テーズ: スピード (Tezz) 2012年 122分
主演 アジャイ・デーヴガン & カングナー・ラーナーウト他
監督 プリヤダルシャン
"これはテロではない…これは、破滅への道"
その日、エンジニアのアーカーシュ・ラーナーは英国への不法滞在者であると裁決され、国外退去を命じられてしまう。
最後まで彼を救出しようと抗議していた妻ニキータとの結婚も違法故に抹消され、彼女の目の前でアーカーシュはインドへと強制送還されたのだ…。
それから4年。
ひそかにロンドンに戻ってきたアーカーシュは、かつての会社メンバーで不法移民のメカニック アーディル・カーンとメガー・シンとの再会を果たしながら、その足で爆破テロを計画するテロ首謀者ジョジョ率いるグループと接触する。その協議中に突然警察が突入してきてジョジョが逮捕され、彼は警官シヴァン・メーノーンによってグラスゴー行き高速鉄道ヴァージン・トレイン112号で護送される事になった。
その特急がロンドンを発車したその時、鉄道管制室にアーカーシュからの電話が…「特急112号に爆弾を仕掛けた。時速60マイル以下の速度になると爆発する。列車を止めるな。もし、こちらを欺く気なら、別の列車に仕掛けた爆弾も動き出すぞ」!!
プロモ映像 Tezz (Female Version) (スピード)
1975年の日本映画「新幹線大爆破」や、1980年のヒンディー語(*1)映画「The Burning Train」などにインスパイアされた、特急列車テロを題材にした全編ロンドンロケのヒンディー語映画。
インド本国より1日早くニュージーランドでも公開され、インドと同時公開でクウェート、1日遅れでイギリス、アイルランド、オランダ、ノルウェー、シンガポール、アメリカでも公開して大ヒット。
日本では、2012年のIFFJ(インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン)にて「Tezz (テーズ:スピード)」のタイトルで上映された。
全編122分の内容のほとんどを占める怒濤のパニックアクション群衆劇が、「スピード」とか「逃亡者」とかを彷彿とさせるハリウッドテイスト満載な1本。
今現在の世界情勢の中で見ると、色々「ウーム」と考えてしまうような内容も含みつつ、イギリスの警察や鉄道網はそんなにインド系移民が重要ポストにおるんかい、とか無駄なツッコミもしてしまいたくなるけども、復讐に突っ走る主人公側とそれを追う警察の捜査、管制室や爆弾の仕掛けられた特急車両内での丁々発止、イギリス人とインド系移民たちの対立、それぞれに事件に関わってくる家族愛のありさまなど、てんこもりな内容がスピーディーでテンポの良いアクセントとなってくれる傑作。
まあ、その分海外市場向けかな? ってノリがインド映画成分低めな感じでもあるので、それ目当てで見ると登場人物の掘り下げ具合とかも含めてちょっと物足りないかも?(*2)
劇中、それぞれの立場から事件に関わって行く人々の多様な人生劇もサービス満点。それを演じるオールスターな出演陣も見もの。
事件の首謀者アーカーシュ演じるのはアジャイ・デーヴガン。1969年ニューデリー生まれで、両親ともに映画関係者。子役出演ののち主演男優として活躍している人で、本作と同じ12年には、プロデューサーも務めた「Bol Bachchan」「ターバン魂(Son Of Sardaar)」「Save The Girl Child」にも出演し、「Eega(ハエ)」のヒンディー語吹替版「マッキー(Makkhi)」で声の出演も担当している。
アーカーシュの妻ニキータ・マルホートラ役には、1986年ヒマーチャル・プラデーシュ州バーンブラ生まれのカングナー・ラーナーウト(*3)。親に反発して家出同然にデリーにやって来て舞台を通して俳優業を始め、06年の「Gangster(ギャングスター)」で鮮烈デビュー。以降多数の映画に出演する大女優へと成長している。
アーカーシュに協力するアーディル・カーンを演じるのはザイード・カーン。1980年ムンバイ生まれで、父親は男優サンジャイ・カーンになる。03年から毎年映画界で活躍しつつも、本作以降出演作が飛び飛びになっているよう。
アーディルとともにアーカーシュに協力するメガー・シン役には、テルグ語映画「Ashok」で知られるサミーラ・レッディ。1980年アーンドラ・プラデーシュ州ラージャムンドリー(*4)生まれで、姉にモデル兼女優のスシーマ・レッディがいる。MV出演を経て映画女優として00年代から活躍。12年には、本作の他にタミル語映画「Vettai(狩り)」に主演、ヒンディー語映画「Chakravyuh」とテルグ語映画「Krishnam Vande Jagadgurum(創造主クリシュナを讃えよ)」にゲスト出演。その後は14年の結婚以降、映画界からは離れているよう(19年現在)。
アーカーシュを追いつめるアルジュン・カンナ警部役には、映画一族カプール家出身の大スター アニル・カプール。1956年ムンバイ生まれで、父親と兄は映画プロデューサー、弟は男優サンジャイ・カプール、娘にはモデル兼女優ソーナム・カプールがいる。未公開作の子役出演やカメオ出演を経て主演男優に昇格して、80年代中盤から大活躍。外国映画でも、イギリス映画「スラムドッグ$ミリオネア(Slumdog Millionaire)」やハリウッド映画「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル(Mission: Impossible − Ghost Protocol)」に出演している。
特急車両内で現場被害者たちの救出に奔走するシヴァン・メーノーン警部には、本作監督プリヤダルシャンとも親友である、マラヤーラム語映画界の大スター モーハンラールが特別出演。1960年ケーララ州エランソーア生まれで、俳優業の他プロデューサー、映画配給業でも活躍。ヒンディー語映画には、02年の「Company」から本作で3本目の出演作となる。
標的にされた特急の運行会社の、管制室長サンジャイ・ライナーを演じるのは「きっと、うまくいく(3 Idiots)」「PK」などで日本でも知られるボーマン・イラーニー。1959年ムンバイ生まれで、ホテルマンやカメラマンを経て俳優業に転身してブレイク。12年には、本作を含め7作もの映画に出演している。
マルチスター映画故に、出演者たちのスケジュールを調整するのに苦労したそうで、アジャイとアニルの撮影日程の調整がうまく行かず、活躍内容を変えざるを得ない事態になったり、当初予定していたキャスティングの多くが変更されての撮影開始になったりと色々と大変だったよう。
物語も、それぞれに主役級のキャラを配した群衆劇になったが故に、パニックアクションへ突き進む勢いの良さは最高ながら、それぞれのキャラの見せ場がその分削られてしまった感もなきにしもあらず。中盤アクションを担当していたメガー・シン役のサミーラ・レッディ、アーディル・カーン役のザイード・カーンの活躍はスゴかったし、それを受けた上でのアジャイとアニルの追走劇もカッコ良かったけども。
イギリスロケによる多数の英国人キャストもさすがの貫禄でありますが、英国人的諧謔か、嫌味なキャラが多くて、基本英国人が悪役、インド系移民が善玉な描かれかたをしている所は、移民する側のインド人視点ってことになるのかなあ...。
挿入歌 Laila (私はライラ [誰もが愛するライラなのよ])
*踊ってるのは、ダンサー女優として有名なマリッカー・シェラーワト。
「テーズ: スピード」を一言で斬る!
・テロ首謀者の犯人を、警官1人だけをつけて一般人の乗る特急で護送とかってあるの!?
2019.8.31.
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