Size Zero / Inji Iduppazhagi 2015年 125分
主演 アヌーシュカ・シェッティ & アーリヤ
監督/製作 プラカーシュ・コヴェラムディ
"ハッピーエンドを、信じてみて"
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幼いスウィーティー(本名サウンダリヤー)はいつも、駅の占い体重計で遊んでいた。
「幸せな子が、一番綺麗な子」「幸福は、分かち合うことができる」「笑顔こそ、何事にも勝るもの」…いつしか、体重計から出てくる標語入り検測結果表が彼女の生きる指針となっていった。父親が交通事故死した後も。学校で「太っちょ」とからかわれ続けていたとしても…。
大学卒業後、中華レストラン"重慶エクスプレス"支配人になったスウィーティーは、自分の体型を気にしてフィットネスやマッサージには通いつつも、特にそれ以上気にせず、毎日の母親からの結婚しろ攻撃を軽口で受け流す明るい女性に成長していた。
そんな折、何度目かのお見合いでやって来たアビ(本名アビシェーク)は、健康志向で社会奉仕意識の強いドキュメンタリー制作者。その日はさっさと見合いを断って日常に戻るスウィーティーだったが、後日、親戚の結婚式でアビと再会した彼女は、親友として気楽に接してくるアビに初めて心惹かれるものを感じていく。それからは、何度か強引なアプローチを続けてアビとのデートを達成するスウィーティーだったが、ある晩の"重慶エクスプレス"での夕飯の時に「OK、シムラン。今からそちらに向かうから」と電話に答えるアビは、NGOとの会議を理由にすぐ帰ってしまうのだった。
アビに心に決めた人がいると気づいたスウィーティーは、自分では彼を振り向けさせることができないことを悟り、自暴自棄に陥る。
体型のせいで結婚相手に選んでもらえず、結婚できないせいで家族の負担になっていることを悲しんだスウィーティーは、次のお見合い相手を逃して母親を悲しませないよう、最近話題の新設フィットネスジム「サイズ・ゼロ」に通う決心をする。だが、モデルクイーンを目指す彼女の同僚ジョディも通うこのフィットネスジムは、医療業界から危険視されている店でもあった…!!
挿入歌 Size Sexy (サイズ・セクシー)
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*「サイズ・ゼロを目指すより、サイズ・セクシーを目指しましょう」をキャッチコピーに、スウィーティーたちが仕掛ける「サイズ・ゼロ」抗議キャンペーンのために作ったテーマソング映像。
これによって社会一般にスウィーティーの活動が広まるとともに、セクシーダンスを人前で踊る娘に怒った母親との溝ができてしまい…。
英語タイトルは、米国における婦人服カタログにおける規格サイズ名(*1)で、それが転じてその規格を着こなす痩せている女性全般を指す用語でもある。劇中では、ダイエットに効果抜群と宣伝されるフィットネスジムの店名として登場する。
大女優アヌーシュカ・シェッティが、その体型を大幅に変えて挑んだ事で話題を呼んだ、テルグ語(*2)版、タミル語(*3)版同時制作風刺コメディ映画(*4)。
「Size Zero」がテルグ語公開タイトルで、「Inji Iduppazhagi(1インチ大の美女)」がタミル語公開タイトルになる。翌16年には、オリヤー語(*5)リメイク作「Chhati Tale Ding Dong」も公開された。
太ましい主人公が、その体型故に周囲からからかわれ、結婚の理想を否定され、それら外野の声に無関心を貫きながらも苦しんでいる姿を通して、特に女性に向けられるルッキズム的視点の蔓延、過激なダイエットビジネスやそれを奨励する広告界の風潮への警鐘を鳴らす映画であり、それでいて前向きな主人公の巻き起こすポジティブなドタバタ劇が微笑ましい1本。
主役を務めたアヌーシュカが20kgも増量して挑んだという役者根性も凄い(*6)けど、それでいて魅力全開の可愛らしさ、微笑ましさを120%アピールしていくその演技・演出のテンポの良さがなんとも小気味好い。
もっとも、映画後半は風刺の度合いが強くなり、わりと強引な善悪構造のお話の中で主人公が巻き起こす社会変革を全面に出していくあたり、説教くささも加速していく映画ではある。映画前半に見せた、どこまでも笑顔を貫き通す主人公を通した微笑ましき社会への抵抗が美し可愛らしいのだけど、その色合いが後半まで持続しなかったのが惜しいかなあ…。
本作の監督を務めたプラカーシュ(・ラーオ)・コヴェラムディ(生誕名コヴェラムディ・プラカーシュ・ラーオ)は、1975年アーンドラ・プラデーシュ州都ハイデラバード(*7)生まれ。
父親は映画監督兼プロデューサー兼脚本家の大ヒットメーカー K・ラーガヴェンドラ・ラーオ。祖父も有名な映画監督兼プロデューサー兼男優兼撮影監督であるK・S・プラカーシュ・ラーオという映画一族の3代目で、義理の兄(父親の養子)に映画プロデューサー ショーブ・ヤーララガッタがいる。
IT工学を修了しつつ、米国のリー・ストラスバーグ舞台&映画研究所で演技を特訓。2002年のテルグ語映画「Neetho」で"スーリヤプラカーシュ"の名前で映画&主演デビューする。続いてラージャマウリ監督作に出演予定だったのが企画が頓挫し、04年の英語映画「Morning Raga」に主演。この映画と同じ年に、テルグ語子供映画「Bommalata(人形劇) / 英題 A Belly Full of Dreams(夢でいっぱいのお腹)」で監督&脚本デビューして、その新規技術による先駆的映像が高く評価され、ナショナル・フィルムアワードのテルグ語映画注目作品賞を獲得する。
続く11年の「Once Upon a Warrior(ワンス・アポン・ア・ウォリアー)」を挟んで本作が3本目の監督作。本作でも脚本を担当している助監督兼脚本家のカニカー・ディロンと14年に結婚して(のち17年に離婚)、19年には4本目の監督「Judgementall Hai Kya(君はジャッジメンタル?)」でヒンディー語(*8)映画監督デビューしている(*9)。
監督の人脈を活かすようなゲスト出演の映画スターの多さも目玉ではある映画ながら、大写しで台詞もあるナーガルジュナ(・アッキネンニー)はわかりやすいとして、一瞬CM映像やポスターに映る人なんかは観客側に「探してみてね!」と言ってるような映画の仕掛けの1部と化している感じ。
そんな芸能界の人脈を味方につけた主人公たちが仕掛ける「サイズ・ゼロではなくサイズ・セクシーを目指しましょう」運動の方向性が、言いたいことはわかるけどそれでいいの? 的なアピールをやっていくのを納得できるかどうかで映画の評価は大きく変わりそう。
好意的に見るのなら、劇中で言う「サイズ・セクシー」は無理なダイエットではなく、健康的な身体の維持を目指しましょう・自分に自信がつくような方法を目指しましょうってことなんだろうってテーマを実践した時のキャッチコピーってことなんだけど、それが「セクシー」と言う単語に結び付けられるものなのか…って疑問はまあ…(*10)。
まあなんにしても、太っている自分に多少の引け目を感じつつも自分の好きを優先して行動する主人公スウィーティー(*11)の前向きさ、惚れた相手にいいとこ見せたいと無駄にカッコつける気負いのない俗物具合がやたら可愛いのが最大の魅力。そのキャラクター性がそのまま映画の魅力に反映されている佳作でありますわ。
あと注目は、主人公が経営している中華料理店なんだけど、あれがインドで流行していると言うインド中華料理(*12)ってやつだったのかどうなのか…。バスマティライスやインド的スパイスによる味付けによる印中ミックスのメニューの数々は…カロリーバカ高そうだけど…美味しそうですわあ。日本にも進出して一定の人気があるみたいだから、いつか食べてみたい。余計な一言のあるフォーチュンクッキーはいらないけども…。
挿入歌 Size Zero (サイズ・ゼロ)
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受賞歴
2016 Nandi Awards 主演女優賞(アヌーシュカ)
「SZ」を一言で斬る!
・絶望して、駅の占い体重計をぶっ壊しにいく主人公。特にお咎めなしみたいだけど、大丈夫なもんなの?
2023.8.26.
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