社会派映画「アリーガル(Aligarh)」を手がけたハンサル・メータ監督の、12作目となる監督作。
映画全編がアメリカを舞台とし、そこで細々とながら普通の中流家庭の一般人として暮らす主人公が、父親との軋轢や離婚経験などを抱えながらも自分の人生を堅実に積み上げていこうとしながら、その計画がふとした事から狂い始め銀行強盗に走らざるを得なくなる様を描いていく……んですが、主人公の性格や映画全体の雰囲気があっけらかんとしているんで、シリアスな不幸もの映画でも「俺たちに明日はない(Bonnie and Clyde)」みたいなニューシネマ的な映画にもならずに、なんとも飄々としたトボケた雰囲気の日常劇になっている(*2)。どんな危険な状況や不満・不安に襲われそうにになっても、それでもなお事態を打開しようと(微妙に斜め上に)奔走する女性の強さを描いた映画、と評することもできるのか…そうまとめるのもなんか違う感じのする映画なのか…って不思議な映画ですわあ。
エンディング直前の「その後はこうなりました」と言うクレジットによるトボけたオチに「おい!」とツッコみたくなるのも本作の魅力。
前半のラスベガスで豪遊する主人公のあたりは、同じくカンガナー主演&台詞担当作「クイーン(Queen)」を彷彿とさせる部分もあるけれど、あちらより都会慣れしてる本作のプラフの、対人関係のスレ方もリアルというか見事に中流育ちっぽいというか。ラスベガスに集まるセレブたちの真似して得意になってる危うさなんかも、しっかりきっちり器用に演じられてしまうカンガナーの演技力も、後半の必死な強盗ぶりの可笑しさ・可愛らしさと相待って「よーやるわ」と感心してしまいますことよ。「クイーン」の他、カンガナー自身が監督も務めた「マニカルニカ(Manikarnika: The Queen of Jhansi)」共々、自身の売りどころをハッキリ認識して受けて立ってるオーラがバシバシ漂ってくるのも良きかな。