インド映画夜話

ワダラの抗争 (Shootout at Wadala) 2013年 150分
主演 ジョン・エイブラハム & アニル・カプール & カングナー・ラーナーウト
監督/製作/脚本 サンジャイ・グプタ
"これは、ボンベイの街角から始まる…壮大なる犯罪の記録"






 1982年1月11日。
 前代未聞のボンベイ警察のマフィア一斉掃討作戦によって、マフィア抗争の中心にいた男…マニヤ・スルヴェが銃撃された。警察隊を指揮したACP アファーク・バーグランは、生死の境のマニヤを護送中、彼にここに至った経緯を語るよう尋問する…

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 70年代初頭、ボンベイの下町で法学を学んでいたマノハール・アルジュン・スルヴェ(=マニヤ・スルヴェ)は、義兄にハメられ、彼のやった殺人事件の全責任を背負わされて服役する事に。逮捕される現場にいた恋人ヴィディヤー・ジョーシーは、彼が連行されて行くのを見ているだけで、両親に聞かれても「知らない」を通すだけだった。

 弱肉強食の刑務所内で、身を守るために服役者中のNo.1に上りつめたマニヤは、ある日、彼の参謀役を買って出たムニールとともに脱獄を決行! 自分を陥れた義兄や警察への復讐を開始するために仲間を集め、ついにはボンベイの裏社会を牛耳るマフィア ハスカル兄弟をも敵に回しボンベイ・マフィアの実権を握ろうと動き出す。
 そんな中、全ボンベイ闇社会から注目されるマニヤは、偶然訪れたレストランで、オーナーをしているかつての恋人ヴィディヤーと再会してしまい…。


挿入歌 Aala Re Aala

*踊ってるのは、イギリス出身の女優兼歌手兼作詞家兼モデル兼TV司会者のソフィー・チョウドリー。


  フセイン・ザイディ著「Dongri to Dubai 」を原作とする、実際に起こったマフィア闘争とボンベイ警察の偽装銃撃事件(*1)を映像化したアンダーワールド・クライムアクション映画。
 監督を務めるサンジャイ・グプタが、脚本・原案を手掛けた2007年公開作「Shootout at Lokhandwala (ラカンドワーラー抗争)」の前日譚となる、ショットアウト・シリーズ第2作。
 日本では、2013年IFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて上映。

 最近、70年代ブームが続くボリウッドの流れに乗る、70年代末〜80年代初頭のノスタルジックなインドを舞台にした任侠もの映画。わりと史実に忠実と言う話だけど、任侠ものに欠かせない要素てんこもりで、お話そのものは結構パターンに沿っている感じ。その分見やすいは見やすいんだけど、延々と続くマフィア抗争下のギャング団たちの戦いとマッチョマンたちの眼力合戦が疲れるのなんのって…。

 テーマとなっているマニア・スルヴェ(本名マノハール・アルジュン・スルヴェ 1944生〜1982没)は、ムンバイ犯罪史の中でも有名なギャングとのこと。彼を銃撃したアファーク・バーグランや、敵対していたハスカル兄弟も(名前は違うけれど)実在しているそうな。
 画面も、2010年公開作「ダバング(Dabangg)」のような70年代レトロな作風で、特にアイテムソング(*2)3曲が3曲ともザ・70年代って舞台や衣裳や雰囲気に彩られている。ま、そもそもアイテムソングをソフィー・チョウドリー、サニー・リーオーン、プリヤンカ・チョープラの3人で出してくるってのがもうねw

 完全にジョン・エイブラハムの肉体美を見せつけるためにやってんだろ、って画面がこれでもかと出てくる映画だけど、あまりにマッチョすぎるのと画面が汗くさい感じで「うわあ」てなもんでスが、2013年度IFFJの上映に先立つナマステ・インディアで宣伝してた時は、インド人(+若干の日本人)に筋肉お化けなジョンの写真が大ウケしてましたゼ!(*3)

 主役マニヤを演じるジョン・エイブラハムは、キリスト教徒の父とパールシー(=ゾロアスター)教徒の母との間に生まれた、ムンバイ出身の映画俳優兼プロデューサー兼モデル。
 ミュージックビデオ出演など広告モデル業を経て2003年公開「Jism(身体)」で主演映画デビューし、フィルムフェア新人賞にノミネート。翌04年公開「Dhoom(騒音)」、06年公開「Zinda(生存)」でフィルムフェア悪役賞にノミネートされてキャリアを伸ばし、同じ06年公開作「Baabul(義父)」では助演男優賞にもノミネートされた。それなりにボリウッド業界の人気俳優ではあるんだけども、「Dostana(友情)」「ハウスフル2(Housefull 2)」とかのマルチスター映画だと映えるのに、自分一人の主役映画では、どーもパッとしない映画になってしまう人だなあ、と。
 本作では、70年代レトロなギャングスターに扮した事で、「ダバング(Dabangg)」のサルマン・カーン像を目指した感じにも見えるけども、果たしてこの路線で行く気なのかどうなのか? 個人的には、あまりにも筋肉お化けすぎるので、もうちょっとシュッとしてほしいシュッと。バスから身を乗り出しながら半裸で吠えるジョンって、もはやゴジラかガメラですがな。

 物語的にも、マニヤやハスカル兄弟、アファーク警部など色んな人の視点で話が進むため、油断してると話を追いがたくなっちゃいそうで。それぞれの史実に基づいた事件を効果的に並べようとしてるのはわかるけど、ただでさえ込み入った話を込み入った視点で語るからなぁ。まあ金と暴力の世界の栄枯盛衰を楽しむ分にはいいのかもだけど。結局、人間いつ殺し殺される側に行っちゃうかわかんないという恐怖とその克服を描いたものと言う事で?(いらん深読み)


挿入歌 Laila / Ek Din Ke Liye

*踊ってるのは、カナダ出身のインド=チベット人ハーフで、ポルノ女優兼モデル兼起業家のサニー・リーオーン。






「ワダラの抗争」を一言で斬る!
・もう完全に、ジョンが筋肉モンスターと化している…コワイヨゥ。

2014.6.13.

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*1 逮捕のための威嚇射撃に見せかけて、相手を意図的・合法的に射殺する作戦。
*2 セクシーなダンサー女優によるキャッチーなミュージカルシーン。
*3 本作のスチルではなかったけどw