レモ (Remo) 2016年 146分 スーパースター ラジニカーントに憧れる少年時代を送ったシヴァは、今は場末の劇団俳優。 いつかは自分がスーパースターになる事を夢見つつも、母親以外の女性の前だとまともに台詞も出て来なくなるあがり症のため、なかなかチャンスを得られない。 そんなある日、有名な映画監督K・S・ラヴィクマールの新作オーディションに参加するも見向きもされず「ダメダメ。次回作は女装ナースでも出来るヤツを探してるんだ」と言う監督の軽口を受けて、友人の協力でホンモノの看護士に大変身してみせる! 一方で、そのオーディション会場で偶然見かけた美女カヴィヤに一目惚れして恋の矢を射たれたシヴァは、有頂天で彼女の周辺を調べ上げ結婚を決意するも、彼女にはすでに婚約者がいた…。 失意の中、看護士姿のオーディションで監督にアピールした帰り道、バスでナンパ男を撃退してくれた当のカヴィヤと仲良くなる事に成功したシヴァは、とっさに「レジーナ・モトワーニって言うの。仕事先を探してる途中なのよ」と看護士を演じることで自然に語れるようになったものの「じゃあ、縮めてレモって呼ぶわね。明日、私の職場に来なさいよ。私医者やってるから、勤務先の病院に紹介しとくね」と言われてしまう!! プロモ映像 Remo Nee Kadhalan 2012年の「Marina(マリナ・ビーチ)」で映画デビューした、コメディアン出身の若手男優シヴァカールティケーヤンが、看護士の女装で大活躍するラブコメ傑作タミル語(*1)映画登場! 本作は、バーギヤラージ・カンナンの監督デビュー作であり、特殊メイクアップに「ロード・オブ・ザ・リング」などで世界的に活躍しているニュージーランドのウェタ・ワークショップも参加していたりする。 日本では、2017年のSIFFJ(南インド映画祭)にて上映。2023年のシネ・リーブル池袋の「週末インド映画セレクション」でも英語字幕で上映される。 まーとにかく、お話も登場人物も音楽も映像効果も、全てが軽快、全てが可愛く、全てがカッコEEEEEーーーーー!! ラジニ映画を始め、数々の映画ネタを仕込みつつ、ラブコメ本編から一歩もズレる事なく、かつ場面場面が常に全力で面白楽しい。よく考えれば(考えなくてもw)、主人公の強烈なストーカーっぷりも、免許もないのに医療現場で働けるなんてムリクリ感も、医者や看護士がそんなヒマしてていいのかよとか、次々とツッコミを入れてしまえるほどのお話が続くのに、なんて心躍り、全登場人物を応援したくなり、一瞬も目を離せないほどワクワクしてしまえる映画である事よ! 現実にあんな男がいたら、思い切り犯罪行為の上に超ウザいヤツじゃん、って思えるのにも関わらず、映画見てる時も見た後も、なんて清々しくいじらしく、決める時に決めるカッコ良さも大ボケかますテンポのよさも、全部がわしづかみの魅力全開映画ですよ! そりゃ、観客に向けて天使の矢が飛んでくるってもんでネ!! この傑作映画の魅力の半分以上を作り上げる、主人公シヴァ&レモを演じるのは、スタンダップ・コメディアン出身のシヴァカールティケーヤン。 学生時代から舞台パフォーマーとしてさまざまなイベントに参加し、特にラジニカーントのものまね芸を得意としていたそう。友人の勧めからTVのコメディショーに応募して人気を獲得。以降、エンタメ系TV番組"スター・ヴィジャイ"でコメディアンや司会を務め、ダンスショーを始めトークショーやゲームショーなどでキャリアを伸ばし、自身のプロモーション映像でTV局から賞も獲得していたと言う。 友人製作の短編映画などへの出演を経て、映画監督パンディラージからのオファーを受けて12年の彼の監督作タミル語映画「Marina」で娯楽映画&主演デビューして好評を得、他に2本の映画にも出演。翌13年にも3本の映画に出演する中、主演作「Varuthapadatha Valibar Sangam(のんき若者協会)」で歌手デビューも果たし、ヴィジャイ・アワードのエンターテイメント・オブ・ジ・イヤーを獲得している。 本作は、長編映画としては12本目の出演作となる。 ヒロインのカヴィヤを演じるのは、1992年タミル・ナードゥ州チェンナイ生まれのキールティ・スレーシュ。 父親がマラヤーリー系(*2)映画プロデューサーのスレーシュ・クマール。母親もマラヤーリー系の女優兼プロデューサーのメーナカーと言う映画一家出身で、姉にVFXデザイナーとしてシャールク・カーンの映画プロダクション"Red Chillies"に務めるレーヴァティ・スレーシュがいる。 00年のマラヤーラム語(*3)映画「Pilots」で子役デビューし、主に父親のプロダクション製作のマラヤーラム語映画で活躍。長じてファッションデザインを修了してスコットランドとロンドンにデザイン留学していたと言う。 学生時代の13年に、マラヤーラム語映画「Geethaanjali(ギータンジャリ)」で主演デビューして数々の新人賞を獲得し、本格的に女優業をスタート。15年の「Idhu Enna Maayam(これはなんの魔法?)」でタミル語映画デビューして国際南インド映画賞の新人女優賞を受賞。翌16年には本作を含む3本のタミル語映画に出演した他、「Nenu.. Sailaja...(僕と…サイラージャーと…)」でテルグ語(*4)映画デビューして、やはりZee映画賞の新人賞を獲得している。 一瞬で男主人公が女性看護士に変身し、女性看護士から元の恋する男に変身する都合の良さも笑えるけど、その大柄な身体と肩幅に反してわりと誇張された女性らしさの立ち居振る舞いが、それでも嫌味に見えないんだからスゴい。 女装主人公の巻き起こす男女の垣根をぶっ壊すネタの数々は、まさにその手のお話の王道そのままではあるけれど、男側の友情劇と女側の友情劇の差異や等価具合とか、「女で生活するのって、なんて大変なんだ!」と言う心の叫びが現す、現代社会の女性たちが女性らしくある事への苦労もそれなりに描かれていく。 その上で描かれる事になる女性蔑視的な男たちをぶっ飛ばし、愛する人を守るために颯爽と出現するレモ&シヴァのワイヤーアクションばりの大立ち回りのなんとカッコ良く、頼もしく、美しく、仰々しく、そして楽しい事か! 王道をそのまま突っ走る物語も、その語り口や見せ方、テンポの変調や撮り方でこうも面白く新鮮に描けるのだと言う驚きもあって、映画ファンを名乗るなら見ておくべき傑作になっているんですよ!(*5) それにつけても、超元気な母子掛け合いが毎度続くタミルの家庭は、どの映画でもホント楽しそうだねえ…。 挿入歌 Tamilselvi (タミルの美女は)
「レモ」を一言で斬る! ・最初はメイクアップのスペシャリストを呼んでの大変身を、毎朝数分で、しかも自分一人でやってしまえるようになるシヴァの器用さが、一番トンデモねーw
2017.6.2. |
*1 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。 *2 マラヤーラム語を母語とするコミュニティ。 *3 南インド ケーララ州の公用語。 *4 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。 *5 そして、PKを見た人にも必見映画ダ!! |