Singam 2010年 159分 タミル・ナードゥ州チェンナイを中心に、要人恐喝で裏社会を牛耳るマフィアのドン マイィル・ヴァーガナムに逆らえる者は一人もいない。その影響力は、タミル全土を屈服させている…。 州南部トゥーットゥックディ県ナルウル村のドゥライシンガム警部補(シンガム=ライオンの意)は、その正義感と有言実行の行動力、百人力の格闘術、卓越した推理力によって村人たちの人気者になっていた。今日も、ダメダメな同僚エリマライたちと共に強盗事件を解決しては、暴漢たちを粉砕する。 ある夜、虎の着ぐるみで村をパニックに落としていた女性を捕まえて勢いで平手打ちしてしまったシンガムは、後日寺院にお参りに来ていたその女性…悪戯好きなチェンナイの富豪の娘カヴィヤ・マハリンガムに謝罪する。カヴィヤは意外に正直な彼の態度に、一転して惹かれていくのだった…。 その日、シンガムによって保釈署名を無効にされたマイィルが、計画を台無しにされたと部下と共に村に乗り込んでくるが、シンガムを守ろうと決起した村人たちに恐れをなし、復讐を誓いつつ一端は村を後にする。 同じ頃、カヴィヤのプロポーズを承諾したシンガムの裏で、2人の父親の喧嘩が始まりカヴィヤの父は「警察官ごときに娘はやらん」と猛反発。一方でシンガムにはチェンナイへの栄転令が下り、さっそくチェンナイにて警視正待遇で迎えられるものの、突然やって来たマイィルは彼に宣言する。 「驚いたか!? 俺の一声でお前をこの地位におびき寄せた。ここはお前の村とは違う。いいか!? こここそ俺の国。俺の思うままにお前を動かす、俺様の国なんだ!!」 挿入歌 Naane Indhiran (オレはインドラ [神々の中の王]) 2010年に大ヒットしたタミル語(*1)ポリスアクション。 公開後、テルグ語(*2)吹替版「Yamudu」、ヒンディー語(*3)吹替版「The Fighterman Singham」も公開。さらに、翌11年にはカンナダ語(*4)リメイク作「Kempe Gowda(警部ケンペ・ゴウダー)」、ヒンディー語リメイク作「Singham(ライオン)」、ベンガル語(*5)リメイク作「Shotru」も公開。 13年には、続編「Singam II」も公開されて大ヒット。さらなる続編「Singam III」の企画も始動しているそうな。 インドに何人いるんだって言う、インド1の熱血暴走警官とインド1のマフィアのドンとの対決を軸に、ラブコメから家族ものからドタバタコメディから全網羅された、いつも通りのスター映画暴走アクションの一本。なにはなくとも、主人公シンガム演じるスーリヤの縦横無尽な活躍や喜怒哀楽のスットボケ表情の数々を楽しむべき150%スーリヤ推し映画。登場シーンで、いきなり自動車の中にいるチンピラ2人を屋根ごとふっ飛ばして現れるスーリヤは、最高ですゼお客はん! その主役スーリヤ(*6)は、1975年タミル・ナードゥ州コーヤンブットゥール生まれ。父親は60年代からタミル語映画界で活躍する映画俳優シヴァクマール。弟も映画俳優のカルティ。 当初は服飾工場で働いていたそうだけど、知り合いの映画監督から請われ続けて97年に「Nerrukku Ner(面と向かって)」で映画デビュー。その時から、高名な父の名前とダブるのを避けるため、役名をもじって芸名にしようとプロデューサーのマニ・ラトナムに提案されて"スーリヤ"としての活動を開始する。 最初こそヒット作に恵まれなかったものの、映画俳優ラグヴァランや数々の映画監督からの指導により、01年の「Nandha(ナンダ)」でタミル・ナードゥ州映画賞の主演男優賞を獲得。03年の「Kaakha Kaakha(守護)」でITFA(国際タミル映画賞)主演男優賞を獲得したのを始め今までに数々の映画賞を授与されるトップスターに成長。06年に女優ジョーティカと結婚。 映画界での活躍の他、ペプシを始めとしたブランド・アンバサダーに多数就任し、08年に設立したアガラム財団で幼児教育の発展に対する支援事業を展開。教育改革の他、スリランカ在住のタミル人支援、野生虎の保護、薬物中毒患者支援等でも活躍。13年には南インド最高の男性代表としてエジソン賞を授与された他、政界参加を熱望する声も上がってるとか(*7)。 本作と同じ10年には、他にヒンディー語映画「Rakta Charitra(血塗られた行為)」に主演(の1人で出演)、タミル語映画「Manmadhan Ambu(キューピットの矢)」で本人役でゲスト出演している。 監督を務めたハリ(・ゴーパラクリシュナン・ナーダル)は、トゥーットゥックディ県ナザレス近郊のカッチャナ・ヴィライ出身の映画監督。父親は壷売り商人だったそうな。 学位取得後、93年に助監督としてラジニカーント主演&製作&脚本映画「Valli」で映画界入り。02年に「Thamizh」で監督デビュー。翌03年の2本目の監督作「Saamy」が大ヒットして一躍有名なマサーラー・アクション監督となる。本作が10本目の監督作となる。 前半は監督の故郷トゥーットゥックディ県の村々を舞台にした牧歌的な色合いの濃い、いつものアクションラブコメ。舞台を大都会チェンナイに移しての後半は、「日本のヒーローものが無条件に東京を舞台にするのと同じように、タミル映画もなんだかんだ言ってチェンナイが舞台になるのネ」とか思っていたら、マイィルの啖呵から始める街を上げてのシンガムいじめの陰湿さが妙にリアルだったり変に派手だったりと変則的なアクションものへと展開していき、全ての行動基準を早口な台詞で説明するカットのスピーディーさの加速具合と相まって、不思議な迫力を醸し出してくれる。それにしても「州知事の娘を誘拐してやる!」「そんな事はさせない! 我々が全力で阻止する!!」「もう誘拐しているんだよ! 隣の州知事の娘をな!!」ってやり取りは、意外性の発揮具合が斜め上に展開して「そっちかよ! 小学生の口喧嘩かw」ってな感じでしたなw アヌーシュカ演じるヒロイン カヴィヤが綺麗所以外の活躍がなかったのが残念と言えば残念なんだけど、チンピラを一発で気絶させるシンガムの平手打ちをマトモに受けて平気な顔してるカヴィヤが、実は一番ツオいのかもしれない。うん。 挿入歌 Kadhal Vandhale (愛のために鐘は鳴る)
受賞歴
「Singam」を一言で斬る! ・初めて「あ、この髭面カッコいい」と思える髭主人公でしたナ!!
2015.10.3. |
*1 南インド タミル・ナードゥ州の公用語。 *2 南インド アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナー州の公用語。 *3 インドの連邦公用語。主に北インド圏の言語。 *4 南インド カルナータカ州の公用語。 *5 北東インド 西ベンガル州とトリプラ州の公用語。 *6 本名サラヴァナン・シヴァクマール。 *7 本人は、その意志はないと言ってるそうだけど。 |