ターバン魂 (Son of Sardaar) 2012年 141分 パンジャーブ州出身でロンドン在住の誇り高きシーク教徒ジャスウィンデル・ランダワー(通称ジャスィー)の所に、亡き父の遺産と言う土地の売却申請書が届く。彼自身には知らされていない過去だったが、かつて彼の家とサンドゥー家との血で血を洗う抗争の歴史の末にようやく父が手に入れた地所は、現在も故郷に残る禍根として語り継がれていたのだ。 ジャスィーは「さすがに何十年も前の事を持ち出すヤツはいないよ」と軽い気持ちで、手続きのための初帰郷を決意。喜び勇んでパンジャーブへやって来た彼は、駅で見つけた美女スクミート(通称スク)に一目惚れしてしまう! しかし、実はスクはランダワー家と対立するサンドゥー家頭首バルウィンデル・シン・サンドゥー(通称ビルー)の妹! サンドゥー家では、過去の因縁から「ランダワー家の生き残りの息子(=ジャスィー)を殺す」まで、ビルーは「非婚を貫く事」、弟のトニーは「アイスを口にしない事」、もう一人の弟ティトは「コーラを口にしない事」を誓い合っていた!! 地所の売却手続きのために、なにも知らずに街の名士ビルーの元に招かれたジャスィーは「どんな客でも精一杯もてなすべし!!」と言うスィクの教えをを家訓とするサンドゥー家に歓待されるものの、ビルーの婚約者で、誓いのためにずっと結婚できないでいるパンミの口から事の次第を聞いてしまい、自分は一歩外に出ればその時に殺されるだろう事に気づかされる!! 挿入歌 Son of Sardaar (我らシーク教徒) *一度聞くと、もう頭の中で自動再生しまくられて…w タイトルの「サルダールの息子」とは、シーク教徒をさす用語(*1)。通称SOS。 本作は2010年公開のテルグ語映画「Maryada Ramanna」のヒンディー語(+一部パンジャーブ語も混じる…らしい)版リメイクにあたる。この映画は、他に同名のカンナダ語リメイク作、ベンガル語リメイク作「Faande Poriya Boga Kaande Re」、タミル語リメイク作「Vallavanukku Pullum Aayudham」も作られている。 インドでのディワリ公開に際し、ヤシュラジ・フィルム製作の同時期公開作「命ある限り(Jab Tak Hai Jaan)」と公開館数を巡って争いが起き、数々の交渉の末に、主演アジャイ・デーヴガンがその扱いの差に訴訟を起こしたと言う。 日本では、2013年IFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて上映。 お話的には、「家から一歩でも外に出れば命がない!」と言う1アイディアをこれでもか! と煮詰めまくった、濃いい濃いい派手派手なシチュエーションコメディ・アクション。 しょっぱなから、意味もなく2頭の走る馬の上に直立しているアジャイとか、ロンドンを象徴するビッグベンの長針に怪しすぎる笑顔で仁王立ちするアジャイが登場すれば「ああ、これはアジャイが好き勝手に暴れまくるスタイル映画なのね」って感じ。そこさえ納得してしまえば、例え各エピソードが冗長でもくどくても許せてしまうドタバタ活劇が楽しくて楽しくて。 主役ジャスィーを演じて、コメディからアクションからダンスからなんでもござれなフルパワーな怪演を見せるのは、日本では「ミモラ(Hum Dil De Chuke Sanam)」で有名なアジャイ・デーヴガン(カージョルの夫と言った方がわかりやすいのかどうなのか)。 スタントアクション監督の父と映画プロデューサーの母の間に産まれた映画一族出身。子役から映画界入りして、1991年の「Phool Aur Kaante(花と棘)」で主演男優デビューしフィルムフェア新人賞を獲得。1998年の「Zakhm(侮辱)」でナショナル・フィルム・アワード主演男優賞を獲得して順調にキャリアを伸ばす。2008年には「U Me Aur Hum(貴方と私と、私たちと)」で監督デビューも果たし、夫婦で主演もしていたそうな。 サンドゥー家のボケた老婆ベベを演じた往年の大女優タヌージャは、アジャイの妻カージョルの母親(&大女優ヌータンの妹)だったりする! 公開当時御歳70才! 私にとっての初タヌージャ体験がこの映画だよ!! さらに、主役のアジャイやヒロインのソーナクシー、敵役のサンジャイ・ダットを脇に追いやる勢いの存在感を発揮したのが、ビルーの婚約者パンミ演じるジュヒー・チャウラー! お姉様、その圧倒的なチャキチャキオーラがステキ過ぎまするー!! そして、IFFJでは登場と同時に拍手が起こった、予告編にすら登場するあのゲスト出演スターの存在感ったらもうw そー言えば、アジャイ映画って「ミモラ」「Lajja(恥)」くらいしか見た事なかったなぁ…とか思って見ていたら、もーアホらしいくせにそのパワーに圧倒されまくり。やべぇ、アジャイ兄貴がカッコえくてどうしよう…!!!! たしかにアクションは一本調子とか、「外に出てはいけない!」はずがわりと簡単に何度もも外に出てたり、1つ1つのシークエンスが長過ぎて冗長な感は拭えず。見ているうちに何度か眠気に襲われかねないけど、それでも最後まで見てしまうのは派手派手は色彩と、スケールが大きいんだか小さいんだかよくわからん屋敷の内外で巻き起こる大人数のボケ&ツッコミ。なんと言っても、主役のアジャイとジュヒーと言う、2人のスターのコミカルな演技と表情を見るための映画です。これは見て損はなし! 特に、ヒメーシュ・レシャンミヤー担当の音楽がノリノリで印象的。IFFJでつい頭や腰が動いたり、フリを手真似でやっちまいまして「ノリノリでしたね」とかあとで言われてもーたわいな。ガハハ。 挿入歌 Tu Kamaal Di Kudi
「SOS」を一言で斬る! ・"さのっぶ さるだぁぁぁぁる!! アジャイのいない映画があるとすれば、それは、どれほどつまらない事か!!
受賞歴
2014.1.10. |
*1 サルダールとは、もともとインドイラン系起源の言葉で「権威を持つ者」「頭首」くらいの意味。かつて王族や貴族の呼称で使われ、現在は「チームリーダー」「総督」などの意で使われるそうな。特に「サルダールの息子」でシーク教徒をさす場合は「シークの成人男性」の意となる。 |