インド洋世界としてインドとも関係が深そうな南アフリカの風光明媚な都市部の姿もそれはそれで新鮮。あえてアフリカ色を消してるとも言えるかもだけど、そんな事意識しないほどインドと南アフリカの交流が強い現れってことでもあるかいな(*5)。
シン兄弟を演じるサイーフとアクシェエのセレブっぷりや、中盤以降活躍するRD警部役のアニルの謎キャラ演技は微妙にとってつけた感じではあるものの、元からのチャラ男イメージを踏襲した普段の姿と、本性を現す凄味を魅せる眼力とのギャップを楽しませるための意図的演出ってやつでしょか。ヒロイン側は、それぞれにセクシー担当と言う感じが前面に出てくる芝居ばかり目立つ感じだったけど、裏切りに裏切りを重ねていくビパーシャ演じるソニアはわりとキャラがたってたので、彼女主役のスピンオフとかできてもよかったのにね、ってインパクトはありましたわ。
そのソニアを演じるビパーシャ・バスは、1979年ニューデリーのベンガル家庭生まれ。
父親は土木技師をしていて、母親は主婦。姉と妹が1人ずついるそうな。高校の頃に家族で西ベンガル州都コルカタに移住し、当初は医学を志すも後に医学から離れて商学位を取得。公認会計士を目指す中で、モデル兼女優のメヘル・ジェシア(*6)に見いだされて、96年のフォード主催ゴッドレジ・シントール・スーパーモデルコンテストに出場して優勝。モデル業を始めてマイアミ開催のフォードモデル・スーパーモデル・オブ・ジ・ワールドのインド代表を務めていたりする。
スーパーモデルコンテストの評判からいくつかの映画オファーが集まるも、当初は様々な事情によりオファーを断る事が続く中で、MVや短編映画出演を経て、01年のアッバス=ムスタン監督作となるヒンディー語映画「Ajnabee(見知らぬ人)」で長編映画&主役級デビューし、フィルムフェア新人女優賞を獲得。翌02年には6本の映画に出演し、「Takkari Donga」でテルグ語映画にもデビュー。以降、露出度の高いセクシー系女優として数々の映画に出演する人気女優となっていく。
イギリスの雑誌"イースタン・アイ"では、05年と07年に"アジアでもっともセクシーな女性"として紹介された他、男優ジョン・エイブラハムと共にフィジカル・フィットネス推進事業にも参加していた。
16年には、映画「Alone(アローン)」で共演していたモデル兼男優のカラン・シン・グローヴァーと結婚している。
サイーフ演じる主人公の命を狙うアル中の弟ラジーヴ・シンを演じるのは、1975年マハラーシュトラ州ボンベイ(現ムンバイ)生まれのアクシェエ・カンナ。
父親は、有名な男優兼政治家のヴィノード・カンナ。母親は、パールシー教徒(*7)のギータンジャリ・タレヤルカーン。兄にやはり男優のラフール・カンナがいる(*8)。
ムンバイの演技学校で特訓したのちに、父親主演の1997年のヒンディー語映画「Himalay Putra」で映画デビューして、スター・スクリーン期待の新人男優賞を獲得。同年公開作「Border(ボーダー)」で大きな評判を呼び、フォルムフェア新人男優賞を獲得し映画スターの仲間入りを果たし、以降もヒンディー語映画界で活躍して数々の映画賞を獲得している。
裏切りに次ぐ裏切りのどんでん返しの連続は小気味好く、話がドンドン予測不能な状態へと転がっていって楽しいテンポが維持されている映画なんだけど、なんかこう…00年代後半にしてはレトロな空気が匂うのは、アッバス=ムスタン映画の香りって事なんでしょうか。なんとなーく、主要登場人物が場面場面で疲れた顔してる感じもして、ミュージカルシーンのダンスもやや力を抜いた感が漂う。
そのせいなのかどうか、アニル演じるRD警部は登場シーンで必ず何か食べながら喋ってるし、女性陣はやたらとボディラインのはっきりした服着てるし、アクシャイ演じるラジーブのアル中具合も場面場面で変わってくるし…っていう点は、腹黒計略を隠すための演技だったくわ!? だったらスゴイ!!
挿入歌 Khwab Dekhe(Sexy Lady) (偽りの夢を見せて)
*台湾系米国人歌手ワン・リーホンの歌曲"竹林深處(In the Depths of the Bamboo Forest)"をパクった歌であることが判明して、訴訟をおこされた歌でございます。
受賞歴
2009 IIFA (International Indian Film Academy Awards) 悪役賞(アクシェエ・カンナ)・録音賞(レスリー・フェルナンデス)
2009 Screen Weekly Awards 悪役賞(アクシェエ・カンナ)・脚本賞(シーラーズ・アーメド)
「Race」を一言で斬る!
・インド人のイメージするアウトドアスポーツって、スポーツカーを崖っぷちに突き落とすことなのか…(そんなアホな)。
2022.7.16.
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