インド映画夜話

Thirumalai 2003年 169分
主演 ヴィジャイ & ジョーティカ
監督/脚本/台詞/原案 ラマナー
"心配しないで。なにもかも良くなる良くなる、良くなるなる!"

むんむん様企画のなんどり映画倶楽部9にてご紹介頂きました!
皆様、その節はお世話になりました。なんどりー!



挿入歌 Thaamthakka Dheemthakka

*主役ティルマライ役のヴィジャイと、特別出演のダンスマスター(振付師)のローレンス・ラガヴェンドラの2人のスーパータミル人の巻き起こす驚異的パフォーマンスの嵐!この狂乱の迫力は、大スクリーンでこそ発揮されまする!
 しっかし、この運動神経と足腰の強靭さ。オリンピック行けば速攻メダル級じゃなかろか…(鍛える所が違います? ですよね〜)



 チェンナイの下町プドゥペットで、バイク整備士をしているティルマライは天涯孤独の身。正義感は強いがケンカっぱやく、それでいて憎めない人気者。しかし、同じ店の整備士とつるんで遊ぶ事はあっても、家族と呼べるほどの友人は一人もいない。

 新年を迎えたチェンナイの街で、ティルマライは初対面の女性から「貴方が今年最初に会った人よ。新年おめでとう。心配しないで、みんな良くなるから!」と挨拶されてチョコレートをプレゼントされる。
 その後、突然大家から整備工場を買い取ってくれと言われて途方に暮れていると仲間たちがその資金を集めてくれ、隣に引っ越して来た美術教師夫婦はなにくれと彼らの世話を焼いて、ついには夫婦の結婚記念日に皆を家に呼んで家族同然に食事を振る舞ってくれる。ティルマライは生涯初めて、家族愛のようなふれあいを体験し感激にくれるのだった。
 それもこれも、新年に「良くなる」と断言してくれたあの少女…スウェタの言葉のおかげかもしれないと思えば思うほど、ティルマライの中で彼女への思いはつのっていくばかり。愛がなにかも知らない彼は、周りの助言に素直に従って彼女に猛アタックを開始する…。

 同じ頃、チェンナイの裏社会を牛耳るアラスの悪事を日の元にさらそうと奔走するテレビ局長(スウェタの父親)は、ついにその証拠映像を手に入れるものの、娘が下町の貧乏な男と付き合ってる事に驚き、自分のキャリアと地位を守るために2人の仲を裂こうとする。どうしても従わない2人に怒る父親は、ついに自身の職業倫理を無視してギャングのボス アラスに証拠映像を渡す代わりに、2人の仲が進展するのを妨害してほしいと依頼する…!!


挿入歌 Vaadiyamma Jakkamma

*ゲスト出演で踊ってるのは、主にタミル・テルグ映画で活躍してる女優キラン・ラトホード。


 タイトルは主人公の名前。
 タミル映画界のスター ヴィジャイの転換点となったと言うコリウッド(=タミル語映画)の大ヒット作で、R・K・セルヴァマニの元で助監督をしていたラマナーの初監督作となった。
 2004年には、テルグ語リメイク作「Gowri」も公開。

 なんどりの皆様とワイワイ楽しんで見ていると、なるほどこういうのを「スター映画」って言うのね! と素直に納得。今までラジニ映画のみでそう言うのに触れてたので、無意識にラジニ映画特有の作りと思い込んでいた自分を発見してもーた。海よりも深く反省。この映画で「スター映画」なる新たな映画の扉が開いた感じ。

 映画全編、登場するキャストの魅力を存分に発揮してもらうための舞台を整えている感じだし、それに答えるキャストたちのハイパワーな技の数々も見ていてホント楽しい。
 主役ティルマライを演じるのは、タミルスターのヴィジャイ(本名 ジョセフ・ヴィジャイ・チャンドラシェーカル)。映画監督兼プロデューサーの父と、プレイバックシンガーの母との間に産まれ、子役から映画界に入った俳優兼プロデューサー兼プレイバックシンガー。
 1992年作「Naalaiya Theerpu」で主演俳優に昇格してCinema Express Awardのタミル映画新人賞を獲得するや、瞬く間に年間3〜5本の映画に出演する人気スターに。本作でも得意のタミル舞踊を取り入れた軽快なダンスを見せつけてくれたり、ながーい手足を存分かつ器用に振りましてのアクションの暴れっぷりは爽快を通り越して、これも1つのヴィジャイスタイルを確立してる感じ。愛嬌のある表情芝居の数々もあって、よ、ヴィジャイ兄貴! あんたなにやっても様になるね! ダンスの時やチンピラたちを追いかける時のものすごいジャンプ力がカッコええ! そりゃ、ちっさい女の子も振り返ってニッコリするよね!!(*1)
 執拗に繰り返されるティルマライの襟から煙草をくわえ出す決めポーズや、ハイスピードなバイクアクションの見せ方、その目力のすごさや早口でまくしたてる軽快さや、愛嬌ある身のこなしの様なんか、歌舞いてるよ〜ヴィジャイのみならず登場人物全員見事に歌舞いてますわ〜。
 物語的には、さほど新鮮味もない基本中の基本のような展開をするために、公開当時は批評家たちからの評価は低かったらしいんだけども、そんな映画が封切られるや大ヒットしてヴィジャイ人気を後押しするようになったってのはとても象徴的。スター映画とかスタイル映画が独自進化しているタミル映画界のパワーが分かる一本。

 むんむん様の気合いの入った自作字幕が、歌詞にも決め台詞にも細かな喧噪にもしっかり対応してカッコいい! のが素晴らしかったです(ここ強調ポイント! 見習いたい!!)。
 にしても、あの多出する長台詞の啖呵の応酬劇は、タミル語が理解できればできるほど面白さが倍増するのかなあとも思ってみたり。タミル映画に見える郷土文化愛的なシークエンスは、やっぱりタミル文化への愛着とともに発揮されるもんなんだろうなぁと、見てる間じゅう知ったふうな事思いながら楽しんでおりました。


挿入歌 Dhimsu Katta (ああ、ふくよかな君)







「Thirumalai」を一言で斬る!
・猪突猛進するティルマライと下町の人たちの間に入るのがウマい美術教師がかわいすぎる。なんだコイツら!?

2013.10.25.

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*1 わざとらしくとも、このシークエンスはお気に入りw