Vanamagan 2017年 141分(132分とも)
主演 ジャヤム・ラヴィ & サイシャー・サイガル
監督/脚本 (A・L・)ヴィジャイ
"彼らの生き方…その規範とは"
インド洋に浮かぶ島。そこには、未だ文明と隔絶し原始的生活をおくる人々がいる。これは、アンダマン諸島のそんな島の物語である…。
2017年1月。ジャングルの奥地で警察隊の先住民襲撃が行われていた。その中から逃げ出した男が一人…!!
その頃、チェンナイのわがままな大富豪カヴィヤは友達と一緒にアンダマン諸島旅行に来ていた。新年を迎えた一行は、ノリで警察の敷いた立入禁止区域に侵入して大騒ぎしていたものの、そこに突然出て来た先住民の男を車で曳いてしまう!! 驚いたカヴィヤは、島に病院がないと知るや密かにその男を地元チェンナイの病院まで運んで治療を依頼するが、意識を取り戻した男は大暴れの末カヴィヤの自宅に運ばれて来てしまって…!!
最初こそ暴れる男に閉口したカヴィヤだったが、ペットのしつけ方をヒントに"カートゥ・ヴァーシー(=ジャングルの人の意)"と名付けた男を教化していく中で、文明の利器を必要とせずにあるがままの生き方をしていくヴァーシーの姿に感化されていく…。
その一方、アンダマンでは警察が逃げ出した先住部族民の行方を追って、捜査を開始してた…。
プロモ映像 Vanam (Theme)
タイトルは、タミル語(*1)で「ジャングルの申し子」。
「神さまがくれた娘(Deiva Thirumagal)」のヴィジャイ監督10作目となるタミル語映画。
ヴィジャイ監督作なら見ておかねば! と注目して見ていたものの、お話は「ターザン」の現代インド版と言った感じ。人間性を欠く現代人と古代さながらのエネルギッシュな生活力を持つ野生児のカルチャーギャップを描いていく説教くさい展開の中で、撮影の綺麗さと音楽の軽快さが定型物語以上に魅力的な感じ。エンディングにかぶせて、世界中の文明と隔絶した生活を送る少数民族を紹介していってその絶滅の危険性を説いてるのが印象的。
実際にアンダマン諸島で撮影されたと言う、南洋のジャングルと海のショットの美しさと目新しさは一見の価値あり。
200以上の島々で構成されるこの連邦直轄領は、一部住民の集中する3つの島以外はほぼ無人のジャングル島だそうで、産業は林業のほかは観光業のみで、先住民保護や国防戦略などの理由で外国人の立ち入りが制限されているという。ベンガル語映画「Hrid Majharey (心の中で生きて…)」でも開放的南洋世界として描かれていたアンダマン諸島の景観は、一度は生で見てみたいもんだけどねえ…。
ま、冒頭でナレーションと共に文明に触れないまま生活する先住民の孤立性を強調してたわりには、劇中に出て来る先住民の男は、村自体が観光用の見世物的な扱いを受けて文明の隣に暮らしていた感じになっていたのが「え?」って感じではあったけど。
現代人側主人公のカヴィヤを演じるのは、1997年マハラーシュトラ州ムンバイ生まれの女優サイシャー・サイガル。
父親は男優スミート・サイガル。母親も女優シャヘーン・バーヌーで、親戚に映画俳優サーイラー・バーノーやディリップ・クマール、映画プロデューサー兼監督のラメーシュ・サイガルやナレーシュ・サイガルがいる映画一族出身。
15年のテルグ語映画「Akhil(アキル)」で映画&主役デビュー。翌16年には「シワイー(Shivaay)」でヒンディー語映画デビューしていて(*2)、本作でタミル語映画デビューとなる。
カヴィヤに保護されるターザン的キャラクター ヴァーシーことジャラを演じるのは、1980年タミル・ナードゥ州マドゥライ県ティルマンガラムに生まれたジャヤム・ラヴィ(生誕名ラヴィ・モーハン)。
両親は共に映画編集者のモーハンとヴァララクシュミー・モーハンで、兄に映画監督のモーハン・ラージャがいる。
子供時代から古典舞踊バラタナティヤムを習って舞台に立ち、父親のプロデュース作でもある93年のテルグ語映画「Bava Bavamaridi」と翌94年の「Palnati Pourusham」で子役出演。その後、チェンナイの大学でヴィジュアル・コミュニケーションを修了し、卒業後にムンバイのキショーレ・ナミット研究所で演技を習得しつつ01年のタミル+ヒンディー語映画「Aalavandhan」に助監督として参加して本格的に映画界入り。03年に父親のプロデュース&兄の監督作となるタミル語映画「Jayam(勝利)」で主役デビューして、翌04年の「M. Kumaran S/O Mahalakshmi(マハラクシュミーの息子M・クマラン)」でタミル・ナードゥ州映画主演男優賞を獲得する。その後も数多くの映画賞を獲得するトップスターに成長して行き、15年の主演作「Sakalakala Vallavan」と「Thani Oruvan(孤独な男)」では歌手デビューも果たしている。
本作と同じ17年には「Bogan(快楽主義者)」にも主演している。
映画の前半は、チェンナイを舞台に現代機器に囲まれるカヴィヤに促されて文明に触れていくヴァーシーのドタバタ劇が中心。後半はアンダマン諸島を舞台にジャングルの中で生活する先住民の原始生活に魅力と戸惑いを感じていくカヴィヤたちという逆転劇。
その中で、ロマンス劇や現代人のディスコミュニケーション具合、文明化のために乱開発されるジャングルの自然や先住民文化の衰退と混乱が描かれていくわけだけど、まあ予想の範囲内に収まった感は拭えず。家の壁面やガラス窓を簡単に粉砕して怪我ひとつないヴァーシーの異常パワーはやりすぎだろってツッコミを入れたくなりつつ、カヴィヤに懐いていくヴァーシーの子犬並みのリアクションがカワイイ。まあ、ペットのしつけ方をそのまま先住民に試そうとするお嬢様カヴィヤのナチュラルな傲慢さもそれはそれでカワイイけどね!(ダメ男宣言
劇中で描かれる、現代文化を凌駕する原始生活の素朴さ・パワフルさ・純粋さの描かれ方はステレオタイプを抜け出ない感じで、それをコミカルに描いたりするのは大丈夫なのか…? と感じなくはないけれど。それにしても、アンダマンの密林と海のなんと美しいことよ…!!
挿入歌 Silu Silu (冷たい風が竹林をなぎ倒す (その甘やかな旋律を聞け))
「Vanamagan」を一言で斬る!
・アンダマン諸島って、あんな断崖絶壁ばかりある起伏に富んだ場所なの…?
2019.4.5.
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