ロイ (Roy) 2015年 147分 正体不明の盗賊が活躍する映画「ガンズ」シリーズの監督カビール・グレーワルの最新作「ガンズ3」の企画がスタートした。 世間の注目が集まる中、脚本を進めることの出来ないカビールは、父親やスタッフたちの助言・小言を受けながら焦燥に駆られる毎日。なんとか、盗賊主人公ロイの正体を描く出だしシーンだけを書き上げる事ができ、舞台となるマレーシアの現地ロケを開始する…。 マレーシアロケは、初日からスコールに見舞われ思うように行かない。 ホテルに引き返したカビールは、そこで同じように映画撮影のためマレーシアに来ていたロンドン在住のインド人映画監督アイーシャ・アーミルと出会い、彼女との交流で脚本に新たなインスピレーションを与えられていく。 映画は、それまで正体不明だった盗賊ロイの素顔を描き出し、マレーシアに住む富豪ティア・デーサーイの所有する絵を盗む依頼を受けたロイとティアの交流シーンから撮られていく。それは、カビールが自分とアイーシャの交流をモデルとした物語だった。 カビールが映画撮影に自分に似たヒロインを起用している事、彼の女性遍歴を知ったアイーシャは一端は彼を拒否しようとするも、それでも彼と恋に落ちていくのを止められない。しかし、アイーシャがロンドンへ帰る前夜、カビールと夜を共にする彼女は、ふとカビールが書いている脚本を読んでしまう… 挿入歌 Chittiyaan Kalaiyaan (私の綺麗な手首 [を貴方にあげる]) 音楽会社T-Series製作による、マレーシアロケのゆるやかな恋愛もの映画。助監督や撮影監督をしていたヴィクラムジート・シンが、T-Seriesに持ち込んだ脚本が好評を得て企画が動き出したと言う、ヴィクラムジート監督デビュー作となるヒンディー語(*1)映画。 日本では、2015年にIFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて上映。 なんともアンニュイな空気が映画全編隙間なくたれ込めた、ゆるやか〜な雰囲気の内容で、それがフランス映画のような退廃感を醸し出す。 スランプに行き詰まる映画監督と若き新鋭(ドキュメンタリー?)映画監督との恋。劇中劇で描かれる世界的盗賊と富豪の女性との恋。映画はこの2つの物語を並行して描きながら、徐々にその表裏が一体化して行く様を描いていく……んだけど、とにかく「映画監督って、そんなヒマしてていいの?」ってくらい、気だるいセレブのウジウジ姿をずっと見せられるので、インターバルの文字が出て来た時は「まだ続くのかよ!」ってズッコケたくらいですよ。ああ、見てる間のお尻の痛さったら(*2)。 もう内容もほぼ忘れてる「ラスト・タイクーン」って映画に、画面だけは似た匂いを感じたかなあ…くらいの印象の映画。 現実と虚構の交わり具合も「話に決着をつけるためにやりました」以上のものがなく、年代設定がいつなのか疑いたくなるようなレトロスタイルが「大人の恋愛劇ですよ〜」と主張するかのよう。とにもかくにも、美男美女がウジウジ悩む姿だけは全編余す所なく楽しめる映画。そもそもの話、カビールが作ってる映画がさっぱり面白そうに見えないのが、なんとも致命的で…。 それでも特筆すべきは、さすが音楽会社T-Series制作と言う挿入歌の素晴らしさ。一度聞けば耳に残る音楽群が「ああ、この映画で使われてた歌だったのネ」と驚くくらい。映画本編に合ってるんだか合ってないんだかは置いといて、そのキャッチーさ、ヒロイン演じるジャクリーンの美しさを見るのは楽しい(*3)。 まあ、そんな映画…ですかねえ。ハイ(気だるい感じで)。 挿入歌 Sooraj Dooba Hain (日は落ちた [友よ、酒を飲み、家路を忘れよう])
受賞歴
「ロイ」を一言で斬る! ・そう言う筆の使い方はせんだろう。あまつさえ、筆持ってる手で電話取るなんて!(油絵描いてるティアのシーンを見てw)
2016.6.25. |
*1 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。 *2 まあ、連続してインド映画4本映画館で見てたからだけども…。 *3 ティア役の時の大仰な化粧は、なんともって感じですけど。 |