ストリートダンサー (Street Dancer 3D) 2020年 142分(146分とも)
主演 プラブー・デーヴァ & ヴァルン・ダーワン & シャラッダー・カプール他
監督/原案 レーモー・デソンザ
"友に捧げる、渾身のステップ"
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英国最狂でルール無用のダンス大会"グラウンド・ゼロ"。
10万ポンドの優勝賞金を懸けた2017年度決勝会場にて、競技中に足を挫いて敗退したインド系ダンスチーム"ストリートダンサー"リーダーのインデル・シン・ナルーラは、その後2年間リハビリの毎日を過ごしている。
インデルの弟サヘージ・シン・ナルーラは、そんな兄のためにダンススタジオを一等地に開設してストリートダンサーのチーム復活を促そうとするが、資金調達の方法は誰にも明かせず、挑発してくるパキスタン系ダンサーたちに反撃できないままの友人たちも不甲斐ない。「…俺たちは侮辱されたんだ。覚えておけ、ダンスの掟は1番になる事…2番じゃない!」
以前から会えば喧嘩が始まる、インド系移民とパキスタン系移民の若者たちは、今日も今日とてバーの中で大暴れ。そのパキスタン人チーム"ルールブレイカーズ"リーダーのイナーヤト・ナーズィーはその夜、バー店員が浮浪者たちを厨房に招き入れて残飯を与えているのを目撃。店主ラーム・プラサードに問い詰めると、自分たちが暴れて食い散らかした残飯を、毎日浮浪者たちに与えていると言う。喧嘩し合う印パの若者たちを尻目に、貧困から逃れようと支え合う印パ移民たちの「生きるための戦い」を目の当たりにしたイナーヤトは大きなショックを受けて…
同じ頃、ダンサーの彼女ミアを迎えてダンススタジオ開設を祝っていたサヘージは、敬愛する兄から「お前がグラウンド・ゼロに出場して、俺の夢を完成させて欲しい」と請われたために兄のために大会出場を決意すると、その予選会場に犬猿の"ルールブレイカーズ"を見つけてしまう。再度、パキスタン人メンバーに喧嘩を売るサヘージたちに、イナーヤトに同行していたバー店主ラームは語り出すのだった…「たしかに、イナーヤトは優勝できないだろう。そして、お前も優勝できない。だが、お前たちが一緒になれば……敵はいなくなるのに」
挿入歌 Illegal Weapon 2.0 (非合法な武器 2.0)
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*原曲はパンジャーブ語シングルとして発売された、ジャスミン・サンドラス&ガリー・サンドゥの「Illegal Weapon」。そのリメイク・バージョン。
ダンサー、振付師でもある映画監督レーモー・デソンザによるダンス大会を舞台にしたヒンディー語(*1)映画。
2013年の「ABCD: Any Body Can Dance 」、2015年の「エニバディ・キャン・ダンス2(ABCD 2 )」と同じ路線の映画で、当初はそのシリーズの続編として企画されたものだった。しかし、様々な事情で製作会社が変わってしまい、本作はT-シリーズ&レーモー・デソンザ・エンターテインメントの共同製作となったことで、単独の独立した映画として製作されている。
インド本国に先立ち、アラブ、ドイツで公開が始まり、インドと同日公開でオーストラリア、カナダ、デンマーク、フランス、英国、アイルランド、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガル、シンガポール、米国、南アフリカでも公開されているよう。
日本では、2020年にSpacebox主催の自主上映で英語字幕版が上映。2024年に一般公開され、同年のシネ・リーブル池袋 週末インド映画セレクションの1本にも選出されている。
2015年の「エニバディ・キャン・ダンス2」から、「フライング・ジャット(A Flying Jatt)」「Race 3(レース3)」を挟んでの、レーモー・デソンザ7本目の監督作にして、5年ぶりのダンスムービー監督作!
ダンスを魅せることに特化したダンスムービーでありつつ、3本目の貫禄か、移民問題や社会福祉問題を絡めたNRI(在外インド人)を取り巻く社会派な問題をもテーマとして取り込み、そうした社会問題にさらされるインド人たちの活躍を無理なく(*2)ダンス・アクションへと移行させて表現させる、ダンスの可能性を見せつけるスポ根映画にもなっている。
キャスト的にも、「エニバディ・キャン・ダンス2」の主演ヴァルン&シャラッダー&プラブー・デーヴァが続投(*3)。多数のダンサーや振付師が参加し、やはりABCDシリーズと同じように、タレント発掘TV番組「Dance India Dance」「Dance Plus」などで勝ち残った有望ダンサーを多数映画出演させている。サヘージの兄インデル役のプニート・ジャヤシュ・パータクや、ストリートダンサー所属の古物店員D役のダルメーシュ・イェランデーなど、「ABCD」シリーズからの(それぞれ別人役ながら)常連キャストもいる一方、新たにTV選手権を勝ち抜いて映画デビューしているサマイラー役のヴァルティカー・ジャーや、バー店員からストリートダンサーに加わるチョットゥ役のスシャント・カートリなど有望新人ダンサーまで演技も含めた晴れ舞台が用意されている。まさに、ダンサー育成とその成果を見せつける、ダンサーのダンサーによるダンサーのための映画としても一級品。
なんでも、撮影中に主演のヴァルン、シャラッダー、ロイヤルズ所属ダンサー ミア役のノラ・ファティ(*4)が次々と重傷を負ってしまったとか言う現場で、劇中8本のミュージカルダンスの他、プロモ映像用ダンス2本、その他も細かい劇中ダンス芝居が無数に入ってくる現場で、インド系キャスト以外にも様々なダンサーによるパフォーマンスがカメラの前で披露される運動量は、アクション映画にも増して人体のパワフルさを見せつける。
基本はインド系とパキスタン系移民たちの共闘を描くストーリーであるため、主人公サイドのダンスチームやその周辺、貧困にあえぐ移民たちが南アジア系で統一されているけれど(*5)、ロイヤルズも含めて敵として登場するグラウンド・ゼロ出場のダンサーたちは白人からラテン系、黒人も含まれる多種多様な出自の人たちが出てくるのも、移民問題のテーマに符合するような表現か(*6)。人種的多様性以上に、移民たちをめぐる貧富の差が地方性や生まれた家柄なんかにも影を落とし、相互に分断を引き起こしているように見えるのも意図的な設定にも見えてくる。わりとコミカルに描かれる主人公世代の印パ対立の喧騒は、後半に爆発する感情的伏線でもありつつ、現実の印パ間への皮肉のようにも見えてくるか(*7)。
前半だけ見てると、社会派なテーマはダンスムービーの邪魔になってないか…と感じてもいたんだけども、明らかに伏線として描かれているサヘージをめぐるお金の問題から見えてくる英国在住インド系青年から見た移民問題、数々の不条理を乗り越えて印パ両国の移民たちがダンスを通して一体化する姿は、インド映画の中で描かれる数々のミュージカル映像が代々描き続けてきた、ダンスという身体文化を通しての統合であり共生の姿そのもの。その1瞬の輝きの中に発散される莫大な幸福感、生命力、そこに至るまでの文化的・歴史的土台のありようとその継承の姿。「踊る」ことへの疑問なぞ感じるまでもなく、厳しい現実を無視できるわけでもないにも関わらず、人が踊る、その姿だけでここまで幸福を感じ、活力を与えられる感動を味わうことができるんだから、まさに人は踊るべきなんですよ! 踊らにゃ損損!!
プロモ映像 Sip Sip 2.0
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*映画本編のその後を描くプロモーション映像。主人公サヘージが親の故郷パンジャーブへ帰ってきて、パンジャービーソングの嵐を目一杯楽しむの図。
原曲は、パンジャーブ語シングルとして発売された「Sip Sip」。そのリメイク・バージョン。
受賞歴
2020 FOI Online Awards 振付賞(クリティ・マヘーシュ & ラフール・シェッティ)
2020 Gold Choice Movie Awards 助演女優賞(ノラ・ファティ)
2021 DPIFF (Dadasaheb Phalke International Film Festival) パフォーマー・オブ・ジ・イヤー賞(ノラ・ファティ)
「ストリートダンサー」を一言で斬る!
・ビリヤニのお残しなんて、許されまへんでーーーー!!
2024.11.21.
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