スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え! No.1 (Student of the Year) 2012年 146分 かつての聖テレーザ学園校長ヨーゲンドラ・ヴァシシュト(通称ヨギ)は臨終の床にあった。 彼が校長職にあった最後の1年に学園の話題の中心だった生徒たち、弁護士のスード(本名カイザード・ソーダボトルオープナーワーラー)、ターニャ・イスラーニ、スクールサッカーコーチのディンピー、ジート・クラーナー、シングルマザーのシュルティ・パータクは校長の見舞いのために10年ぶりに再会する。あの日、25年の伝統ある学園の大会、学園1の生徒を決める「スチューデント・オブ・ザ・イヤー」のために失った友情、夢、プライド…その数々を1つ1つ思い出しながら… *************** デヘラードゥーンにある世界有数の財閥高校聖テレーザ学園は、ブランドに身を固めた富裕層の子供たちと、奨学生制度で入学してくる中流層の学生たちが共に学ぶ学校。ド派手な学園生活や環境の中、そのトップに君臨するのが学園理事長の御曹司ロハン・ナンダと、その恋人で学園の女王シャナーヤー・シンハーニヤー! 誰もがこの二人に道を譲る学園生活にあって、スポーツ特待生として転校して来た中流階層出身のアビ(本名アビマニュ・シン)は、彼ら富裕層の生徒たちが決めるルールを無視し、実力で学園トップをひた走る。彼が狙うのは、米国大学進学への全経済援助を確約する「スチューデント・オブ・ザ・イヤー」! 彼を目の敵にしていたロハンやその取り巻きたち、チアリーダーのターニャとロハンの仲の良さに怒り心頭なシャナーヤーは、この転校生と様々な衝突を繰り返すうち、逆に徐々に友情を芽生えさせて行く。…しかし、彼ら彼女らそれぞれの家庭事情と将来の夢、本格的に始まった「スチューデント・オブ・ザ・イヤー」の熾烈な争いは、そんな学園生活に次々と亀裂を作って行くことに……。 挿入歌 Vele (自由を!) ボリウッド(*1)のヒットメーカー カラン・ジョーハル久々の監督作。略称SOTY。 前作「マイ・ネーム・イズ・ハーン(My Name Is Khan)」撮影中に「次は、完全娯楽作を撮りたいね」とか言ってたカラン監督が、その現場で助監督を務めていたシッダールト・マルホートラとヴァルン・ダーワンを抜擢し、新たにオーディションを勝ち抜いたやはり新人女優のアーリア・バットを加えた、無名の若手俳優を主演に起用して大ヒットさせた青春群像劇。 日本では2014年に一般公開!! 「恋する輪廻」に続いて、東京では毎週のマサラ上映も盛り上がっておりました(*2)。 ゴージャスななんでもありの全寮制学園生活に、その学園を代表する美男美女たちが繰り広げる恋に友情に将来への漠然とした不安に衝突に……と言う、なんとも少女マンガ的なド派手なラブコメ映画大作。 まあ、所詮映画なんだから、十代の高校生がフェラーリ乗り回してたり、ノーヘルで大型バイク乗って登校したり(*3)、自家用ジェットで家族や同級生の家の海外披露宴に行って来たり、よくわかんない判定基準の学生No.1選手権大会で青春しててもいいんだけど…レギュラー8名以外の学生が完全に蚊帳の外だったり、「スチューデント・オブ・ザ・イヤー」のルール自体が「?」が続きかねない描写が続いたりと、多少話を盛り上げるための誇張具合にチグハグな所がある。これがマンガやアニメのような絵の世界だったら、あるいはすんなり受け入れられるかもしれないけども…(*4)。 カラン監督のハリウッドへの傾倒具合はあいかわらず濃厚だけど、前作「マイ・ネーム・イズ・ハーン」やその前の「さよならは言わないで(Kabhi Alvida Naa Kehna)」に比べると、よりインド映画的なものへの模索が強く、初監督作「何かが起きている(Kuch Kuch Hota Hai)」へ回帰しようとしてるようにも見える? と言うか、新しい映画への模索と今までの伝統的インドの価値観の間で、アンビバレンツを起こしてる姿がそのままフィルムに反映してるようにも見えてきたり? もはや持ちネタなのかなんなのか、腐女子注目的な描写も色々入って来たり、無駄に主役アビとロハンの筋肉美を強調したねっとりとした撮影カットを持って来たりってのはあるけど、基本ギャグ調だったり過剰だったりで、映画のゴージャス描写を盛り上げる1要素(&重要要素)みたいな感じ。男同士の友情の描き方なんか、ゾーヤー・アクタル監督作「人生は一度きり(Zindagi Na Milegi Dobara)」で出てくる男たちのアホな会話劇の現実的リアルさに比べると、こちらは華麗でマンガ的。そっち方面の描写にも見えるかもねみたいな嘘っぽいノリも多く、10年後の登場人物たちがそれぞれに画面に語りかけながら話を進行させる手法とも相まって、舞台演劇的リアルさで統制された世界を描き出す。登場人物たちの思い出補正がかかった映像と思えば、それはそれで納得できる、なんとも歌舞いた映画ですわ。 主役アビを演じるシッダールト・マルホートラは、デリー出身の元モデルでこれが映画デビュー作。 同じく映画デビュー作となるロハン役のヴァルン・ダーワンは、有名な映画監督ダヴィッド・ダーワンの息子で、やはり映画監督のローヒト・ダーワンの弟。親戚には役者のアニル・ダーワンやシッダールト・ダーワンもいる。 同じく映画デビュー作となるアーリア・バットは、映画監督マヘーシュ・バットと女優ソニー・ラーズダーンの娘で、映画男優イムラーン・ハーシュミーの従姉妹。子役として1999年作「Sangharsh(あがき)」でカメオ出演した後、本格的な映画俳優として本作のヒロインに抜擢された。無名の俳優を使った大作映画でも大ヒットさせる事が出来る…と言うカラン監督の自信のほどが見えるキャスティングですわ。 チアリーダーのターニャ・イスラーニ役を演じたのは、カラン監督の初監督作「何かが起きている(Kuch Kuch Hota Hai)」で主役シャールクの娘役をやっていた子役出身のサナ・サイード! 本格的な映画デビューは本作からとなる(全然イメージが変わってますわ!)。 スード役のカヨゼ・イラーニー(またはケイヨーズ・イラーニー)は、名優ボーマン・イラーニー(*5)の息子。2012年の「Ek Main Aur Ekk Tu(1つは私に、もう1つを貴方に)」の助監督を経て本作で役者デビュー。2014年公開作「Youngistaan(若者たちの国)」のロケで、前年の2013年に来日していたりする。 シュルティ・パータク役のマーンシー・ラッチは、ミュージカル演劇出身の役者で、2011年作「Mujhse Fraaandship Karoge」の端役で映画デビュー。本作が2本目の出演作となる。役的には、なんとなく「何かが起きている」のアンジェリに近い印象。名前がKから始まってれば、もっと扱いが大きかったなんて事があったり…しないよね監督! 挿入歌 The Disco Song (ディスコソング) *ネタバレ注意。ド派手な校内ダンスコンテスト・ミュージカル・シーン。 審査員役には、「恋する輪廻」監督のファラー・カーンと、「ラガーン」「闇の帝王ドン」「命ある限り」等で振付を担当しているヴァイバヴィー・メールチャント。特別出演で、カラン監督作の常連主演女優カージョルが出演している。
受賞歴
「スチューデント・オブ・ザ・イヤー」を一言で斬る! ・あいかわらず、スポーツになると描き方がルーズだよぅ、カラン監督。
2014.5.13. |
*1 北インド圏の言語ヒンディー語の娯楽映画界。 *2 一回、スチューデント・オブ・ザ・イヤー賞とっちゃって、お兄さんビックリしたよ(o´・ω・)(・ω・`o)ネェー *3 どこが中流家庭育ちなんだテメー!! いちおーシーク教徒はヘルメット着用しなくていいらしいけど…。 *4 見てる間に「あしたへフリーキック」ってアニメを思い出した人がいれば、是非お友達になりターイ! *5 本作でも、サッカー試合の相手校の校長役で出演。 |