Simhadri 2003年 170分
主演 Jr. NTR & ブーミカー・チャウラー & アンキター
監督/脚本 S・S・ラージャマウリ
"彼は資金もなく、財産も持たず、権力もない"
"そんな彼の武器がなにか、ご存知ですか? …それは、人々の幸福ですよ"
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サイクロンによる洪水被害が発生する中、高台の寺院へ避難しようとして拒否された被差別層を救い出すラーム・ブーパル・ヴァルマーに助けられた孤児シンハードリは、被差別層を嫌いラームを毒殺しようとした僧侶たちの陰謀を命をかけて止めたことから、ラーム夫妻の養子に迎えられた。
それから12年。
ヴィシャーカパトナムのお屋敷で幸福に成長したシンハードリは、ラームの孫娘カストゥリと恋人同士になる一方で、精神障害を持つ孤児インドゥ(本名インディラ)の世話も買って出て、彼女からの信頼を得ていたものの彼女の起こす騒動に振り回されてもいるこの頃。
そんな中、父のように尊敬するラームを罵倒する男に怒るシンハードリは、ラームのいない場所でその男を徹底的にぶちのめして入院させてしまう! この男を診断する担当医は、その傷跡や症状から過去にケーララ州で経験した信じられない事件を想起する…「同じだ…同じ人物にやられている…。シンガマライ…たった1人で、25人も殺したあの男に…!!」
挿入歌 Cheema Cheema (蟻よ蟻 [お前は恋路の邪魔ものだ])
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タイトルは主人公の名前(*1)。
その語義は、ヴィシュヌ神の化身である人獅子ナラシンハの異名であり、そのナラシンハを祀るヴィシャーカパトナムにあるシンハードリ寺院(*2)のこと…かしらん(*3)。
1996年と2014年の同名カンナダ語(*4)映画とは別物、のはず。
テルグ語(*5)映画界の名匠S・S・ラージャマウリ監督の、監督デビュー作から再度Jr. NTRを主役に迎えた2本目の監督作。175日間のロングランヒットとなり、その時点でのテルグ語映画最高売上を記録した映画となった。
04年にはタミル語(*6)リメイク作「Gajendra(ガージェンドラ)」が公開。09年には本作と同名のマラヤーラム語(*7)吹替版、ヒンディー語(*8)吹替版「Yamraaj: Ek Faulad」が、12年にはカンナダ語リメイク作「Kanteerava(カンティーラヴァ)」も公開されている。
日本では、2023年にNTR Jr.生誕企画として東京で、さらに埼玉県川口市でも英語字幕版が上映。
後の05年公開のJr. NTR主演作「Narasimhudu(ナラシンハの怒り)」と同じように、ナラシンハ神話をモチーフにしつつ前半と後半で大きく話が変わる重厚な2部構成マサーラー映画な一本。
前半は、ヴィシャーカパトナムを舞台に疑似家族の中で色々に立ち回る主人公シンハードリの家族ドラマロマンスが中心。様々に撒かれた伏線が動き出すインターミッション前後から話が急展開し、後半はケーララ州ティルヴァナンタプラムを舞台にした回想シーンによる世直しギャング抗争ものへと変化する作りなんかは、後のラージャマウリ監督作との共通点とかも見えてくるストーリーテリングである感じ。
まあとにかく、徹底的な勧善懲悪であり、悪を征するためには徹底的に悪をボコり倒す、暴力への躊躇とか慈悲とかが一切ない血みどろ世直し仕置人みたいなアクションの振り切れ方がハンパなくて凄まじい。街中で婦女暴行・性犯罪が起こっても誰も止めることができない世紀末都市のような舞台にあって、たった1人で火鉢棒や(都合よく現れる)装飾斧を持って犯罪者を一網打尽にするシンハードリの暴れっぷりは、スカッとしちゃいかんなあ…とか思ってしまえるほどには凄惨な絵面にもかかわらず…めちゃくちゃスカッとしてしまいますことよ!! 社会悪はもうそのくらい再起不能にしてしまっておくれ、我らがJr. NTR!!!!!!
人外のパワーを持つシンハードリ演じるJr. NTRが、前半と後半で別々のヒロイン相手にロマンスを繰り広げるのが華やかであると同時に「それはそれでいいの?」って感じでもあるけれど、そんな男1女2の三角関係を急にクリシュナ神話的にまとめてしまうラストのオチもムリクリながらほっこりはんインド的でステキ。うん。
幼児退行して騒動を巻き起こしながら、暴力事件をきっかけに元に戻る後半のヒロインインドゥ演じるブーミカー・チャウラーは相変わらずお綺麗だし、その2面性なキャラづくりで魅力度さらにアップなのが素晴らしかなんだけど、その分、前半のヒロイン カストゥリ演じるアンキターの影が薄くなるのがなんともはや。その役回りの差は、キャリアの差でつけられたんですかねえ…。
そのアンキター(・ジャヴェーリ)は、マハラーシュトラ州ムンバイ生まれの女優。親戚に、映画プロデューサーのミラン・ジャヴェーリがいる。
元々子役としてCMで活躍していた人で、ソフトドリンク ラスナのCMでブレイクしたことから"ラスナ・ベイビー"の名前で知られていた。
02年のテルグ語映画「Lahiri Lahiri Lahirilo」で映画デビューし、本作の数ヶ月前公開のカンナダ語映画「Sriram」でカンナダ語映画&主役デビュー。05年には「London(ロンドン)」と「Thaka Thimi Tha」でタミル語映画デビューしていて、以降、テルグ語圏を中心に活躍しつつ、米国のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のメディア&エンターテイメント研究公開講座を修了していくつかのハリウッド映画企画に参加。米国の短編映画やCMにも出演して女優兼プロデューサーとして活躍している。
なにはなくとも、主役デビュー間もないJr. NTR(*9)の若々しさ、エネルギッシュさが爆発していて、流し目一つ、アクションやダンスの脚さばきや手さばき、その啖呵のパワフルさが全てプラス方向へ大爆発している映画になっていて、その魅力を存分に発揮し見せつけてくれる余裕も感じるエンタメ性が最高。
ケーララ州の人々が、そんなに世直し仕置人となったテルグ人主人公に心酔して応援したり加勢したりするもんかね、って疑問なんか目の端から放り出したくなるほどには「俺の魅力にひれ伏せさせてやるぜ!」ってパワー全開さが見えるよう。わりと太ましい体つきでも、よくあんなに俊敏にキレッキレで動けるよなあ…。その目の表情芝居も多彩でスンバラし。
挿入歌 Ammaina Naannaina (もし母さんや父さんや [そんな人たちがいたのなら] )
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「Simhadri」を一言で斬る!
・本作に限らず、悪人を逆さまに宙吊りにするシーンがよく出てくるけど、演じてる方は大変だろうなあ…と色々心配になりますことよ。
2020.1.1.
2023.5.8.追記
2023.6.18.追記
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