Sivakasi 2005年 175分
主演 ヴィジャイ & アシン & プラカーシュ・ラージ
監督/脚本/台詞/原案/作詞/カメオ出演 ペーララス
"爆風を、起こせ!"
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*これは、ファンメイド・トレイラー…かしらん?
チェンナイの下町の人気者シヴァカーシは、普段は溶接工として働きつつ、商店街の仲間に何かあれば颯爽と登場して問題を解決する頼れる男。
ある日、その商店街で痴漢と喧嘩し始めた宝石商の娘ヘーマは、騒ぎを聞きつけてやってきたシヴァカーシと知り合った。2人で痴漢を撃退した後、ヘーマの方の高飛車な態度も問題だと言い出すシヴァカーシに怒る彼女は、それからはなにかと食ってかかって彼をおちょくりながら、徐々にシヴァカーシとの距離を縮めていく。
ついに愛し合うようになった2人はへーマの家の了承を得て婚約することになるが、孤児であるシヴァカーシの貧しい暮らしを心配するヘーマの兄たちの態度が彼を激怒させてしまい、仲介に入ったヘーマは「義理とはいえあなたの兄になる人なんだから」となんとか彼を説得しようとするも、そんな彼女にシヴァカーシは答える…「俺は孤児じゃない。両親も、兄妹もいる。15年間も会ってないけど…。俺は、子供の頃に縁を切られたままなんだ!」
挿入歌 Vada Vada Vada Vada (出てこいよ)
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タイトルは主人公の名前ながら、その由来は、タミル・ナードゥ州で花火や爆竹の生産拠点として有名な都市名になる。
同年1月公開のヴィジャイ主演作「Thirupaachi」で監督デビューしたペーララスの、2本目となるマサーラー・タミル語(*1)映画(本作は、11月公開)。
2007年には、テルグ語(*2)リメイク作「Vijayadasami(勝利のダシャーラー祭)」も公開。
花火生産で有名な街の名前を背負う主人公よろしく、バーナーの火花でシャッターを人型にくり抜いて登場する(*3)主人公の爆走アクションの傑作!
前半は、高飛車なお嬢様を相手にしたラブコメが中心で、チェンナイの下町を舞台に女性の社会進出によるさまざまなセクハラ疑惑に翻弄される男側の嘆きの声が聞こえてきそうな自虐的ネタも多数登場するお気楽展開。
痴漢被害にあったヒロインに「そんな露出度の高い服を着てるせいだ!」とか言い出す主人公に「え。この年代のタミルはまだこんなおっさんめいたセリフが許されんの?」とか思ったら、しっかりそう言う男側の論理に対して怒るヒロインの報復が続いて行くし、「ラブレターを1通送った」罪で婦警たちにボコボコに鉄拳制裁加えられる学生が出てきたりと女性側の権利拡大をグチりつつ受け入れて行く男側のポリコレ意識の変化がちゃんとお話を盛り上げて行くのもやたら楽し…い?(*4)。
そこで交わされる、ヒロインとの「あんたのせいで双子の妹が入院してしまった!」と言う嘘の応酬がいちいち可愛くもあり、しかもちゃんと後半の展開への伏線となって行くのがニクい。
同年公開の「Ghajini(ガジニー)」で一躍ボリウッド(*5)にも活躍の場を広げる"クイーン・オブ・コリウッド"アシン演じるヒロインの美貌も存在感も、パワフルでエネルギッシュ。映画後半にグッと出番が減るとはいえ、しっかりヒロイン力をアピールする画面への圧は最後まで健在でさすが。もっとこう言う、元気なアシンがドカドカ活躍する映画が見たいもんじゃき。
後半は農村を舞台に、孤児と思われた主人公の家族の危機に対して、正体を隠して家族の再生に奔走する家族ドラマに変化。
都市部に比して、人権なる言葉すら意識されない田舎の女性蔑視・貧富の圧倒的格差のひどさを描いて行き、お気楽路線と思われた前半のラブコメ世界との対比構造展開も見もの。悪役ウダヤッパ演じるプラカーシュ・ラージのいつも通りのヤクザ演技もノリノリだし、善悪それぞれの家族観のあり方、地元社会へのコミットの仕方(政治観のあり方?)と言うキャラ同士での対立構造も目が離せず、グイグイ興味を惹かれてしまうポイントとして効果的。
監督を務めたのは、1967年タミル・ナードゥ州ラーマナータプラム県(現シヴァガンガイ県)ナッタラサンコッタイ生まれ(*6)のペーララス(別名ペーラ・ラス)。
チェンナイに移住後、映画スタジオに通い詰めて映画監督ラーマ・ナラヤナンやN・マハラジャンのもとで助手として働き出し、数作端役出演もしている。
助監督時代に貯めたノウハウをもとに05年に「Thirupaachi」で監督&脚本&作詞デビューを飾り、同年公開の2本目の監督作である本作共々大ヒットを収める。翌06年の監督作「Thirupathi」でタミル・ナードゥ州映画賞の原案賞を獲得。以降も、タミル語娯楽映画界で監督県脚本家として活躍中。15年には「Samrajyam II: Son of Alexander」でマラヤーラム語(*7)映画にも監督デビューしている。
大衆娯楽作を作り出すヒットメーカーとしての人気を維持しつつ、本作以降、タミル地方の地名由来のタイトルを冠する映画を発表するようになって"オーララス(*8)"とも呼ばれている。
とにかく、分かりやすさ優先のマサーラー演出満載映画なので、やたらと大げさな演出が多出し、主演ヴィジャイの魅力を300%増し増しにアピールする映画になっている。
喜怒哀楽のさまざまな表情を魅せるヴィジャイ演じる主人公を襲うさまざまな危機を、友情と家族愛で乗り越えて行く主要登場人物たちは、御都合主義的な展開が多いとは言え感情の揺さぶり具合は半端ないし、家畜同然の生活を強いられる母親や姪っ子を見て兄との対決を決意する主人公の絵面も強烈&カッコええ。やっぱ、美女との恋やドタバタコメディ、勧善懲悪アクションという味付けも、不幸なる家族愛の情感ドラマあってこそ爆発的に盛り上がるんだねえ…と感心してしまいますよ。
それにしても、監督の故郷の村はあんなにおっそろしい所なんですか監督! 人情に熱い村人たちは良い人達かもだけど、そこに流れる政治力のえげつなさは(*9)火だるま級ですヨ!
挿入歌 Ada Ennaatha (どう言うことかしら [我を忘れてしまうわ])
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受賞歴
2006 Filmfare Awards South タミル語映画悪役パフォーマンス賞(プラカーシュ・ラージ)
「Sivakasi」を一言で斬る!
・選挙で使う投票用のハンコが『卍』なのネ!
2021.4.23.
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