Tezaab 1988年 174分
主演 アニル・カプール & マードゥリー・ディークシト
監督/脚本/原案 N・チャンドラ
"この愛は、暴力的"
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人気ダンサーのモーヒニーの父親シャヤムラールは、富豪ながら借金を抱える飲んだくれ。
そのために、街を支配するロティア・パターン率いるギャングたちの怒りを買い、娘のモーヒニーが連れ去られ、その騒ぎで街中は無法地帯と化してしまう。
そんな中、数年間ボンベイを追放されていた男ムンナー兄貴(本名マヘーシュ・デーシュムク *1)が帰ってきた。
彼は彼を慕う下町の人々との再会を喜びながら、かつての恋人モーヒニー誘拐の話を妹から聞かされ、不承不承ながらシャヤムラールの元に赴き彼女の救出計画を宣言する。
「…その代わり、彼女を連れもどせたら5万ルピーもらう」
「なんだと? 犯罪者のお前の話なんか誰か乗るとでも思うのか? そもそも成功するはずないじゃないか!!」
彼の話を一蹴しようとするシャヤムラールの横で、現在のモーヒニーの婚約者サクセーナーは謝礼の件を承諾し、モーヒニー救出をムンナーに託すのだが…!!
挿入歌 Ek Do Teen (1、2、3…)
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*ヒンディー語の数字を覚えたい時は、ぜひこの歌を歌っていきましょう。ヒンディー人にもウケる事まちがいなし!(たぶん)
2003年の「Main Madhuri Dixit Banna Chahti Hoon(いつか、マードゥリーのように)」や2014年の「ハッピーニューイヤー(Happy New Year)」の劇中にて、このシーンのオマージュが作られていたり、2018年の「タイガー・バレット (Baaghi 2)」にて現代版アレンジバージョンが作られたりと、マードゥリーのダンスシーン代表として有名なミュージカルでもある。
タイトルは、ヒンディー語(*2)で「酸」。
劇中、ヒロインの父親が実家に帰ろうとする妻を脅すために持ち出して大惨事を起こした物品であり、数々の罪に問われて裁判にかけられる主人公が検察官に「お前こそ、社会を滅ぼす酸だ!」と言い放たれる言葉。
1984年のハリウッド映画「ストリート・オブ・ファイヤー(Streets of Fire)」をアイディア元にした、88年度最高売上を達成した大ヒット・ヒンディー語映画。
本作公開後の翌89年にはテルグ語(*3)リメイク作「Two Town Rowdy(2つの街の暴れ者)」が、92年にはスリランカ映画リメイク作「Sinhayangeth Sinhaya」が、93年にはタミル語(*4)リメイク作「Rojavai Killathe(バラを摘み取るな)」も公開。
後にボリウッドの女王となるマードゥリーの、初の大ヒット出世作となった映画でもある。
バイオレンス全盛だったと言う80年代ボリウッドの空気そのままに、ギャング抗争もので始まる本作は、ヒロイン モーヒニーのライブからそのヒロインの誘拐襲撃シーンをアイディア元の「ストリート・オブ・ファイア」そのままに展開させ、そこから1時間以上にわたって主人公とヒロインの馴れ初め〜その別離までを長ーい回想シーンで描き、ラストバトルの終盤へとつなげて行く。
「ストリート・オブ・ファイア」が80年代アメリカの空気を濃厚にその画面に刻みつけてるように、図らずとも本作も80年代インドの空気がそのまま画面に刻みつけられてたり…するのかなあどうかなあ。その後のボリウッド映画への影響の大きさという意味では、要チェック映画だとは思うけど。
なんでも、制作段階では5時間にも及ぶ内容だったのを、プロデューサー権限で2時間54分に短縮させたとかいう話もあるようで(ホンマ?)、終盤に行くに従って登場人物たちが都合よくいろんな場所で出会って話が急展開して行くように見えるのは、そんな内部事情があったからとかだったり…?
基本的に、物語の主軸は中盤の身分違いのラブロマンスで、序盤と終盤のギャング抗争も主軸扱いなんだろうけど、なんかそこまで印象に残らないのはその部分の作り方がアイディア元からのいただきだから…とかなんだろうか。まあ、堂々巡りを繰り返すロマンス劇よりも、下町を舞台に怒れる青年がギャングたちをバッタバッタとなぎ倒すシーンの方が見ていて痛快ではあるけども。
監督&脚本を務めたN・チャンドラ(生誕名チャンドラシェーカル・ナルヴェカール)は、1952年マハラーシュトラ州ボンベイ(*5)生まれ。
ボンベイの編集スタジオで働き始めて映画界に入り、編集兼助監督として活躍。86年の「Ankush」で監督・脚本・プロデューサーデビューとなり、大作群が軒並み興行不振となる86年に大ヒットを飛ばすことに。続く87年の「Pratighaat(復讐)」と88年の本作で、3年連続監督作が大ヒットしヒットメーカーの仲間入り。
2014年に、本作の続編企画があるとの報道があったというけれど…?
主役を務めたアニル・カプールは、1956年マハラーシュトラ州ボンベイ生まれ。
父親は映画プロデューサーのスリンデル・カプール(*6)で、兄も映画プロデューサーのボニー・カプール、弟は男優サンジャイ・カプールになる映画一族カプール家出身。
71年の「Tu Payal Mein Geet」に子役出演したのち、ヒンディー語映画のカメオ出演・助演などを経て80年のテルグ語映画「Vamsa Vruksham(家系樹)」で主演デビュー。83年の「Pallavi Anu Pallavi」でカンナダ語(*7)映画デビューとなり、同年の「Woh Saat Din(7日間)」がヒンディー語映画での主演デビューとなった。翌84年の「Mashaal(灯)」でフィルムフェア助演男優賞を初獲得。本作でフィルムフェア主演男優賞を獲得する。以降、ヒンディー語映画界のトップスターとして大活躍。
97年には「Chandralekha」でマラヤーラム語(*8)映画にカメオ出演、08年にはイギリス映画「スラムドッグ$ミリオネア(Slumdog Millionaire)」に、11年のハリウッド映画「ミッション:インポッシブル / ゴースト・プロトコル(Mission: Impossible − Ghost Protocol)」にも出演している他、02年の「Badhaai Ho Badhaai」でプロデューサーデビュー。プロデューサーや歌手としても活躍している。
84年に衣裳デザイナー スニーター・バーヴナーニーと結婚。3人の子供のうち、ソーナム・カプールとハルシュヴァルダン・カプールは映画俳優として、レア・カプールは映画プロデューサーとして活躍している。
今となっては、"ムンナー・バーイ"と言う主人公名は、03年の「Munna Bhai M.B.B.S(ムンナー兄貴と医療免許)」のサンジャイ・ダットのイメージとともに語られる名前になっているけど、それ以前にこっちで有名なムンナー・バーイがいてこその継承名だったのかねえ…と変に深読みしたくもなるもんで。
下町のワルを気取るこちらのムンナー兄貴は、回想シーンではおちゃらけた愛に生きる青年だし、真面目な海軍士官候補生だしな、元は真面目なヒーロー像って所は時代性…と言っていいものなんかどうなんか。スイミングスクールコーチやってる時の、胸〜肩〜腕にかけてのモワモワな毛深い上半身を披露するアニル・カプールの絵面は、強烈ではありますが。ええ。
挿入歌 So Gaya Yeh Jahan (大地と空は [すぐにも眠りにつく])
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*後に、2013年公開作「茶番野郎(Nautanki Saala)」でこの歌の編曲されたバージョンがOPに使われていたりする。
受賞歴
1989 Filmfare Awards 主演男優賞(アニル・カプール)・女性プレイバックシンガー賞(アルカー・ヤグニク / Ek Do Teen)・台詞賞(カムレーシュ・パーンデーイ)・振付賞(サロージ・カーン / Ek Do Teen)
「Tezaab」を一言で斬る!
・劇中、主人公が通っていた大学併設のチャイ屋台、何故に壁に和服美人のポスターが大量に貼ってあんのだろか?(「粧」の文字があるとこから見て、なんかの化粧品広告から持ってきたもの?)
2020.7.31.
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