ラングーン (Rangoon) 2017年 154分
主演 カンガナー・ラナウト & シャーヒド・カプール & サイーフ・アリ・カーン
監督/製作/脚本/台詞/音楽 ヴィーシャル・バールドワージ
"愛と、戦争と、嘘と"
第2次世界大戦。インドは英国支配下の参戦の中、多くの抵抗運動を起こしていた。
ガンディーの非暴力主義と袂を分かった独立闘士チャンドラ・ボースは、敵の敵である日本と手を組みINA(インド国民軍)を結成。多くの血を流しながら、インド独立を勝ち取ろうと戦い続けている…。
時に1943年。インドとビルマの国境地帯で戦うINAは、デリーへ進軍するための物資補給をボンベイに打診する。
そのボンベイでは、戦争なぞどこ吹く風で英国軍資金提供の映画で大人気を勝ちとった女優ジュリアが、制作会社社長で元映画スターのルーシー(本名ルスタム・ビリモーリア)との不倫関係を暴露して世間を騒がせている真っ最中。
話題の女優を戦地の慰問ツアーにやろうと言う英国軍将校からの申し出に、ルーシーは早速ジュリアとのビルマ旅行を計画するが、不祥事を聞きつけた家族の計略で彼一人がボンベイに残ることに。突然のビルマ行きに怒るジュリアは、護衛につけられたインド人英国軍兵ジャマダール・ナワーブ・マリクと喧嘩ばかりの旅を始めることになる…。
プロモ映像 Mere Miyan Gaye England (愛する人はイギリスへ行った)
第2次世界大戦中のインドとビルマ国境地帯を舞台にした、ヒンディー語(*1)映画。
日本人兵士役に、俳優 川口覚を始め実際の日本人俳優が参加したことで(一部で)話題になっていた映画。
インド本国の他、クウェート、オーストラリア、カナダ、デンマーク、スペイン、イギリス、アイルランド、パキスタン、アメリカなどでも公開。日本では、2017年にNetflixにて日本語字幕版が配信。
作曲家兼映画監督ヴィーシャル・バールドワージの10作目となる監督作で、インパール作戦の裏でうごめくラブロマンスと陰謀劇の錯綜を描いて行くお話。なにはなくとも、過去のバールドワージ監督作にも通じる絵作りの美しさが光る1本。
43年当時の衣装風俗が、どこまで史実通りに再現できてるかはわかんないけども(*2)、いま画面で見てレトロ風味でありつつ綺麗にカッコ良く見えてくる画面作りが、なにをおいても映画を美しくしている。
凄惨な被害を出したインパール作戦を、意外とインド側は肯定的にとらえてるんだなあ…ってのは、この手の戦争ものインド映画見てていつも思うことだけど、本作前半で描かれている日本兵とインド人との交流具合なんかは、単純な善悪でない人と人の微妙な触れ合いの過程が描かれていて良きかな。もっと日本人が話に関わってくるかな、と思ってたもんで「まあ、こんなものか」って感じにも見えつつも、ちゃんと日本人をキャスティングし、ちゃんとした日本語台詞が使われ、当時の日印英の距離感をうまく表してくれた映画にしてくれるのはありがたや(*3)。
最前線でイギリス側として戦うインド人たち、そんなインド人を下に見るイギリス人たちの高慢さ、戦争と関係なく(*4)映画に従事する都会人たち、インド独立を目指して行動を起こす独立闘士たちの様々な策謀、イギリスを讃えながら影でインドの自由を夢見る人々…。
色々な人々の情念が、うまいこと伏線込みで物語を進行させるお話は、その絵作りも相まってどんどん引き込まれて行く映画で、どことなくセピア調や白黒映画風な色合いもあって古き良き映画空間を再現して行くよう。当時の映画制作の雰囲気もさらっと描写されるのもインド映画史的には見もの…かなあどうかなあ。
それよりも何よりも、日本人兵士ヒロミチ役の川口覚さんの歌声の美しさは、超必聴だよ!(*5) …でもあの後、ヒロミチに明るい未来が見えて来なそうなのが…ねえ(*6)。
歴史考証的な映像の説得力がどこまで正しいのかは、まあ、わりと寛大な目で見ないとな感じもするけれど、画面が綺麗なら満足してしまう身としては、全く無問題で楽しんでおりました……最後のオチまではね。
オチに至る伏線もある。話の筋もそれなりに繋がっている。なのに、そこだけなんかとってつけた感があって話がちゃんとオチてるように見えない所がどーも変な読後感を生んでしまうわけだけど、後半から顔を出すインド独立へ向けてのインド人たちの策謀劇の心境的複雑さが、そんな形で終わらされていいの? って気も…(*7)。
挿入歌 Bloody Hell (畜生め!!)
受賞歴
2018 Mirchi Music awards 歌曲プロデューサー(プログラミング&アレンジ)賞(クリントン・セレージョ & ヒテーシュ・ソーニク / Julia)・BGM賞(ヴィーシャル・バールドワージ)
「ラングーン」を一言で斬る!
・ビルマ(現ミャンマー)って、英語でBurmaって書いて『バルマ』みたいに発音するのネ。
2019.8.16.
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*1 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。
*2 ジュリアの映画用衣装の露出度とかは、アイディア元のフィアレス・ナディアの衣装からかなりアレンジしてるのはわかるけども。
*3 まあ、いつも通り白人は嫌な奴しかいないし、日本人も前半で出番が終わるしって感じではあるけれど。
*4 実際にはイギリス側からの資金を調達して。
*5 インド映画だから疑うわけではないですが、本人が歌ってるんだよね?
*6 過去のバールドワージ監督作にも見える滅びの美学的と言われれば、そう見たほうがいいのか、って感じではあるけれど。
*7 まあ、昨今のインド映画に見える過剰なヒンディズム万歳も、あれはあれでそれでいいの? って言いたくはなるけれど。
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